2017年2月、北朝鮮・朝鮮労働党委員長、金正恩の実兄である金正男（キム・ジョンナム）が暗殺されるという事件が発生。実際に手を下したのは、ごく普通の若い女性2人だった……。

白昼堂々発生した“歴史的暗殺事件”の闇と真相に迫る、驚愕のドキュメンタリー映画『ASSASSINS（原題）』が、邦題『わたしは金正男（キム・ジョンナム）を殺してない』として2020年10月10日（土）より世界最速、全国順次公開となる。

金正男暗殺事件、その闇と真相

金正男が暗殺されたのは、マレーシアのクアラルンプール国際空港。監視カメラの映像には、後ろから近づいてきた若い女性ふたりによって両手で目を覆われ、猛毒の神経剤「VX」を塗りつけられた正男の姿が映っていた。よろめきながらその場を立ち去った正男は、その後わずか1時間もしないうちに死亡が確認される。

犯人とされたのは、ベトナム人とインドネシア人の若い女性ふたり。まるでイタズラのような“ドッキリ”映像はたちまち世界を駆け巡り、その後しばらくして新たな情報が明らかになる。正男を殺害した女性ふたりは「（SNSに投稿するための）イタズラ動画を撮るために雇われただけで、雇い主の目的は一切知らなかった」とそれぞれ主張したのだ。

ところがマレーシア政府は女性たちの主張を一蹴、ふたりを逮捕して拘置し、殺人罪で起訴した。有罪になった場合は死刑が適用される。果たして女性たちの主張は事実なのか、ふたりの言葉を信じる者はいるのか。なぜ彼女たちは正男を暗殺したのか。ふたりはプロの殺し屋なのか、それとも本当に何も知らなかったのか……。やがて、無罪を信じる弁護団による調査からは、「有名になりたい」「お金が欲しい」と夢見る貧しい女性たちにSNSを通して罠を仕掛けた北朝鮮工作員の存在が浮かび上がってくる。

公開された場面写真は、逮捕後に撮影されたシティ・アイシャ（左）とドアン・ティ・フォン（右）の表情と、暗殺時「LOL（大爆笑）」と書かれたTシャツを着ていたことでも世界中の話題をさらった監視カメラ映像のものだ。

監督を務めたのは、ホロコーストの生存者であり、アメリカで最も有名なセックスセラピストであるドクター・ルースを描いた『おしえて！ドクター・ルース』（2019）を手がけたドキュメンタリー界の気鋭ライアン・ホワイト。サンダンス映画祭の監督賞に輝いた『ジェンダー・マリアージュ ～全米を揺るがした同性婚裁判～』（2014）では共同監督として、カリフォルニア州の同性婚禁止を憲法違反として告発した裁判の舞台裏を5年以上にわたって追いかけた。同作はアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞の最終選考に残り、エミー賞候補にもなっている。

『わたしは金正男を殺してない』では、ライアン監督は北朝鮮・平壌をはじめ、逮捕された女性ふたりの故郷であるインドネシアやベトナム、裁判が行われているクアラルンプールの法廷を飛びまわり、暗殺事件と容疑者ふたりの驚くべき事実をカメラに捉えている。

映画『わたしは金正男（キム・ジョンナム）を殺してない』は2020年10月10日（土）シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。