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『コンテイジョン』出演者と学ぶ新型コロナ対策 ─ 手の洗い方や社会距離戦略、マット・デイモンらが教える

コンテイジョン
Georges Biard https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Marion_Cotillard_Cabourg_2017.jpg | NASA/Bill Ingalls https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Matt_Damon_TIFF_2015.jpg | Somewhere In Toronto https://www.flickr.com/photos/terras/37117195892

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大を受け、映画『コンテイジョン』(2011)より、マット・デイモンやケイト・ウィンスレットら出演者5名が対策を呼びかけるメッセージビデオが公開された。『コンテイジョン』は未知の感染症の蔓延を描いたパンデミック・スリラーで、現在の世界が置かれている状況を予見していたと大きな話題を呼んでいる。

甚大な影響が出ているアメリカ&フランスからメッセージを届けてくれたのは、マット・デイモンケイト・ウィンスレットローレンス・フィッシュバーンマリオン・コティヤールジェニファー・イーリー。米コロンビア大学・公衆衛生大学院の呼びかけと監修により、映画を手がけたスティーヴン・ソダーバーグ監督と、脚本家のスコット・Z・バーンズもプロジェクトに加わって実現したものだ。もっとも今回の映像では、全員が「『コンテイジョン』は映画でしたが、COVID-19は現実です」と強調。専門家のアドバイスがわかりやすく解説された5本の映像を、本記事ではポイントを押さえながらチェックしていく。

『コンテイジョン』出演者と学ぶCOVID-19対策

マット・デイモン:Social Distancing

マット・デイモンが演じていたのは、未知の感染症で妻と息子を失い、自分自身はウイルスへの免疫があった男性ミッチ・エムホフ役。もっとも、デイモンは「僕自身がCOVID-19に免疫があると信じられる根拠はありません。みなさんも同じです、何歳であろうと同じ」と語っている。また、これは新型のウイルスであり、最良の対策が見つかるまでには時間がかかるのだとも。「新しいウイルスは常に現れています。今回が最初ではないし、また最後でもない。幸い、私たちはよく似た経験を知っているし、結果的には、より強くなっています。今回も勝てるでしょう」。

デイモンが、新型コロナウイルスに打ち勝つための方策として解説しているのが「SOCIAL DISTANCING(ソーシャル・ディスタンシング)」だ。日本語では「社会距離拡大戦略」などと訳される、感染拡大を防ぐ手立てのことである。「人から約2メートル距離を取る、グループで集まらない、部屋の中にいる、ということです」。デイモンは、軽症あるいは無症状の感染者がウイルスを広げる可能性も指摘する。

「COVID-19に感染していても症状が非常に軽い、もしくはまったくないという人がいます。だから健康だと思うでしょうが、リスクを選ばないでください。それほどの価値はありません。あなたがこのウイルスを3~4人にうつし、その人たちが同じことを繰り返せば、たちまち1人が100人に、100人が1,000人に広がります。そもそも、だからこういうことになっているのです。」

またデイモンは、“若くて健康であれば問題ない、高熱が出る程度だ”とする説を「ウソです」と一蹴。現在、入院患者の約40%が55歳以下であることを明かし、また55歳以上や持病のある人にはより深刻なリスクを伴うことから、「人と距離を取るだけで命を救える」と語っている。

ソファや椅子に座ってテレビを見ているだけで命を救える。家で仕事をして、ソーシャルメディアでコミュニケーションを取れば、より多くの人を救うことができます。スマホやタブレットを見ながら一日中過ごしていたい皆さん、今がその時ですよ(笑)。そのことでからかってくる人がいたら、“命を救う邪魔をするな”と言ってあげてください。人と約2メートル距離を取ること、それが私たちにできること。自分の役目を果たしてください。別の世代は途方もないことを求められてきましたが、僕たちの場合は、それが“家にいること”なんです。」

ケイト・ウィンスレット:手の洗い方

『コンテイジョン』でウィンスレットが演じたのは、感染症の拡大を止めようとするエリン・ミアーズ医師。役づくりのために専門家からさまざまなことを学んだといい、その中でも最も重要なことのひとつが「手を洗うこと」だったと語る。「自分の命が懸かっていると思って手を洗う、ということです」。自分が手を洗うことで、医療関係者やスーパーで働く人々など、社会の維持に欠かせない仕事を担う人の健康を守れるかもしれない。そのために「今こそやるべきです」と力説するのだ。

手洗いに必要なものは「石鹸」と「水」。水は温かくなくても良く、石鹸の種類も基本的に問わないが、20秒かけてやること。ウィンスレットは、「COVID-19に感染するのは、感染者の咳やクシャミの飛沫に直接接触するから。ほとんどこれしかありません」と語っている。その飛沫が、目や鼻、口を介して入り込むことでウイルスに感染するのだ。映像の中では、服の内側や袖を使って鼻と口を押さえる“咳エチケット”も実演されている。

また、ウィンスレットは、物に付着したウイルスが、その表面で生きていることもあると強調。新型コロナウイルスは、たとえば宅配便で受け取る段ボール箱、ステンレス製のフォーク、カーペットや寝具など、あらゆるものの表面で数時間~数日間活動しているという。ウィンスレットは「頻繁に消毒をしてください」と薦める。「スプレーしたら4分待って、なるべく顔には触らないように。簡単ではありませんが大切なことです。物に触れ、顔に触ったことで感染することもありえます」。映像の最後には、「社会の健康は、文字通り私たちの手にかかっています。自分と大切な人たちを、石鹸と水で守ることができるのです」とのメッセージが語られている。

