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「2PACの死を知ったのは、MTVだったかな」ZEEBRAとKダブシャインが語る2PAC伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』

ただし渦中の2PAC自身は、東西抗争に疲弊しきっていた。彼を死に至らしめた銃撃事件の3日前、生涯最後のMTVアワード出演後のインタビューにて、東西抗争について訪ねられた2PACはこう答えていた。

「周りが騒ぎすぎなんだよ。あんたら(メディア)も話していいことと悪いことがある。東西抗争はメディアが経済効果を狙って仕掛けたんだ。それをドラマ化している。MTVは大好きだが、俺たちを勘違いするな。東西抗争だなんて。

メディアは世界中に架空の東西抗争を報道している。それが問題だ。俺たちももっと模範的になる。だから作り話はやめてくれ。あんたらには権力がある。お互い自制した方がいい。」

『トゥパック:レザレクション』(2004)DVD収録 インタビュー映像より

やがて東西抗争が解消されるのを待たずして、2PACは狂乱に呑まれ、凶弾の犠牲となった。Zeebraは、この抗争をもっと冷静に、ヒップホップを愛するリスナーとして観察していた。Zeebraにとって東西の対立は、音楽性の違いを由来とする個性として聴こえていたようだ。

「ヒップホップ自体が東海岸から始まったわけで。ニューヨークで成熟していって、80年代半ばから西海岸にも及んだ。アイス-Tが現れて、N.W.A.、Eazy-Eに受け継がれていく。

もちろんニューヨークが先にあって、絶対数も多かったので、我々も東海岸のヒップホップを聴いて育った。でも、西海岸のヒップホップが出来た時も、”これはこれで良いじゃん!”みたいな。」

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©THE RIVER

血生臭さのあった東西の対立よりも、東西のエリアごとにスタイルが異なるというヒップホップのアート性をZeebraは好んだようだ。この発見は、Zeebraのアーティストとしてのアイデンティティ形成にも貢献した。

「我々も自分たちで音楽をやっていくようになると、“俺はニューヨークじゃなくて、東京だしな”ということに気付いていく。だから余計に西と東の違いはどうでも良いというか。むしろ、それはそれで楽しいものだと思うようになった。」

ちなみに日本のヒップホップ・シーンにおけるBeefといえば、キングギドラがDragon AshのKJをディスった2002年の『公開処刑』や、KダブシャインとDEV LARGEのBeefが思い出される。Zeebraは、若手ラッパーRAU DEFの攻撃(『KILLIN EM』)を受けてのアンサー曲『Die By The Beef』(2011)内”銃に生きる者は銃に死すように/Beef に生きる者はBeefに死す”のパンチラインも未だ鮮烈だが、Beefカルチャーの是非について尋ねられるとKダブシャインと「いいに決まってますよ」と口を揃えた。「俺もやられたこといっぱいあるし。やったことはあんまりないんだよ?」と加える。

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©THE RIVER

2PAC、来日秘話

『To Live & Die in L.A』など、西海岸出身の印象もある2PACだが、生まれはニューヨークで、カリフォルニアに移住するのは1988年のこと。1990年には当時既に人気を誇っていたグループ、デジタル・アンダーグラウンドに加入する。当時は「MCニューヨーク」というMCネームだったが、Zeebraは「改名して本当に良かったよね」と笑う。時同じくして、Kダブシャインも西海岸にゆかりを持っていた。

「たまたま高校の時のルームメイトが、デジタル・アンダーグラウンドのメンバーのDJ Fuzeと同級生で、紹介してもらっていて。だからデジタル・アンダーグラウンドには親近感を持ってた。」

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©THE RIVER

1990年、デジタル・アンダーグラウンドは来日を果たしていた。Kダブシャインがその当時の貴重な証言を語る。

「クラブチッタにデジタル・アンダーグラウンドとクイーン・ラティファが一緒に来てて、ライブの後に六本木のCIRCUSっていうクラブでDJ FuzeがDJをやることになって、デジタル・アンダーグラウンドもそこに来た。DJ Fuzeとは知り合いだったから、”おぉ”みたいな感じはあった。でもなんか、2PACは女のケツばっか追いかけてたよ。

Kダブシャインが「男のファンが”いつも聴いてます!”って涙目で来るよりも、谷間見せてるおねぇちゃんの方に絶対なびいちゃうから」と笑うと、Zeebraも「みんな基本そうですよ。(男性ファンは)そういうところでアーティストと仲良くなろうとしてもムダだから」と同調。Kダブシャインが「そういう話をちゃんと聞いてくれるのはライムスターだけ」とつぶやくと、会場からは笑いが起こった。思い出話はさらに続く。

Writer

THE RIVER編集部
THE RIVER編集部THE RIVER

THE RIVER編集部スタッフが選りすぐりの情報をお届けします。お問い合わせは info@theriver.jp まで。

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