『バットマンvsスーパーマン』ネタバレ無しレビュー 近年のヒーロー映画の中でも斬新さアリ!

2016年3月25日(金)に一般公開となった映画『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(以下 バットマンvsスーパーマン)』の感想レビュー。この投稿では、ネタバレ内容は避けて書くこととする。

予備知識無しでは辛い

まず今作『バットマンvsスーパーマン』は、2013年の『マン・オブ・スティール』を鑑賞しておかないと、かなり分かりにくい部分がある。

初っぱなから、『マン・オブ・スティール』のクライマックスシーンの別視点描写から始まるし、特にスーパーマンを取り巻く人物、例えば地球での彼の育ての親マーサや、恋人ロイス・レイン、デイリープラネットの編集長ペリー・ホワイトらについては人物背景の一切の説明無く『続投』の形で登場する。スーパーマンことクラーク・ケント、またの名をカル=エルの出生や地球での活躍と苦悩、世論なども『マン・オブ・スティール』から引き継いでいるので、前作を鑑賞しておくのは必至だ。

一方でバットマンは、クリストファー・ノーラン製作の『ダークナイト』三部作(2005~2012)の世界観からは遮断し、新たなるバットマン像を描いている。今作では、『マン・オブ・スティール』で描かれたスーパーマンの世界にバットマンが招き入れられる構成となっているため、バットマンの出自やキャラクター性については深くは語られない。
もっとも、バットマンの身辺については欧米では『一般教養』レベルで定着しているため、今更わざわざ語る必要も無いのだ。彼がブルース・ウェインという大富豪で、幼い頃両親を目の前で殺害されたトラウマと怒りから、夜はコウモリのハイテクスーツに身を包んだ正体不明のビジランテ(自警団員)として活動しているのは、我々日本人にとっては桃太郎が川から流れてきた桃から生まれ、イヌ・キジ・サルを味方に鬼退治に挑む事くらい当たり前の知識となっている。
更に今作では、バットマンに扮するブルース・ウェインは夜の街を守る戦いを長年重ね続けてきた50代として登場するため、彼がヒーローになっていく過程、スーツやハイテクガジェット、バットモービルといった武器を調達していく様も描く必要なく、いきなりフル装備状態で登場する。もし、バットマンを『名前しか聞いたことがない』程度の状態であればちょっぴり置いてけぼりを食らうかもしれない。

ただのプロレス映画ではなく、DCユニバースの入り口となる一作

今作の日本における宣伝では、『世紀の対決』『史上最強のケンカ』といったキャッチコピーと共に、『超強くて超有名な2大ヒーローが対決する!なぜ闘うの?どっちが勝つの?』というエンターテイメント性に関心を煽らせるよう行われている。しかし鑑賞して感じたのは、今作は単なるプロレス的バトル映画でなく、広大なジャスティス・リーグへの入り口となる作品であるという事だ。

ジャスティス・リーグとは端的に言うならば、バットマンやスーパーマンらが所属する『DCコミックス』におけるアベンジャーズのようなもの。映画産業においてマーベルに先手を許してしまったDCコミックスは、前作『マン・オブ・スティール』、そして今作の『バットマンvsスーパーマン』に続き、悪役が集結する『スーサイド・スクワッド』を2016年8月に(日本公開は9月)、2017年には『ジャスティス・リーグ Part1』と今作にも登場する『ワンダー・ウーマン』スピンオフなどの作品ラインナップをズラリと2020年前まで布陣している。
今作は、スーパーマンの出自を丁寧に描いた前作『マン・オブ・スティール』に、バットマンや、メタヒューマン(DCコミックスの世界で、スーパーパワーを持つ者の事をメタヒューマンと呼ぶ)を招き入れ、物語とその概念を拡張するのが大きな役目だ。そのため、前述の通りDCコミックスにおける基礎知識や、『バットマンとスーパーマン以外にも色んな要素が登場する』という事前の心構えが無いと、ワケガワカラナイヨ状態になってしまうだろう。

