新型コロナで閉鎖の米映画館チェーンAMCの株価が突然高騰、その意外な理由とは

コロナ禍で閉鎖に追いやられ、よもや倒産かとも囁かれる米映画館チェーン最王手AMCの株価が、ここにきて急騰した。2020年5月11日朝の取引では、それまでの4.1USドルから、一時最高6.41USドルまで上昇したのである。一体なぜ?

その答えは、英タブロイド誌Daily Mailの記事。経営危機に陥ったAMCを、なんとAmazonが買収するのではないかと報じたのだ。
実際の記事には、一体どういった情報源から伝えているのかは書かれていない。さらに、「話し合いが今もされているか、成立するかどうかは不明」「AmazonはAMCへの関心についてのコメントを否定した。AMC側もコメント依頼に応答しなかった」とあるので、眉唾ものだ。
それでも、Amazonが劇場チェーン最大手の買収に乗り出すという可能性には、妙な真実味がある。Amazonが映画製作事業に進出してから既に10年ほど経っており、「Amazonオリジナル」の看板作品としては最近、アダム・ドライバー主演『ザ・レポーター』(2019)やフェリシティ・ジョーンズ×エディ・レッドメインW主演『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』(2019)といった話題作を送り出した。これらの作品は、賞レースへのエントリー条件を満たすため一定期間だけ劇場で公開した後、自前にしてプラットフォーム最大手のAmazonプライム・ビデオへの配信へ早々に切り替えるのだ。「あの劇場作が、早くも配信に」ということで、Amazonプライム・ビデオの魅力も増す。
仮にAmazonがAMCを獲得すれば、全米にある劇場全てを一挙に手中に収められることになる。すると、Amazonの市場優位性は化ける。実際にAmazonは、2018年にLandmark Theatresという映画館チェーンの買収計画に手を付けていたこともあった。ネット通販からスタートして、アメリカではリアル店舗も出し始めたAmazonのことだから、そこまでおかしな考えでもないように思われる。
タブロイド誌が報じたこの真偽不明の情報を受け、株価が一気に動いたというわけだ。情報自体は懐疑的なものだが、この動きを面白がった業界メディアも記事を書いた。米DeadlineやVarietyは冷静に見ており、Deadlineは「我々の情報筋は、そんな話し合いは存在しないと言っている」といった情報や、AMCの動向を追うアナリストの「信じがたく、理解しがたい」といったコメントを紹介。Varietyは「これで株価も上がってしまい、Amazonの関心も損なわれただろう」と見ている。
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Source:Daily Mail,Deadline,Variety