「大ヒット映画の主役は白人男性が多い」は本当か?そのカラクリは ─ 米研究

実際のところ、主人公の性別や人種は、映画の興行収入や製作費とどのように関係しているのか? エンターテイメントにおける多様性と包括性を研究する、南カリフォルニア大学の「The Annenberg Inclusion Initiative」(以下AI2)が研究結果を発表した。
米The Hollywood Reporterによると、AI2は2021年~2022年に優れた興行収入を示した実写映画126本(群像劇作品を除く)について、主人公の属性と製作費、広報・宣伝費、配給分布を調査。主人公のアイデンティティと興行収入の関係を分析した。
その結果、たしかに白人男性が主役の映画はアメリカ国内市場・海外市場の両方で高い興行収入を収めているものの、男性が主人公の映画は、女性が主人公の映画よりも製作費や宣伝費が大きく、また上映館数も多いことが判明。論文の中では、白人男性の映画だからヒットしたのではなく、むしろ“自己充足的予言”(強く願ったという事実がその達成をもたらした)に近いと指摘された。主人公のアイデンティティが実際に関係していたのは、興行収入ではなくスタジオからの経済的支援だった、ということだ。
そこで、研究チームは製作費や宣伝費、配給分布を統計的に整理。その結果、主人公の性別や人種は国内外の興行成績とは関係がないことがわかったという。論文には「経済的支援の変数を整理したところ、有色人種の女性が主役の作品は、白人男性が主役の作品と同じくらい興行成績が優れている」ことと、有色人種の女性が主役の映画は、男性・女性/白人・有色人種に基づく4グループの中で、米Metacritic(レビュー収集サイト)のスコアの中央値が最も高かったことが記されている。
主著者のステイシー・L・スミス氏は、「(スタジオの)幹部による白人男性映画の支援は、映画の主人公ではなく、自らの成功を後押しするものです。しかしながら、白人男性を描いた映画は、今もスタジオや配給会社によって最も多く公開されています」と記した。
「スタジオや配給会社は売りたい映画を売ることができる。そして彼らは、白人男性の映画を、他のグループの作品よりもはるかにたくさん売ることを選んでいます。このシステムは、白人男性の物語に有利に働くよう作られているのです。その結果、少女や女性の映画の価値が低くなることは、現実的に彼女たちの報酬が男性よりも低くなることを意味しています。これが、ハリウッドの女性が受けている継続的かつ複合的な不利益なのです。その影響は、映画の物語が少なくなるという形で観客に降りかかるだけでなく、同じ才能がありながら男性より報酬が低い業界の女性にも及んでいます。」
ちなみに、2021年に最もヒットしたアメリカ映画は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で、2022年は『トップガン マーヴェリック』だった。
Source: The Hollywood Reporter