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リドリー・スコット監督、スーパーヒーロー映画を痛烈批判「あんなものはくだらない」

リドリー・スコット
Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/6852647452/ )

2021年は『最後の決闘裁判』を公開し、その翌月には『ハウス・オブ・グッチ』を立て続けに公開(日本公開は2022年1月14日)する巨匠リドリー・スコット監督が、米Deadlineのインタビューでスーパーヒーロー映画を手厳しく批判している。

Deadlineのロングインタビューでは、最新作『ハウス・オブ・グッチ』の話題を中心に、監督が今後手がける新作映画『Kitbag(原題)』について語っている。『Kitbag』は、『ジョーカー』(2019)ホアキン・フェニックスがフランスの軍人・革命家・皇帝のナポレオン・ボナパルトを演じる作品で、ナポレオンという人物の起源や、容赦も恐れも知らずに皇帝へと上り詰めていくさまを、最初の妻ジョゼフィーヌとの熱烈だが不安定な関係性を通じて描く内容だ。ナポレオンが戦った名だたる戦争はもちろんのこと、軍人としての野心や戦略家としての一面など、その人物像がユニークな解釈で紐解かれるという。

ナポレオンの作品といえば、かつてスタンリー・キューブリックも『2001年宇宙の旅』の後に映画化を試みたことがあった。結局キューブリックはこれを実現させられず、企画は幻に終わっている。インタビュワーがこのことを話題に出すと、スコットはもしもキューブリックがナポレオンを映画化していたら、ナポレオン・ボナパルトの「誕生から死まで」を描いていただろうと思うと回答。続いて、自身が手がける企画は「とにかくやりたいことを選ぶ」ようにしているとしながら、『最後の決闘裁判』のように「何かが降ってくる」こともあるとした(スコットは、1977年の監督作『デュエリスト/決闘者』で決闘ものはすでに経験していたものの、マット・デイモンから『最後の決闘裁判』のアイデアを聞かされて興味を持ったので乗ったのだと話している)。

これに対してインタビュワーは、「キューブリックのナポレオンへのアプローチからどういったことを学んだのか」「キューブリックのように全体を噛み砕くのではなく、あなたはストーリーの一部を切り取るようだ」と分析を伝える。

スコットは、ナポレオンとイギリス軍司令官ウェリントン公の戦いを描いた1970年の映画『ワーテルロー』を観たことがあるかと答えている。「ワーテルローの戦い」を題材としたこのセルゲイ・ボンダルチュク監督作についてスコットは「ひとつの戦をやっているだけだ」「バトル映画は、よく注意して観ないと、何が起こっているのか分からなくなる。そうしないと、すぐに飽きてつまらなくなってしまう」と話す。「ナポレオンは61ほどの戦をやった。ボンタルチュクは1作でそれ(ナポレオンを描ききること)をやろうとした」と、スコットはナポレオンについて、ひとつの戦だけでは描ききれないのだということを続けている。

※キューブリックのナポレオン映画が頓挫したのは、製作と同時期に公開された『ワーテルロー』が興行的に失敗したことも一因とされる。

スコットは、だからこそ自身の映画ではひとつの題材に絞り込むのだと続け、「最高の映画とはキャラクターによって突き動かされるもの」と展開。そこに、こう加えたのである。「お望みであれば、次はスーパーヒーロー映画について話してもいい。潰してやれますから。ぶっ潰してやれますから。あんなものはクソくだらない(They’re fucking boring as shit)」。

突然の批判に、インタビュワーは「スーパーヒーロー映画のどういったところがお気に召さないのですか?」と尋ねる。するとスコットは「脚本が全くダメだ(Their scripts are not any fucking good)」と批判。「私は素晴らしい脚本のスーパーヒーロー3作を作った」と続ける。監督が自ら挙げるのは、『エイリアン』『グラディエーター』そして『ブレードランナー』だ。

スーパーヒーロー映画といえば、スーパーパワーを持った主人公による勧善懲悪の物語を思い浮かべるだろう。スコットはこの3作は紛れもなくスーパーヒーロー映画であるとしながら、「なぜスーパーヒーロー映画にはまともなストーリーがないのか」と嘆いている。こうした映画に物語としての魅力を感じていない様子のスコットは、スーパーヒーロー映画とは「だいたい特殊効果でなんとかなっている」ものであり、「特殊効果の仕事をする人からすれば、どんどんつまらないものになっている」と痛烈に語るのだった。

このインタビューの終盤では、ナポレオンへの思いや西部劇に対するインスピレーションを語ったスコット。最後に今後の企画について「スーパーヒーロー映画はもうやりませんよね」と確認されたスコットは、「(『ブレードランナー』の)ハリソン・フォードはスーパーヒーローだ」と持論を語る。「でも、みなさん困惑するでしょう。彼は最後、他のスーパーヒーローに叩きのめされるから。そいつは悪人だと思っていたのに、実際には善人だったと。最高だと思います」。こう話すのは、デッカードとロイ・バッティの複雑なドラマを気に入ってのことだろう。

リドリー・スコットがスーパーヒーロー映画を大ぴらに批判するのはこれが初めてではない。2016年にも「スーパーヒーロー映画は私のやることじゃない。だからやったことがない」と語っていたことがある。この時スコットは、スーパーヒーロー映画の監督を頼まれたことがそれまでも何度もありながら、「非現実的な状況でか細い綱を渡るような、薄っぺらいスーパーヒーロー映画なぞ信じられない」と指摘していた。

この度も、スーパーヒーロー映画嫌いの姿勢は変わっていない様子のスコット監督。あけすけな語りを自認もしているようで、最後には「私の中の最悪な部分を引き出してくれてありがとう」とも締めている。

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Source:Deadline,Digital Spy

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。