また、ここからDCユニバースが広がるぞ!という、いちアメコミ映画ファンとしての楽しみ方のみならず、スーパーマンとバットマンの裏に隠された概念の対立、決闘と合流も興味深い見どころのひとつだ。
故郷クリプトン星よりも地球人の守護と救済を選び、「私はあなた達の敵ではない」と人類との共存を図るスーパーマンは実は東洋思想的で、スーパーマンを仕留めようとするバットマンは『克服』を重んじる西洋思想的。全く異なる分子はいかに戦い、どのような結末を迎えるのかも観てからのお楽しみにしておこう。

パニックシーンの被害者視点描写が斬新

筆者が今作で最も印象的に感じたシーンの一つが、冒頭のパニックシーンだ。予告編でも語られているのでネタバレにはならないと思うが、今作は前作『マン・オブ・スティール』クライマックスの激闘シーンから再スタートする。反重力装置を使って地球をまるごと『串刺し』のような形にし、地球改造を試みるクリプトン星の将軍ゾッドとそれを阻止すべく立ち向かうスーパーマンの激闘は、大都市でド派手に繰り広げられ、パンチをすればドラゴンボールよろしくビルを3、4棟貫通して吹っ飛び、目からビームを発射すれば、まるでケバブをナイフで切り落とすかのようにビル群が容易に崩れ落ちていく。こういった規格外の市街戦は最近のスーパーヒーロー映画では見慣れた光景になってしまったが、果たして地上で逃げ惑う人々や、巻き添えを喰らって大切な人を失ってしまった一般人の視点から観るとどうなのだろうか、という視点から描かれている。
面白いと思ったのは、映像の視線だ。大都市の空中にドデカイ宇宙船のようなものが浮かんでいて、何やら訳の分からないビームを撃っていたりする光景も見慣れた画になってしまったが、たいていは街全体と宇宙船を一挙に映す「引き」の画で見せられる事が多い。
一方で今作冒頭はあくまで巻き添えを食らう一般人側の目線で描かれるので、ビルの狭間から除く宇宙船、遠くに聞こえる爆心音、そして空の彼方で豆粒サイズで戦っているスーパーマンが、「目撃者」目線で映される

こういうシーンで車やトラックはよく演出的にふっとばされるが、それすらも実はかなり危険で怖い。最近のヒーロー映画の「あるある」の裏を描くようなシーンで面白かったし、一度『マン・オブ・スティール』で体感したクライシスを異なる視線から目撃できるのがとても興奮した。

街を守るために死闘を繰り広げたヒーローだったが、ちょっとぶつかったビルの下ではこんな悲劇と恐怖が広がっていた…という光景がよく描かれていると思った。

本作のパンフレットにも、ベン・アフレックの言葉でこう記されている:

彼(ザック・スナイダー監督)が言ったことのひとつに、この映画は、人の命に対して敬意を示すものだというのがあったよ。『マン・オブ・スティール』の最後で、スーパーマンがビルを破壊するところは、人の命への軽視が感じられた。スーパーヒーロー映画では、ビジュアル的な刺激のためにそういったシーンがよく盛り込まれるが、ビルが破壊されるとき、中には人がいるものだということを僕らは知っているよね。今作では、ブルース・ウェインの仲間もそこで亡くなったという設定になっている。

こちらは前作『マン・オブ・スティール』から

あらゆる事象には必ずウラとオモテが存在し、英雄的決戦にさえ別の見方がある。前作では主人公、正義、救世主として描かれたスーパーマンが、今作で「人類の脅威」「邪神」とされた瞬間、人助けのドラマチックな戦いも単なる破壊行為とみなされる。そういった多面性を感じられるシーンだった。

