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【解説】『X-MEN:アポカリプス』のヴィラン“アポカリプス”の理念─原作では単なる悪役ではなかった

映画『X-MEN:アポカリプス』に登場し、暗躍をみせたアポカリプス。エンジェルの翼を復活させたり、ストームの能力を増加させたり、自分自身は新しい身体に精神を乗り換えたり、砂を操ったりと、計り知れない能力を存分に発揮していたキャラクターだ。

劇中でアポカリプスは、自分が生き埋めにされた時代に比べて現代は腐敗してしまったと嘆き、世界を再生させるために一度世界を破壊しようと目論んでいた。しかし一方で、不幸のどん底にいるマグニートーには手を差し伸べ、ストームにも歩み寄るなど、ヴィランではあるものの、単なる人殺しではなく理念に生きる存在であることを垣間見ることができた。

http://gigazine.net/news/20160426-x-men-apocalypse-final-trailer/
http://gigazine.net/news/20160426-x-men-apocalypse-final-trailer/ (C)2016 MARVEL & Subs. (C)2016 Twentieth Century Fox

原作コミックに登場するアポカリプスは、大きな口や頭部こそ映画と共通するが、人とはかけ離れた姿で登場する。ヴィランであるアポカリプスが、コミックで掲げる思想は“適者生存”だ。その思想に沿うかぎり、彼はX-メンの味方をすることもある。今回は、コミックのアポカリプスが登場するエピソードから、彼が完全なる敵役ではなかったエピソードをご紹介しよう。

http://screencrush.com/x-men-apocalypse-first-look-comic-con/
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エピソード①  敵であるX-メンとの共闘

1990年代に発表されたエピソード『エクスキューショナーズ・ソング』では、プロフェッサーXがストライフ(サイクロップスとジーン・グレイの息子のクローン)によって暗殺されかけてしまう。アポカリプスを恨んでいたストライフは、プロフェッサーXの暗殺を試みたあと、復讐のためアポカリプスを殺しに向かうのだった。サイクロップスに倒されて休眠ポッドで回復中だったアポカリプスは、ストライフに全く歯が立たず、X-メンの基地に逃げるのだ。

http://comicvine.gamespot.com/stryfe/4005-7616/forums/messiah-war-stryfe-or-x-cutioners-song-stryfe-556041/
http://comicvine.gamespot.com/stryfe/4005-7616/forums/messiah-war-stryfe-or-x-cutioners-song-stryfe-556041/

狙撃されたプロフェッサーXは、弾に仕込まれたテクノオーガニックウイルスに感染していたが、アポカリプスはこれを除去し、X-メンと協力してストライフを倒そうとする。圧倒的なストライフ側の戦力にアポカリプスは敗北するが、この助力によってX-メンは勝利を収めるのだった。

このエピソードのアポカリプスは、映画と異なり少し弱体化している。一緒に戦うX-メンには人情深いところは映画と共通しているだろう。このエピソードは小学館時代に和訳されている有名な話なので、古本屋で見つけることができるかもしれない。

エピソード② 地球を守るため宿敵に手を貸す

同じく1990年代の『オンスロート』というストーリーラインのエピソードである。オンスロートとは、プロフェッサーXと、彼が吸い取ったマグニートーの精神が融合して誕生した最強のヴィランだ。太陽を地球に近づけて破壊しようするオンスロートとの戦いは、マーベルユニバース全体を巻き込んだものとなる。

