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【独占ロングインタビュー】『スター・ウォーズ』C-3PO役アンソニー・ダニエルズ ─ 最後にもう一度だけ、日本の友人たちに

C-3PO。金ピカのボディが眩しいプロトコル・ドロイド。『スター・ウォーズ』の全てを見届けた、唯一の存在だ。アナキンやルーク、そして僕たち『スター・ウォーズ』ファンにとっても、ずっとかけがえのない相棒でいてくれた。

マッドネスな戦火を文字通りくぐり抜けたこともあった。うっかり身体がバラバラにされてしまったこともあった。ヌメヌメの大きな悪党に売られたこともあった。森の原住民の神様になった時は驚いた。初めの頃は、内部の配線が丸見えだったね。敵のバトルドロイドと身体がすり替わった時も大変だった。主人を失って、記憶を消されてしまったこともあったね。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)をもって、スカイウォーカー・サーガが完結した今、C-3POもその役目を終えた。演じたアンソニー・ダニエルズは、窮屈なマスクののぞき穴から、現代の神話の全てを見届けてきた。スピンオフ2作を含む全ての『スター・ウォーズ』実写映画に出演したのは、アンソニー・ダニエルズが銀河唯一である。

そのアンソニーが、40年以上にわたって演じ続けたC-3PO役の全てを語り明かす書籍『私はC-3PO』を上梓した(世界文化社より発売中)。身の危険を感じた過酷な撮影の裏側、初めて明かされる嫉妬や悲しみ、そしてファンへの温かい想い。ジョージ・ルーカスや共演者との秘蔵エピソードに、プリクエルやシークエルの紆余曲折が、C-3PO目線で、アンソニー・ダニエルズ目線で語られる。

この度、その伝説の張本人アンソニー・ダニエルズと、THE RIVERとのSkypeインタビューが実現。新型コロナウイルスの影響で、アンソニーはイングランドの自宅から直接のビデオ通話に応じてくれた。ダークネイビーのニットウェアの襟を立てたアンソニーご本人が、穏やかな表情で優しい声を画面越しにかけてくれる。あの堅く輝く、時に無神経なドロイドの中に隠されていた、柔和で、繊細な笑顔だ。この度のインタビューが許されたのは、日本からはTHE RIVERのみ。世界的にも貴重な、50分にも及ぶ一対一の単独インタビューの様子をお届けする。Thank the maker!

日本での思い出の数々

※このSkypeインタビューは2020年4月1日に実施されました。

──お元気ですか?そちらの状況はどうでしょう?

皆さんと同じ状況です。大変な時期ですね。あなたは今どこに?

──東京です。

東京ですか。東京には、たくさん良い思い出があります。私たちも、今東京と同じような状況だと思います。衛生には気をつけていて、私の家では、ダイニングルームがテレビスタジオになりました。それからジムにもね。それで……、今日は私に質問があるということで?

──はい。そうなんです。えっと、僕は『スター・ウォーズ』の大ファンでして、『スター・ウォーズ』を観て育ちました。こんな風にインタビューをさせて頂いているのが夢のようです。貴重なお時間を割いて頂き、本当にありがとうございます。光栄に思います。

おぉ…、私の方こそ、とてもうれしく思います。

──『私はC-3PO』を書き上げてくださって、ありがとうございます。ちなみに、日本語版の実際の本はご覧になりましたか?

いえ、まだです。手元に英語版はあるのですが。素敵な表紙でしょう?(アンソニー、カメラに英語版の本を見せてくれる。)

──(筆者、カメラに日本語版の本を見せる)これが日本語版です。デザインも同じですね!

オォ、ワーオ!(嬉しそうに)すごく可愛い!

──(筆者、日本語版の内面をカメラに見せる)

オォ、ワーオ!とても変な感じがします!

※後日、無事に日本版の実物を受け取ったアンソニーは、嬉しそうに写真をTwitterにアップしている。

──この本が大好きになりました。素敵なエピソードが沢山書かれていますが、中でもお気に入りは、アンソニーさんが初めてハリウッドに行った時のお話です。すべてがイギリスと違って新鮮だったと、読んでいてとても楽しかったです。ところで、初めて日本に来られた時のことは覚えてらっしゃいますか?

