前作から失われたファンタジー…『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』レビュー

『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』評価・感想

2010年に公開された「アリス・イン・ワンダーランド」の続編だ。
ティム・バートンは製作に留まり、監督はジェームズ・ボビンへとバトンタッチ。
前作ラストから3年以上の時を経て 逞しい女性へと成長したアリス(ミア・ワシコウスカ)は、長い船旅からロンドンへと帰還する。
アリス不在の間に状況は一変しており、仕事のパートナーであったアスコット卿は他界。
かつて結婚を断ったアスコット卿の息子 ヘイミッシュ(レオ・ビル)がすべてを牛耳っていた。
家と父の形見の船を天秤に掛けられたアリスが思い悩むのと時を同じくして、ワンダーランドの扉が再び開き出す。
ワンダーランドという名の己自身と向き合い、目の前の現実に立ち向かっていく女性の物語だ。

ぼくらの心の中にもワンダーランドは存在する。
アリスのようにそれを知覚することは叶わないが、きっと存在する。

何か壁にぶつかった時
その壁を破ることができずもがいている時
打破するための行動を起こし始めた時

これらの際に生じる葛藤を可視化・具現化したのがワンダーランド。

アリスは冒頭で明言する。

不可能を可能にするためには信じること

それを体現していたアリスだからこそ、彼女の成長を強く感じられた。
だが、その道理を理解していようとも 押し通すことが難しいのが人生だ。

アリスは思い悩む
自分を信じることができなくなる
そして訪れるワンダーランド。

一作目とは異なり、現実世界での問題とワンダーランドでの問題がより密接に描かれる。
そして、ワンダーランドはアリスの心が反映された世界であることがより顕著に描かれる。

その描き方から 前作に比べ同じ人間であるリアリティは増していたが、観客が観て感じ取る「余白」の部分を根こそぎ奪い取られていた気もする。

もしかしたらこうなのかも
あそこはああだったのかも
よく分からなかったけど、確実に胸を揺さぶられるモノがあった

それら感じ取ったモノを映画館から持ち帰り、己の心へと次第に昇華していく
その作業 その余白こそが映画を観るということの醍醐味のひとつではないだろうか。

あまりにも親切で分かりやすいシーンの数々には、思いを巡らせるだけの隙間が生まれない。

信じることが力を生み出す
過去は変えられない

とても素敵で本質的な言葉・指針ではあるけれど、皆その道理は心得ている。

それをそのまま言葉で示すのではなく、あらゆるシーンや登場人物の葛藤において その抗えない事実を感じ取らせて欲しかった。

あまりにも不思議ではなくリアリスティックな世界からは、結末の方向性も一つしか見えてこない。

どんな苦難に立とうとも、それを乗り越えて行く様しか見えてこない。

それを乗り越えられるのか、乗り越えられず打ちひしがれてしまうのか?
そういった駆け引きが0のため、終盤は予定調和感が拭えなかった。

アリスが前向きに生きていく姿には勇気をもらえたが、ワンダーランドが持ち合わせていたファンタジー性は失われていた。

ぼくらが映画を観て感じ取る余白部分
ファンタジーを失ったワンダーランドからは何も感じ取ることができなかった。

ティム・バートンが監督から離れたからなのか、ファンタジー性のバランスが崩れてしまった気がします。
若しくは、アリスが今後ワンダーランドへ立ち寄らなくても済むほどの「確かなモノ」を手にしたか。

だが、人生に正しい道・正解などない。
ワンダーランドに立ち寄らない確証なんてきっとない。

深い葛藤の末に辿り着くゴールでもなかったため、そのポジティブさに付いていくことができませんでした。

Source:http://screenrant.com/alice-through-looking-glass-movie-2016-reviews/

3.6
総合評価:C

アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅

原題 ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン 上映時間 113分

青春
4
2
エロ
2
サスペンス
4
ファンタジー
6

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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