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世界一有名なスニーカー「エア ジョーダン」を生み出した一発逆転の実話『AIR/エア』は、今を生きるすべてのオトナたち必見

AIR/エア
© AMAZON CONTENT SERVICES LLC

「憧れは捨てて、勝つことだけ考えよう」とは、WBCで見事優勝を果たした野球日本代表・大谷翔平選手の言葉だ。映画『AIR/エア』でも、強大な相手に一発逆転を果たした男たちの、アツいお仕事ドラマが描かれる。誰もが知る伝説のシューズ「エア ジョーダン」の、誰も知らない奇跡の実話。これは、弱小チームが信念を貫いて勝利をもぎ取った、感動のサクセスストーリーだ。

ナイキといえば、今では誰もが憧れる世界的スポーツブランド。中でも「エア ジョーダン」はスニーカー愛好家の間でプレミア価値もつくほど特別なもの。しかしこのシューズが登場するまで、意外にもナイキはバスケットシューズ業界の圧倒的な負け犬で、1984年当時の人気の的はコンバースやアディダスで、ナイキのシェア率はわずか17%だったのだ。

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彼らのようなスポーツブランドは、話題のアスリートと独占契約をして、自社のシューズを履いてもらうことで知名度やブランド価値を高めるというプロモーション方法が主流。そして当時の各社は、バスケットボール界で話題となっていたある選手に目を付ける。後に“神様”と称されるまでになる、説明不要の伝説的プレイヤー、マイケル・ジョーダンだ。

業績不振に直面し、このままではバスケットシューズ部署を畳むしかないという危機にあったナイキ社。そんな中、マット・デイモンが演じる主人公ソニー・ヴァッカロは、あろうことかまだNBA活躍前のルーキーだったマイケル・ジョーダンとの契約に予算を“全振り”するという一大ギャンブルに挑む。しかも当のマイケル本人はアディダスの大ファンで、ナイキなんて眼中にないどころか、「絶対に嫌だ」とさえ言っているらしい。何せランニングシューズ出身のナイキは当時もっぱら陸上競技向けのブランドで、バスケシューズのイメージはほぼ全くなかったのだから。

どう考えても勝ち目ナシの、無謀な作戦だ。しかしヴァッカロは自分の人生を賭ける。なんとこの男、ジョーダン家にアポなしで“飛び込み営業”に出かけてしまったのである。ジョーダン家には窓口となる代理店がついていて、ここを飛ばして家族に直接営業なんてご法度中のご法度。下手すれば間違いなくクビが吹っ飛ぶし、業界からも干されかねない。

しかし、この危険な賭けが吉と出る。マイケル・ジョーダンの肝っ玉母ちゃん デロリスと一対一で話すことができたのだ。そこでヴァッカロは、とある条件を達成すればもう一度会ってもらうという約束を取り付けることに成功する。やったぞ、突破口を開いた!ここからナイキ社内では、胸アツなチームワークが展開されることになる。

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あの有名なジョーダンが飛ぶ「ジャンプマン」ロゴを考案し、「エア ジョーダン」のデザインを手掛けるピーター・ムーア。無謀で大胆な賭けに挑むチームの裏方として様々な調整ごとを進めるバランサー、ヴァッカロの上司ロブ・ストラッサー。最高のムードメーカーで、運命の商談では場を存分に和ませてくれる、現在はバイス・プレシデントとなっているハワード・ホワイト(演じるクリス・タッカーの調子がこれまた絶妙なのだ)。そして、ナイキ創立からいくつもの修羅場をくぐり抜けてきたCEOのフィル・ナイト。個性もスキルも異なるプロフェッショナルたちが、互いを信じあい、一筋の希望に賭けて、一発逆転の取引に挑む姿には多くの者が共感を覚えるだろう。

年間40億ドル売り上げる超大ヒット商品「エア ジョーダン」誕生秘話が描かれるだけあって、もちろんスニーカー愛好家は垂涎ものの内容。あのカラーリングに隠された、反骨精神溢れるナイキならではの有名な逸話も語られ、スニーカー・トリビア映画としての側面ももちろんあるが、この映画が最も比重を置くのは、弱小チームがリスクをかけて大きな勝利に挑んだ、すべての大人たちに捧げる胸アツの大逆転劇だ。

ナイキの物語といえば、フィル・ナイトCEOが執筆し、日本でも「ビジネス書大賞」に選出されるほど大ヒットした書籍『SHOE DOG』がある。劇中では『SHOE DOG』で丹念に語られたフィル・ナイトの要素はセリフや映像で登場。破天荒なやり方で業界を駆け上がったナイトはベン・アフレックが飄々と演じており、本作では脇役に回った。

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あの勢いまかせの交渉術は、マット・デイモンが務める主人公ソニー・ヴァッカロに引き継がれている。ヴァッカロも『SHOE  DOG』内の後半(1977年)から登場していたので、同書との繋がりを意識して鑑賞するのも一興。そもそも『SHOE DOG』では1962年から1980年までの出来事が描かれたが、1984年を舞台とする『AIR』はその続編のようなところもある。同書を興味深く読んだ方ならなおのこと必見だ。

最後に、映画通にとっての注目点をご紹介しておこう。本作には、監督ベン・アフレック×主演マット・デイモンというハリウッドきっての鉄板激アツ親友コンビが放つ渾身作という見どころもある。フィルムメイカーとしてのベン・アフレックといえば、第85回アカデミー賞作品賞の『アルゴ』をはじめ良作多数。マット・デイモンも、『オデッセイ』(2016)、『フォードvsフェラーリ』(2020)などなど数々の名作で知られる、企画の審美眼に優れた実力俳優だ。映画ファンは、2人の大出世作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)での共演も思い出すはず。

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共演者も豪華で、ナイキ社の主要メンバーには『JUNO/ジュノ』(2007)のジェイソン・ベイトマンや『ラッシュアワー』シリーズでお馴染みのクリス・タッカーらが脇を固め、マイケル・ジョーダンの母は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)アマンダ・ウォラー役のヴィオラ・デイヴィスが胆力存分に演じる。また、1984年が舞台となるだけあって、劇中には80年代ならではのアイテムや楽曲がカラフルに登場する点も特徴的。

監督のベン・アフレックが「この映画は人生最高の経験だった!」との自信を語る本作は、なんと辛口レビューサイトのRotten Tomatoesでは「100%」という最高の批評家スコアを獲得(2023年3月28日時点)。彼らの劇的な大逆転ドラマが、批評家たちも唸らせたのだ。

多くのビジネスマンが心機一転のひと区切りを設けたり、新社会人がデビューしたりする春。4月7日に本作が日本公開されるというのは、この上ないベストタイミング。いま劇場で鑑賞できる好機を見逃すのは本当にもったいない。チーム全員で勝利を掴むこの感動の実話は、誰もが明日からの仕事の活力にできる。きっと働く大人たちはお気に入りのお仕事ムービーを何本か知っていることと思うが、本作もまた間違いなく新たなバイブルとなりうる作品だ。

『AIR/エア』は2023年4月7日、日本公開。今を生きる、すべてのオトナたちへ。

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Supported by ワーナー・ブラザース映画

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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