はい。日本も、イギリスとは全く様子が違う国ですね。まず言語が違うので、意味がさっぱり分からない。日本には何度も訪れていますが、ひとつ、ずっと覚えていることがあります。

私が地下鉄の駅で立ちすくんでいた時のことです。どこに行けばいいか分からず、途方に暮れていました。すると、優しい男性がやってきて、声をかけてくれたのです。どこに行きたいのですか、と。私が「シンジュク」と答えると、「おぉー、うーむ」と言って、地下鉄の駅から外に連れて行ってくれました。それで道路を渡って、別の鉄道の駅まで案内してくださったんです。それ以来、ロンドンで道に迷っている日本人観光客を見かけたら、必ず助けるようにしているんです。

初めて日本を訪れた時は、確か……広告のキャンペーンで、銀座の大きな交差点でした。パナソニックです!思い出しました。パナソニックの広告のキャンペーンで、C-3POとR2-D2が交差点の一角に立って、向かいにジョージ・ルーカスが立ちました。あの交差点に行く度に、その時のことを思い出します。
※実際には、これより前に来日したことがある。

それからも、様々な所に招いて頂いて、何度も日本に戻りました。たとえば、東京ディズニーランドの「スター・ツアーズ」のオープニング。素晴らしい経験をさせて頂きました。日本のファンは、いつも大興奮してくれますね。(スター・ツアーズの)オープニングでも、ライドに乗った皆さん、大絶叫。ライドの最中、ずっと大絶叫なんですよ。しかも、終わった後も大絶叫してらっしゃる。アッハッハ(笑)。笑っちゃいました。

それから、東京と大阪の「スター・ウォーズ in コンサート」の思い出も。素晴らしかった。でも、不思議に思ったことがありました。このコンサートで私は世界中を訪れていますが、特にアメリカやヨーロッパの観客は、演奏中ずっと歓声を上げたり、笑ったりされるんです。でも、ずっと静かだったのは東京だけでした。もしかして、日本の皆さんはこういうのがお好きじゃないのかな…?なんて思ったんですが、演奏が終わると…、大興奮!なんともクレイジー、クレイジー、クレイジー……。それにアンコールもしてくださった。壇上に私と指揮者が立っていて、彼が「まだやって欲しいみたいだ!」と言って、また演奏を始めたんです。それからは、日本公演では毎回、アンコールで2曲演奏するようになりました。日本の皆さんの性格を、よく学ぶことができる出来事でした。

もっと大きなお話もあります。あれは、『スカイウォーカーの夜明け』公開前のこと。私はまた東京に向かいました。全日空、ANAのゲストとしてです。なんと、3POデザインの航空機を作ってくれたんです。何たる光栄!この航空機を皆様にご紹介するために、また東京に招いてくださった。

 
 
 
 
 
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私が知っている日本語は、ほんの少しだけ。「おいしいです」「すばらしいです」……。一番大事なのは「チョット待って」(笑)。

──この本では、初めてジョージ・ルーカスに会った時のエピソードなど、過去の出来事や、その時の心境について細かく書かれています。どのように記憶していたのですか?日記を付けていたのでしょうか。

いいえ、私は怠け者でして、日記は付けていません。ある時、日記をつけ始めてみたこともありましたが、飽きてしまって。どれも忘れがたく、人生を変えるような経験なので、頭に焼き付いていました。それに、何年もの間コンベンションで(過去のエピソードを)お話ししてきましたので、覚えています。

それで、『スカイウォーカーの夜明け』の前に、「私は全9作に出ているんだなあ」ということに気づきました。あと2作(『ローグ・ワン』と『ハン・ソロ』)にもですね。そこで突然、本を書いてみようかという気になって。

