【インタビュー】『21ブリッジ』監督、チャドウィックの笑顔わすれない ─ 没入感とリアルタイム感へのこだわり語る

『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマンが主演と製作を務めた最後の映画、『21ブリッジ』が、2021年4月9日より日本公開となる。危険なまでに正義を求めるニューヨーク市警殺人課のアンドレ刑事が、真夜中のマンハッタンを舞台に、コカインの強奪犯を命がけで追うクライム・スリラーだ。
犯人の逃亡を防ぐため、マンハッタンに架かる21の橋すべてを封鎖し、一夜限りの緊急ロックダウンで犯人を追い詰める。タイムリミットは午前5時。朝がやってくる前に、アンドレは逃げた犯人2人を捕まえなければならない。だが、追跡を進めるうち、夜よりも深い闇の陰謀が潜んでいることに気付いていく……。
THE RIVERでは、監督のブライアン・カークとの単独インタビューを敢行。監督はロンドンからビデオチャットをつなぎ、『21ブリッジ』の裏話や、故チャドウィック・ボーズマンへの思いをじっくり語ってくれた。

マイケル・マン監督作からの影響
──お元気ですか?この映画を製作されたころから、世界はすっかり変わってしまいましたよね。この映画ではマンハッタンがロックダウンされますが、今では現実世界で、世界各地でロックダウンが行われているんですから……。(編注:撮影は2018年9月に開始されていた。)
その通りですね。映画製作や劇場鑑賞における集団体験、人と集まって隣に座れたことが、いかにありがたいものだったかを思い知らされました。ここロンドンでも、また劇場が再開される日を願ってやみません。昨年(2020年)は、知らない人たちと暗い場所(劇場)に逃避して、大好きな物語を観れることが恋しくてたまらなかった。
──僕はマイケル・マンの作品が大好きなのですが、『21ブリッジ』での夜景の写し方が、マン監督作のような雰囲気でグッときました。今作の撮影監督は、マン監督作の『コラテラル』(2004)と同じポール・キャメロンということもありますよね。やはり、マイケル・マンからの影響はありますか?
あります。幸運なことに、数年前にロサンゼルスで、マイケル・マンとテレビドラマ「Luck(原題)」でご一緒させていただいたんです。彼の影響で、もっと映画を作ってみたいという気になりました。『ヒート』(1995)や『ラスト・オブ・モヒカン』(1992)『インサイダー』(1999)や『コラテラル』は何度も観ていて、多大な影響を受けています。マイケルの映画はたくましくて、とても直感的で没入させられる。細かさとスケール感のバランスが素晴らしく良いんです。
今作でも、何よりもアンドレ(チャドウィック・ボーズマン、主人公の刑事)とマイケル(ステファン・ジェームス、強盗犯)の立場に立って、正反対のふたりがやがて一体になっていくような感覚を味わってほしかった。それと同時に、軍事侵略スペクタクルらしさも出したい。その両立が難しいところでした。それから第3の要素としては、刻一刻と状況が動くリアルタイム感です。たとえば『コラテラル』でも顕著ですね。
撮影のポール・キャメロンは、マイケル・マンのみならず、トニー・スコットなど錚々たる人たちと仕事をしてきた経歴がありますが、それよりも私が魅せられたのは彼のライティング(照明)です。人の皮膚の照らし方がすごい。今作のように、主人公と相手役の両方がアフリカ系で、夜の街を駆け回るということになると、スキントーンや顔の形を繊細に捉えなくてはなりません。ただドンパチやってるアクションフィギュアみたいなものではなく、しっかり人間らしく描くためです。

チャドウィック・ボーズマンとの思い出
──この映画について語るにあたって、チャドウィックが亡くなったという事実は、どうしても避けられません。正直なところ、彼の新作がこうして今も日本で公開されるとあって、まだ彼がいなくなったことが信じられないです。
私も彼の不在が想像できず……、チャドウィックはまだ旅を始めたばかりだったのに。映画スターになって、すばらしい仕事をされて、文化的なリーダーにもなった。そういう責任感もわかっていた。これからは、そうしたアイコニックな存在になっていく道半ばでした。