脅威としてのスーパーマンと、抑止力の是非

今作は『ヒーローとヒーローのぶつかり合い!』がコアテーマでなく、『人知を超えた力が存在してしまった場合、どう対処すべきか』を考察するものだ。人知を超えた力=スーパーマンは、災害やテロから人々を守る一方で、未曾有の大惨事を招いているのも事実。また、あくまでもエイリアンである彼がいつも地球の味方をしてくれる保証もない。世論ではスーパーマン追放の意識が高まり、今作のヴィラン、レックス・ルーサーは『抑止力』を求め不穏な動きを見せる。
スーパーマンは明らかに、現実世界の『核兵器』や『軍事武装』のメタファーとして描かれている。何がきっかけでいつ(行使権が)暴発するかもわからない。ひとたび猛威をふるえば、なすすべがない。この不安定な脅威を保持する事自体の是非と、抑止力としての更なる軍事武装は許されるものか。この議論は尽きるところを知らないが、長年コミックでニコニコさわやか頼れる超人ヒーローとして親しまれたスーパーマンがこのような『未知なる脅威』としてアンタッチャブルに描かれるのは新鮮ではないか。「人は、理解できないものを恐れる」というスーパーマンの裏テーマが、痛烈に刺さる。

IMAXで観たい、迫力の映像

そろそろスーパーヒーロー映画で描かれる映像も飽和状態だ。前述したように、ビルをガッシャンガッシャン破壊しながらの大規模な市街戦は今や「定番」だし、大量の地球外勢力が攻めてくるのも、巨大なモンスターがキングコングよろしく暴れまわるのも、もはや全てに既視感を覚える。
それでも今作のクライマックスのバトルは迫力を感じざるを得なかった。どんな意外性をもたらしてくれるのかと期待していてが、もう正面突破で大迫力だ。あまりにも大迫力すぎてクレイジーさも感じてしまうほどに。
あのマッドネスは、是非IMAXの大画面、大音響でご体感いただきたい。ちなみに今作の一部映像はIMAXデジタルシアターに最適化されたカメラで撮影されており、通常のスクリーンサイズでは画面の上下一部が見切れてしまうようだ。

バットマンvsスーパーマン、IMAX以外で観ると映像の一部がカットされる模様

おわりに

これまでの事前レビュー情報などによると、大絶賛の声が多く期待値の高い作品だったが、個人的には期待通りの作品だった。が、「期待を上回る」という程ではなかったように思う。

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スーパーマンの『脅威』としての描写と、本人の苦悩をもう少し見たかった気持ちがある。それから、やはりスーパーマンの桁外れのパワーを前に、ガジェット駆使で闘うハイテク戦士バットマンの強さ、カッコよさが少し霞んでしまった。
ヒーローの持つスーパーパワーの脅威の是非を問い、賛否両論の中で戦士たちが対決する…来月公開のシビルウォーとよく似た設定も、アメコミにあまり馴染みのない観客が混乱しないかちょっと不安だ。

最後になるが、今作で一番良かったのは狂気の実業家レックス・ルーサーを演じたジェシー・アイゼンバーグだ。彼がジョーカーを演じたらヒース・レジャーと並ぶ怪人になっていたかもしれない。今後の作品でジャレット・レト演じるジョーカーとレックス・ルーサーが共演するとしたら、楽しみだ。

BATMAN v SUPERMAN : DAWN OF JUSTICE

バットマン vs スーパーマン : ジャスティスの誕生

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THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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Comments

  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年3月25日 at 9:45 PM

    編集長の『#バットマンvsスーパーマン 』感想レビュー 近年のヒーロー映画の中でも斬新さアリ! https://t.co/jRPIPh6NCN #最強Sな男が地上波降臨中

    Reply
  • ワラビー (@kobo97) 2016年3月25日 at 11:31 PM

    『バットマンvsスーパーマン』ネタバレ無しレビュー 近年のヒーロー映画の中でも斬新さアリ! https://t.co/ieDMomZ2Qo

    Reply
  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年3月26日 at 10:16 AM

    『#バットマンvsスーパーマン 』ネタバレ無しレビュー 近年のヒーロー映画の中でも斬新さアリ! https://t.co/jRPIPh6NCN

    Reply
  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年3月26日 at 10:20 PM

    #バットマンvsスーパーマン ネタバレ無しレビュー。まず今作は、前作の『マン・オブ・スティール』を観ていないとけっこう辛い。
    https://t.co/jRPIPh6NCN

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  • @hiddengolden 2016年3月27日 at 12:31 AM

    @officeRBD このサイトけっこうタメになります
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  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年3月28日 at 10:19 PM

    『#バットマンvsスーパーマン 』ネタバレ無しレビュー あなたはどう思った?
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