9作の映画について語るだけでは物足りない。映画の外側のお話もしたかったんです。ANAの飛行機に乗せてもらったお話とか、ディズニーランドのスター・ツアーズのお話とか。ファンのお話、作曲家ジョン・ウィリアムズのお話。スター・ウォーズの物語に関連する全てをお伝えしたかったんです。こんなに沢山のお話を覚えていたのには、私が『スター・ウォーズ・インサイダー』という機関誌に、拙いコラムを書いていたからです。それらを読み返して、記憶を手繰り寄せることもありました。

それから、中には私の記憶違いもありましたので、リサーチも行いました。とにかく事実に忠実な本にしたかったんです。それに、私の感情にも。良い感情、ハッピーな感情やエキサイティングな感情もありましたし、悲しい感情、嫌な感情も、不幸な感情もありました。読者の皆様も、人生には良い時も悪い時もありますよね。私も同じです。

この本は、私の旅路の物語。コンピューターで本を書き終えて、自分で読み返してから初めて気付いたんです。「ああ、私の歩んだ道は、『旅路』だったんだなぁ」って。

波乱万丈、C-3POへの思い

──アンソニーさんのこと、アンソニーさんが演じられたキャラクターのこと、それに『スター・ウォーズ』に携わる全ての方々をリスペクトしています。今アンソニーさんが仰った、様々な「感情」について。本の中では、3POを演じるに伴った想像を絶する苦痛や悲しみが綴られていますね。これは読んでいて非常に辛いものがありました。ここまでの“Inside Story”を晒すことに、辛さはありませんでしたか?

素晴らしい質問です。その通りです。辛い時もありました。楽しい時もありましたよ。思い出して笑ってしまうようなことも。

でも、第1作(『新たなる希望』)公開当時についての章は、特に辛かったですね。映画はすごく大きな話題になった絶好調の時期に、私は仲間外れにされたんです。注目を集めたり、褒められたりするのは人間役の役者だけ。もちろん、3POは皆さんに気に入られました。でも、私の名前が呼ばれたことは一度もありませんでした。まるで、私など存在しないかのように。あれは本当に、本当に嫌な時期でした。本当に嫌だった。

それから40年ほど経って、あの当時の事を書こうと思ったら、当時の感情が蘇ってしまった。だから、この章を書く数週間、すごく嫌な気分になってしまいました。でも、なんとか乗り越えて。とにかく書けばいいのだと。書いてしまえばもう終わりなのだという気持ちで。それに、私としても終わらせてしまいたかった。

過去に戻るのは辛いものがありました。でも、書き終えて振り返ってみると、乗り越えることが、生き延びることが出来たのだと実感できました。続く『エピソード5/帝国の逆襲』は楽しかったですよ。監督のアーヴィン・カーシュナーは、勢いがある方でねぇ。その当時はもう、スーツを着て演じることの難しさを、身体的にも精神的にもよく分かっていましたから、しっかり準備をしました。

それから、クルーがコスチュームを改良してくれたのも、私の辛さを軽減してくれました。何せ、あんなコスチュームは前代未聞でしたからね。技法も理解も何もなかった。マスクで視界が不自由になるのも大変なんです。本にも書きましたが、外の様子が見えないというのは、非常に不安になるものです。

ああ、ちなみに本の中ではこういう工夫をしました。『屋外 サンドクローラー ── 昼間』という見出しをつけたんです(脚本のト書きを再現)。そうすると、読者のあなたが、私と一緒に砂漠に立っているようでしょう?「アクション!」の声がかかって、それから何が起こったかを、ありありと書きました。撮影の日々を追体験できるんですよ。

──日本語版でも、しっかり翻訳に落とし込まれていて、とても臨場感がありました。(アンソニー、“エクセレント!”と喜ぶ。)ところで、アンソニーさんは3PO以外の役を演じたいと思ったことは?

