【解説】実写版『美女と野獣』は吹替声優も素晴らしい!字幕版、吹替版で2度観るべき理由

1991年に公開されたディズニー長編アニメーション映画『美女と野獣』。エマ・ワトソン主演で実現した実写化が2017年4月21日(金)遂に日本でも公開となったので、字幕版と吹替版両方をチェックしてきた。

完璧な実写化

素晴らしい再現度に加えて、画はさらにゴージャスに。加えて、ベルをはじめ数人のキャラクターに設定が加えられ奥行きが増した。また、ベルと野獣が意気投合するポイントとして、”優し人柄”+“読書による教養”という部分を強調したことで、ベルと野獣がより知的で魅力的な人物に描かれている。『真夏の夜の夢』の一節を野獣が諳んじる~図書室~散歩のシークエンスなど、たまらなく良かった。

ミュージカルシーンも素晴らしい。特に、”Gaston”と”Be Our Guest”のミュージカルシーンは白眉。前者は大勢キャストによるアナログなシーンとして、後者はCGを駆使したファンタジーシーンとして、出色の出来。実写版のために書き下ろされた新曲”Evermore”(ひそかな夢)もディズニー映画史に残るであろう名曲に仕上がっている。

実写版と吹替え版キャラクター別の感想

ところで、吹替版のメインキャストは、ミュージカル界で活躍している役者たち。ミュージカル化もされている『美女と野獣』なので、ミュージカル色が強い吹替版キャストに期待している人も多いだろう。字幕版と吹替版、どちらで観るか迷っている方に、私が各キャラクターに感じたことを簡単にレポートしたい。

ベル役 エマ・ワトソン (吹替:昆夏美)

実写版『美女と野獣』の主役、ベル。町一番の美人だが、夢想家で変わり者だと思われている。ベル役をエマ・ワトソンが演じると発表されたときは大いに話題となったが、期待を裏切らない素晴らしさだった。

まず、”町一番の美女”という設定に圧倒的な説得力を与えるそのルックス。文句なしに美しいし、知的だ。そして、歌声も良い。ボーイソプラノのような声質で、やや中性的というか、まだ恋を知らないという雰囲気を纏っている。歌唱力も問題なし。テンポが遅くなったときに声量のなさをほんの少し感じさせる程度で、演技力はいわずもがな。

ベルの吹替を担当しているのは、ミュージカル女優の昆夏美。『ミス・サイゴン』や『レ・ミゼラブル』などに出演している、ミュージカル界では主役級の若手女優だ。昆夏美の歌声は、エマ・ワトソンよりも少しだけ少女っぽさが増すが、歌・話声ともにほぼ印象は変わらず。

野獣役 ダン・スティーブンス (吹替:山崎育三郎)

個人的に『ナイト・ミュージアム』の印象が強かったダン・スティーブンスだが、野獣役ということで今回はほぼ毛むくじゃら。瞳の青さが印象的だ。今回の実写化にあたって書き下ろされた”Evermore(ひそかな夢)では、見事な歌唱力を披露している。高音が綺麗に響く声質だが、甘さはない(ただし、野獣姿のときは終始【野獣エフェクト】がかかっているので、全体的に低め・渋めに聞える)。アニメ版『美女と野獣』では、野獣が王子の姿になるシーンで”粗野な風貌に優しい瞳の野獣が良かったのに、こんなルックスに変わっちゃってガッカリ!”と思った女性も多かったと思うが、実写版では心配ご無用。元の姿に戻っても素敵だ。

吹替版で野獣を演じるのは、ミュージカル界の貴公子・山崎育三郎。最近ではドラマやバラエティでの活躍も目覚ましいが、ミュージカル界では文句なしにスターのひとり。主演級二枚目役の常連だ。山﨑育三郎の声質の特徴は、なんといってもその甘さ。というわけで、ダン・スティーブンスの声とはかなり異なる。とはいえ、こちらも【野獣エフェクト】がかかっているし、演技力があるのでそこまで違和感はない。ただ、”Evermore(ひそかな夢)をダン・スティーブンスよりも抑揚・情感たっぷりに歌いあげているので、この曲の聞こえ方は違った。字幕版は諦念と覚悟を、吹替版は悲しみと未練が強調されている印象。どちらも良い。

ガストン役 ルーク・エヴァンズ (吹替:吉原光夫)

『ハイ・ライズ』などに出演しているルーク・エヴァンスはミュージカル経験豊富。ガストンとル・フウが中心となって歌う”Gaston“は、前述したように実写版『美女と野獣』の中でも特に素晴らしいミュージカルシーンのひとつだ。そしてなによりも、出てきただけで”ガストンだ!”と思わせる強烈なインパクトがある、マッチョとしか表現しようがない肉体と言動。擁護の余地なく醜悪な悪役でありながら、どこか憎めないアニメ版『美女と野獣』のガストンというキャラクターを、完璧に体現している。綺麗に澄んだ歌声の持ち主で、低音部から高音部まで自在に歌いこなす。

