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『ベイビー・ドライバー』に影響を与えた5本の映画 ― エドガー・ライト監督が語る

エドガー・ライト
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/9345815579/

映画『ベイビー・ドライバー』を手がけたエドガー・ライト監督は、そのあまりにもユニークな作家性によって他の誰もが生み出せないような映画を作り上げる。しかし彼の特徴は、かつてクエンティン・タランティーノがそう語られたように、膨大な映画への愛と知識がその作家性を支えていることだ。
長編映画デビュー作『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013)と、ライト監督の作品にはいつも過去の映画への敬意がこめられている。それらは時として、パロディやオマージュという形でスクリーンに顔を出してきた。

もちろん、最新作『ベイビー・ドライバー』もその例外ではない。20年以上も構想をあたためてきたという本作は、これまでライト監督が接した映画から影響を色濃く受けた作品だというのだ。CinemaBlendのインタビューで、監督は『ベイビー・ドライバー』に影響を与えた5本の映画を明らかにしている。

『ベイビー・ドライバー』の前後に観たい5本の名作

『ザ・ドライバー』(1978)

ウォルター・ヒル監督によるカーアクション・スリラーの名作で、精緻な脚本と、都市やカーチェイスを美しく撮りきったカメラの魅力で知られる一本。何を隠そう、『ベイビー・ドライバー』と同じく“逃がし屋ドライバー”が主人公の映画である。
主人公のザ・ドライバーや彼を追うザ・ディテクティブなど、人物の名前が極限まで削ぎ落とされているところや、カーチェイスにともなう緊張感の操り方が共通点なのだとか。

『レザボア・ドッグス』(1992)

ライト監督との共通点を多くもつ、前述したクエンティン・タランティーノ監督による長編映画デビュー作。言わずと知れた傑作であり、オープニング・シーンはバラエティでも頻繁にパロディにされたことで有名だ。
『ベイビー・ドライバー』と同じく“強盗映画”であるところの本作から、ライト監督は2つの影響を受けているという。ひとつは、犯罪組織をまるでビジネス集団のように描くこと。そしてもうひとつは、異なる特長をもった人々が寄せ集められたチームという発想なのだそうだ。

『ハートブルー』(1991)

今や『ハート・ロッカー』(2008)や『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)といった骨太の戦争アクションでその名を知られる、キャスリン・ビグロー監督がキャリアの初期に撮った作品。FBI捜査官と銀行強盗の友情を描いたストーリーとあって、やはり“強盗映画”のひとつに数えられる一本だ。
もっともライト監督は、本作『ハートブルー』と『ベイビー・ドライバー』がストーリー的に似ていないことは認めている。最も強く影響を受けたのはアクションシーンの演出で、CinemaBlendの分析によると両者は非常によく似ているという。あとは、強盗がハロウィン・マスクを身につけることも共通点か……。

『ヒート』(1995)

名匠マイケル・マン監督が自身のテレビ映画『メイド・イン・L.A.』(1989)をリメイクした作品で、なんといってもアル・パチーノ&ロバート・デ・ニーロという大スターの競演が見どころ。ライト監督は本作を、『レザボア・ドッグス』『ハートブルー』に次ぐ「90年代の強盗映画3本」の締めくくりに選んでいる。
具体的に『ベイビー・ドライバー』がどんな影響を受けたのかは不明だが、当時この映画の強盗シーンは観客の度肝を抜き、ライト監督も非常に感銘を受けたという。前述の2作よりも後に発表された作品ながら、監督は大きな敬意を払い、「強盗映画の先駆者」だと述べているほどだ。

『ブルース・ブラザース』(1980)

ジョン・ベルーシ&ダン・エイクロイドのコメディアン・コンビが主演し、ジョン・ランディス監督が手がけた映画史に残る一作。鮮やかなアクションシーンはもちろんのこと、『ベイビー・ドライバー』と共通する2つの要素は「音楽」「笑い」だ。展開がシリアスになっても決してユーモアを忘れない脚本・演出は、まさしくライト監督が影響を受けた部分だろう。ちなみに監督自身は、本作『ブルース・ブラザーズ』の魅力を「名曲たちとヤバいカーチェイス」だと語っている。


ライト監督がこれらの映画から受けた影響、その要素を惜しみなく注ぎ込んだ『ベイビー・ドライバー』は、一体どんな高みに達しているのか……。まだ観ていない人はすぐに劇場に駆けつけるもよし、これら5本の映画のどれかを観て軽く予習するもよし。もう観た人は復習がわりに過去の名作に触れるもよし、何度もあの世界を堪能しに行くもよし、だ。

映画『ベイビー・ドライバー』は2017年8月19日より全国の映画館にて公開中
ちなみにライト監督のことである、影響を受けた作品がこの5本だけということはないはずだ。「もしかしてこの映画も……」と思ったら、ぜひ編集部まで教えてほしい。

Source:?http://www.cinemablend.com/news/1674479/the-5-key-films-that-inspired-baby-driver-according-to-edgar-wright
Eyecatch Image: Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/9345815579/ )

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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