3PO以外の役としては、何度か演じたことがありますよ。『エピソード2/クローンの攻撃』で、「私も顔を出したい」とジョージ・ルーカスにお願いして、兵隊さんの衣装をもらってバーのシーンに出させてもらいました。その役で『エピソード3/シスの復讐』にも登場させてもらっています。

※アンソニーは、フェイトーニという詐欺師の男の役でカメオ登場している。

 
 
 
 
 
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でも、3POを演じられるのが幸せで……。『新たなる希望』の公開で、役者に対する気持ちが変わってしまったんです。「どうせ自分なんて、存在しないんだ」と思ってしまって、TVでも何でも、他の役への気持ちが消えてしまったんです。それでも、『スター・ウォーズ』とC-3POは私にとって常に一番大切なものでした。

そう言えば、もう何年も前のお話ですが、日本で私の吹替をしてくださっている声優さんにお会いしたことがあります。私は、自分の役の吹替を世界各国で聴いてきましたが、日本の声優の方は……、「私が日本語を喋っている!」と思うものでした。彼は、すごくC-3POでした。3POらしさをしっかり掴まれていて、とても気に入りました。

※C-3POの日本語吹替声優はこれまで複数人が務めている。アンソニーは「残念ながら、お名前は失念してしまいました」。

他の国の言葉での吹替は難しいと思います。C-3POはちょっぴりアジア人的、ちょっぴり日本人的なんですね。とても礼儀正しい、お行儀の良いキャラクターですから。だから、日本文化に馴染みやすいのかもしれません。ジョージ・ルーカスは、もともと3POとR2-D2を黒澤明の『隠し砦の三悪人』から着想を得て作ったほどですからね。だからこのキャラクターには、どこかオリエンタルなところがあるのでしょう。

ジョージ・ルーカスが私の声を使ってくれたのも幸運でした。もともとジョージは、3POの声をもっと別の雰囲気で考えていたんです。だから私は、こんな風に披露してみせたんです。「(3POの声で実演)こんにちは、私はC-3PO。ヒューマン・サイボーグ・リレーションズです。こちらは私の相棒、R2-D2です。」これが、私のアメリカへの初旅行でした。

※詳しいエピソードは本書で語られているが、『新たなる希望』でルーカスは当初3POのキャラクターを「イギリスの執事みたいなドロイドだとは思ってなかった」。撮影を終え、ハリウッドで何人もの俳優が3POのアフレコを試みたがどれも不発で、最終的にアンソニーがハリウッドに招かれたという。

ジョージが私の声を選んでくれたお陰で、色々な経験ができました。コマーシャルや、パナソニックの広告、それから「スター・ツアーズ」や、コンサートやエキシビジョン(展示会)の大使役。このお陰で、東京にも、福島にも招いてもらいました。それから数年経って、福島を津波が襲った時はとても悲しい気持ちになりました。とにかく、「アート・オブ・スター・ウォーズ」の大使として、日本のあちこちを周らせてもらいました。こうして、映画以外にも様々なキャリアを築くことができました。

※この質問で筆者は、『スター・ウォーズ』以外の作品に出演したい気持ちはあるか、といった意図を込めていたが、アンソニーは『スター・ウォーズ』内の役のみを楽しそうに話した。

──『ハン・ソロ』のタック役でのカメオ出演も最高でした。この本では、ある日監督がクリス・ロード&フィル・ミラーからロン・ハワードに交代になった出来事も語られていますね。ところでロン・ハワード監督は、タックとサグワの詳しいバックストーリーについて何か話していましたか?

ハハ(笑)、ノーです(笑)。この本では、ヘアセットやメイクに時間がかかった話を書いていて、その時の写真も載せていますね。あの炭鉱のシーンでは、奴隷として働かされる人がたくさんいて、人間とクリーチャー、つまりウーキーが仲間同士なんですよね。私が演じたタックは、もともと人間の奴隷の役から始まっているのですが……、もしかしたらいつの日か、バックストーリーが書かれるかもしれませんね。彼は、何かの犯罪をおかして、罰としてあそこで働かされていたんです。とある女性から、何かを盗もうとしたんですね。エピソード4で3POはあの鉱山(ケッセルのスパイス鉱山)を恐れていましたが、実際には行っていません。でも、私は行ったということですね。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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