吹替版ガストンは、吉原光夫。劇団四季出身の超実力派ミュージカル俳優で、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦に似た渋いイケメン。身長は186㎝もある。30代の若さで『レ・ミゼラブル』のジャン・バル・ジャンに抜擢されるなど、ミュージカル界ではなくてはならない存在。実は劇団四季時代に『美女と野獣』でガストン役を演じており、当たり役として有名だった。ルーク・エヴァンズよりも太く男らしい声質なので、吹替版は実写版よりもガストン役がさらにマッチョで悪い印象に。吹替版ガストンの声は、恐らくアニメファンのイメージ通りなのではないだろうか。

ル・フウ役 ジョシュ・ギャッド (吹替:藤井隆)

今回の『美女と野獣』において、ガストンの太鼓持ちであるル・フウの果たす役割は大きい。監督が”ゲイ・キャラクター”と言及したことでも話題になったが、コミック・リリーフでありながら、愛・友情・罪悪感といったものの中で葛藤し、ガストンの悪意と、ガストンに扇動される大衆の愚かさを際立たせる重要なポジションを担っている。アナ雪でオラフを演じたジョシュ・ギャッドは芝居・歌・表情・視線のすべてを駆使して見事にフ・フウを演じ切った。

吹替版でル・フウを演じる藤井隆も大健闘。お笑い芸人でありながら、最近ではミュージカル役者としても確固たる地位を築いている藤井隆。さすがの表現力で、ル・フウというキャラクターに対する深い理解を感じさせる。

城の家臣たち 

  • ルミエール役 ユアン・マクレガー (吹替:成河)
  • コグスワース役 イアン・マッケラン (吹替:小倉久寛)
  • ミセス・ポット役 エマ・トンプソン (吹替:岩崎宏美)
  • プリュメット役 ググ・バサ=ロー (吹替:島田歌穂)
  • マダム・ド・ガルドローブ役 オードラ・マクドナルド (吹替:濱田めぐみ)
  • チップ役 ネイサン・マック (吹替:池田優斗)

まず、ルミエールを演じるユアン・マクレガーと吹替の成河のスキルが異常に高い。ルミエールが主に歌う”Be Our Guest”は、アニメ版を完全に超える出来栄えになっているのだが、とにかくルミエールの歌唱部分が難しく、目まぐるしく変化する声の表情には圧倒されるばかり。ユアン・マクレガーも見事なのだが、吹替版の成河は神業レベルなのでぜひ聴いてほしい。成河は、舞台俳優若手実力No.1の呼び声高い人物。ミュージカル出身ではないが、最近はミュージカルでも大活躍。映画やドラマでも目立ってきている。今回の吹替版でも最も注目すべきは、成河だ。

他の家臣たちも素晴らしい。イアン・マッケラン演じるコグスワースと、エマ・トンプソン演じるミセス・ポットはさすがの安定感。ただ、会話の軽妙さは吹替版の方が上かもしれない。成河ルミエールと小倉久寛コグスワースの相性とテンポが良い。ミセス・ポット吹替の岩崎宏美は、エマ・ワトソンをより柔らかくした感じ。

歌姫マダム・ド・ガルドローブを演じるオードラ・マクドナルドの歌唱は完璧。非の打ち所がない。吹替の濱田めぐみは元劇団四季の看板女優で、名実ともにミュージカル界で最も歌唱力のある女優。もちろん、マダム・ド・ガルドローブの曲も見事に歌いこなしている。

プリュメットは字幕・吹替ともやや印象が弱い。敢えて言えば、吹替の方がさらにセクシー。ミュージカル女優として伝説的な存在である島田歌穂の歌声をもっと聴きたかった。チップは、字幕・吹替とも可愛い。

モーリス役 ケヴィン・クライン (吹替:村井國夫)

実写版『美女と野獣』ではベルの生い立ちが掘り下げられているので、アニメ版よりも父であるモーリスの存在感がアップ。実力派俳優ケヴィン・クラインはさすがの安定感だが、吹替の村井國夫も達者。声質などは違うが、それぞれ包容力を感じさせる父親に仕上がっている。

字幕と吹替2度観るべし、最初に観るのは字幕を推奨!

以上、字幕版と吹替版を見比べて感じた印象の違いを述べてきたが、結論としてはどちらも良かった。ただ、強いて言えば字幕→吹替の順番がいいかもしれない。

  • エマ・ワトソンが歌も含めて完璧なベルなので、まずは彼女を堪能してほしい。
  • 吹替版の野獣はよりエモーショナルなので、受ける印象がやや異なる。
  • 吹替版はアニメ版と歌詞が違うので、アニメ版のファンだと気になるかも。
  • メイン歌唱は吹替版の方が上手い曲もあるのだが、アンサンブルの数が違うかも?(字幕版の方がコーラスに厚みがある気がする)

……とは言ったものの、できれば吹替版も観てほしい!というわけで、字幕版のあとに吹替版を観ることを強く推奨したい。『美女と野獣』は、2回観る価値、あります。

©Disney

About the author

ホラー以外はなんでも観る分析好きです。元イベントプロデューサー(ミュージカル・美術展など)。

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