【歴代アルフレッド総特集】執事アルフレッド役俳優から紐解く『バットマン』の方向性
筆者は不勉強にも知りませんでしたが、なんでも現在日本のオタク文化、ポップカルチャー界では、空前の『執事ブーム』なんだとか。執事という単語の後に、ブームという単語が来ると、もう昭和生まれの此方としては、文字面がゲシュタルト崩壊を起こしそうですが、秋葉原などではメイドカフェならぬ執事カフェなるものが存在し、「お帰りなさいお嬢様」なんつったりして、クールJAPANのカオスの度を濃くしているとか。
まあでも、折角来てるブームですからTHE RIVER的にも乗っかっておこう、というわけで、今回はセバスチャン?誰それ?執事と言ったらこの人だろ!バットマンのアルフレッド特集です。
歴代アルフレッド総特集
そもそも皆さんはバットマンに登場するサブキャラクターで誰が一番好きですか?ゴードン警部?キャットウーマン?
筆者は断然アルフレッド派です。両親を失ったバットマンことブルース・ウェインを、少年時代から見守り育て上げ、長じてバットマンとなってしまってからは、数少ないその正体を知る者として、献身的なサポートを続けています。バットマンを、バットマンたらしめているのはアルフレッドと言っても決して過言ではない(はず)のです。
そのアルフレッドですが、今までバットマンの(有名な)映像化にあたってはざっくり5人の俳優がその役を演じてきました。順番にご紹介しますが、その前にまず前提として、原作であるコミックスでのアルフレッドはどういう人物かというと、1940年代の初出から現在まで、ほとんどそのヴィジュアルイメージに変化がないのが特徴的で面白いところです。年の頃は中年から初老のイギリス人で、瘦せ型、頭髪は薄く執事の伝統に阿った燕尾服を身にまとっています。親しい仲であるブルースにも、決して馴れ馴れしくはせず、苦言を言う際にも常に従僕としての礼節を忘れないプロフェッショナル、これが例外こそあれど一貫した原作における執事アルフレッドのイメージです。そして、これが映像化された際にどう変化したか、というところに着目すると、その映像の監督が自らの作品となる「バットマン」で表現したかったものが端的に顕れているのではないかと考えます。
『バットマン TVシリーズ(1966)』アラン・ネイピア
35歳以下の読者の方はご存じないかもしれませんが、日本でも放映していたバットマン TVシリーズ。アダム・ウェスト演じるバットマンことブルース・ウェイン、バート・ウォード演じるロビンことディック・グレイソンのダイナミック・デュオが活躍する「バットマン」は、1966~1968年にかけて、120以上のエピソードが放送され、大人気を博しました。この作品のおかげで、「バットマン」は現在のポップアイコンとしてのポジションを確立するに至ったという経緯があります。
「バッマーン!」という耳に残るオープニングテーマと、現在のバットマンからは考えられない、色彩豊かでキッチュ、どことなく馬鹿っぽいアクションコメディ、筆者世代(1970年代生まれ)にとっては、バットマンのイメージはティム・バートン版「バットマン」が登場するまで、この作品でした。
そしてこの作品で、アルフレッドを演じていたのがイギリス人俳優、アラン・ネイピア。作品自体はゆるいノリでしたので、コメディリリーフ的な役割も多くありましたが、彼の演じるアルフレッドは、ちょっと年齢こそ高めですが、長身痩躯、品の良いイギリス老紳士然としており、原作のイメージに忠実であったと言えると思います。
『バットマン』(1989)『バットマン・リターンズ』(1992) マイケル・ガフ
言わずと知れた、ティム・バートン版2作、そして人によっては黒歴史と呼ぶこの後の「バットマン・フォーエバー」と「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」の4作を通してアルフレッドを演じたのが、こちらもイギリス人俳優、マイケル・ガフ。アルフレッドと言えばこの方を挙げる人も多いのではないでしょうか。何しろ4作の間に、ブルース・ウェイン役はマイケル・キートン、ヴァル・キルマー、ジョージ・クルーニーと迷走したのに対して、アルフレッド役は変化しませんでした。いじる必要のないハマり役であったという事の証左と言えます。
マイケル・ガフの演じるアルフレッドは、前任のアラン・ネイピアが演じたアルフレッドのイメージをほぼ踏襲しており、ちょっと皮肉も言う好々爺といった存在感は、殺伐としたストーリーの清涼剤となっていました。このティム・バートン版「バットマン」及び、前のバットマンTVシリーズは殊程左様に、世界観構築に於いては「原作を強く反映したもの」であったと言えるのではないでしょうか。
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