「我こそが地球を支配するのだ」と考えているアポカリプスは、地球を破壊しようとする、自らよりも強いオンスロートを危険視する。そこでオンスロートを倒すため、宿敵のケーブルに協力するのだ。ケーブルは、サイクロップスとジーン・グレイの子供が未来で成長した戦士であり、アポカリプスとは敵対関係にある。

http://www.brucetringale.com/le-pere-du-crossover-moderne/
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オンスロートは自分の力を高めるため、現実改変能力をもつフランクリン(Mr.ファンタスティックとインビジブルウーマンの息子)を自身の体内に幽閉していた。ケーブルとインビジブルウーマンが、フランクリン奪回のため共闘しようとするところに、アポカリプスが助けを申し出る。しかし、フランクリンを暗殺してオンスロートを弱体化しようという真の目的がケーブルにバレてしまい、あっさり反撃に遭ってしまう。ヒーローたちが自己犠牲によりオンスロートを撃退したあと、アポカリプスが「自分の時代が来た」と言ってほくそ笑む姿は必見である。

映画ではマグニートー、サイロック、ストーム、エンジェルを従えつつ、自分自身も戦力として大活躍していたアポカリプスだが、この『オンスロート』では“暗躍”という言葉がよく似合い、自身は最小限の力で世界を手に入れようとしている。こちらも小学館時代に和訳済なので、古本屋で見つけることができるかもしれない。

エピソード③ 人口が減ったミュータントを助けたい(?)

http://matchcut.artboiled.com/showthread.php?3525-51-Comics-that-Sven-Likes/page5
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『ハウス・オブ・M』というストーリーラインでは、ミュータントがその能力を失い、普通の人間になってしまう。世界のミュータント人口は198人にまで減少し、ミュータントと人間の比率が崩れてしまった。そこでアポカリプスは、人間同士で殺し合って人口を減らさなければ、かつての「ミュータント:人間」の人口比となるようなウイルスをばらまくと人類に宣言する。しかし最後は、下僕であるオジャマンディアスに裏切られ、X-メンに倒されてしまう。

このストーリーではX-メンではなく人類を敵に回しているが、そこには人口が減ってしまったミュータントを救いたいという意思があった。部下のフォーフォースメンを結成する際には、ミュータント能力を失っていたガンビットとポラリスの能力を復活させているし、サンファイアにはミュータント能力と事故で失われた足を復活させている。実に親切だ。映画でも羽を失ったエンジェルの飛行能力を取り戻したり、ストームの能力を強化するなど、ミュータント能力を操作する姿を見ることができる。

エピソード④ 誘拐された少女を救う

『メシア・ウォー』というストーリーラインで、X-Force(X-メンの極秘チーム)は未来に行き、逃亡生活をしていたケーブルと、ミュータントの救世主とされる少女ホープを救おうとする。しかしホープがストライフに奪われてしまい、X-Forceとケーブルは窮地に立たされてしまう。そこに助けにやってきたのはなんと未来のアポカリプス。あっさりとホープをストライフから取り戻し、X-Force陣営に引き渡している。

本記事で紹介した一つ目のエピソード「X-メンとの共闘」で敗北してから、アポカリプスはストライフに(現実世界では)20年ぶりの復讐を果たしている。結果的にただのヒーローになってしまう面は、もちろん映画では取り上げられていない……。

http://www.projectcoe.com/2012/05/22/marvels-10-year-plan-part-4-messiah-war/
http://www.projectcoe.com/2012/05/22/marvels-10-year-plan-part-4-messiah-war/

 

コミックでもアポカリプスが登場するエピソードではその邪悪さが目立つものの、ここまで触れてきたように、彼にとって最も大切なのは“理念”である。映画版では残念ながらただの悪人として描写されており、そのうえ見た目も人間らしさが強いキャラクターで、原作のキャラクター像を最大限には活かしきれていなかったと考える。もっとも、その中でも原作に似ている部分が見られることは、映画をより深く楽しむきっかけになるかもしれない。現在発売されている邦訳版コミックと比較しながら、もう一度『X-MEN:アポカリプス』を観るのもきっとおもしろいはずだ。

Eyecatch Image: http://jp.ign.com/x-men-apokaripusu/5458/review/x-men
(C)2016 MARVEL & Subs. (C)2016 Twentieth Century Fox

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baron8472

アメコミ、映画が大好きです。小学生のときからMarvelにハマっています。

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