ローレンス・フィッシュバーン:今やれることを

フィッシュバーンが『コンテイジョン』で演じたのは、米疾病管理センター(CDC)の医師であるエリス・チーヴァー。かつて、天然痘やポリオが多くの人々の命を奪ったことに言及し、フィッシュバーンは「天然痘やポリオをしっかり思い出せるほど年を重ねている人は多くありませんが、当時は生活の形が変わったのです。今回も、少なくともしばらくの間はそうなるでしょう」と語っている。

「ウイルスは人間同士の接触によって広がる」と強調するフィッシュバーンは、デイモンやウィンスレットと同じく、人と距離を取り、“仕事のように”手を洗い、専門機関の話に耳を傾けるのが最善の策だと述べる。「“パンデミック”とは、ウイルスがどこにでも存在するということ。しかし、あらゆるところに同時に存在し続けるということではありません。今が楽しくなくても、それはきっと変わる。けれど、病気になった人をまだ知らないとしても、それもきっと変わることになるでしょう」

フィッシュバーンいわく、米国の専門家たちには「我々の半分が、今後数ヶ月間でウイルスに感染する可能性もある」との予測もあるという。「そうなれば、あなたたちや僕自身、あるいは近しい人が感染することになります。だから、予防のために今やれることはなんでもするべきなのです」。健康でいるための取り組みをおのおのが怠らなければ、それが医療の最前線で戦う人々を守ることに繋がる、それが重要なのだとフィッシュバーンは強調する。

「毎朝、ニュースで多くの方が亡くなったことを知ると、恐ろしい気持ちになります。それでも私たちの圧倒的多数は生きていきますし、実際に治った人の数も増えていくでしょう。ワクチンができあがるまでにも、科学者の方々は、免疫系がウイルスにどう打ち勝てるのかを学び、治療法を発見することができます。治療法が見つかるまでは、私たち自身が治療法なのです。」

マリオン・コティヤール:よりよい未来のために

『コンテイジョン』で世界保健機関(WHO)の医師レオノーラ・オランテスを演じたマリオン・コティヤールは、アメリカに先がけて新型コロナウイルスが大きな社会問題となっていたフランスの女優だ。映像の中で、コティヤールは「最悪の事態をまだ知らない私たちには、2つの未来があります。我々の全員が、そのどちらかを選ばなくてはなりません」と呼びかけている。

「ひとつめの未来は、公衆衛生の専門家が言うことに耳を傾け、家に帰り、安全になるまでじっとしているというもの。自分自身と大切な人を大切にし、人と距離を取ることを守って、家で仕事をし、人混みを避け、石鹸と水でなるべく手を洗う、ということです。そして、もうひとつの未来は、私たちを救おうとしている専門家を無視するというもの。そこでは医療のシステムが崩壊し、ウイルスの蔓延をコントロールできず、最も弱い人たちが、たくさん、死ななくても済むところを死んでいくことになります。そちらのシナリオでは、私たちは互いを責めることに時間を浪費し、差別とデマがウイルス以上に社会を傷つけることになる。私が望むのは、ひとつめの未来。できるだけ安全に、私たちがそこを目指せることを願います。」

コティヤールは、熱が出ており、咳の症状がある人には「家にいて、医師に電話し、アドバイスを受けてください」と薦める。「検査を受けることが難しい国もありますが、状況は日々良くなっています」。また、コティヤールはさまざまな対策を呼びかけてもいる。たとえば一人暮らしなら、自分の状態を確かめられる身近な人と、感染にそなえて食べ物を届ける方法を計画しておくこと。高齢者や持病者なら、自分に助けが必要であることを知らせ、日常的に状況を確かめてもらえるよう頼んでおくこと。家族などと同居している人なら、お互いを安全にケアする方法を話し合っておくこと。「このウイルスは私たちにとっても、私たちの暮らす世界にとっても新しいもの。しばらく互いに距離を取ることで、協力して乗り越えましょう」。

ジェニファー・イーリー:ワクチンができるまで

ジェニファー・イーリーが演じたのは、『コンテイジョン』で感染拡大とパニックの抑制に役立った、ワクチンの開発に従事したCDCの医師アリー・ヘクストール。映像の冒頭から、「これは中国ウイルスでもなければ、若者や健康な人に感染しないウイルスでもありません」と、一部に流布されている誤った認識を改めるよう求めている。「新型ウイルスとして認められているもので、我々の免疫系が体験したことのないものです。治療法やワクチンが見つかるまでは、年齢や民族にかかわらず、誰もに感染のリスクがあります」。

イーリーが訴えるのは、「科学者や医師の言葉には耳を傾けるべき」ということだ。ウイルスやワクチンの問題をめぐっては、そのほかの雑音に耳を貸さず、まずは専門家の見解に注目すべきだと。そんな彼女は、世界中の人々が抱いている「ワクチンができるのはいつなのか」という問題について「科学者は16~18ヶ月かかるという見解」だと話している。いわく「ワクチンを設計すること自体は簡単ですが、安全かつ確実に効くものでなければならないから」。もしも品質に難のあるワクチンが生産されれば、事態はより悪化してしまう。「適切な形で効果が出ることを確かめなければならず、そこに時間がかかるのです」。

現在、イーリーは「ウイルスこそが私たちの脅威であり、我々同士が脅威なのではないと、お互いに学べることを願っています」とも語っている。「疑心暗鬼もウイルスと同じようなもので、恐怖とデマを介して拡散されます。だけど、そちらを治すのに科学者は要りません。思いやりと常識があれば良いのです」。フィッシュバーンと同じく、イーリーも「ワクチンや治療法ができるまでは、我々自身がお互いにそういう存在でなくてはいけません」と語る。できることは、専門機関の指示に従い、互いの距離を取り、手を洗い、ともに乗り越えること。結局のところはそこに尽きるのである。

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Source: Control the Contagion

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。