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DC『ブラックアダム』海外レビューで賛否 ─ ドウェイン・ジョンソンの意欲作、海外メディア評価まとめ

ブラックアダム
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主演ドウェイン・ジョンソンが「DCユニバースのヒエラルキーを変える」と息巻く『ブラックアダム』は、批評面でやや厳しい立ち上がりを見せている。海外メディアでレビュー掲載が一斉解禁されると、米Rotten Tomatoesの批評家スコアは54%でのスタート。 関連作『シャザム!』(2019)が90%、シリーズ前作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)も90%であることをふまえると、少々つまずいた印象は否めない。

海外メディアに掲載されたレビューをいくつかナナメ読みしてみよう。米Vaireryは本作について、1953年の西部劇『シェーン』のステロイド強化版のようだと評しながら、物語の中央に子どもを配したことが、作品の知性を中学生レベルにまで落としていると指摘した。他に具体的な意見は主だって見られず、「本作の目的は、ブラックアダムを立派に登場させ、近いうちより相応しい敵と戦わせることだ」として締めた。

CNNはやや手厳しく、「ほぼ無限のパワーを持つ主人公が登場するため、脚本のしょぼさが目立つ」と書き始める。劇中に新登場するヒーローチーム「JSA」については、「マーベルの映画力再現」を急ぐあまり、いくつかの手順を省略し、紹介なく放り込むことで済まそうとしていると指摘。レビュー全文を通じて、あまり好意的な意見は見られない。

IndieWireも批判的で、「ハリウッドで最もリスクを避ける映画スターが、ハリウッドで最もリスクを避ける映画ジャンルと衝突した結果、予想通り悪い結果になった」と一刀両断。「JSA」の描写については、やはりアベンジャーズやX-MENの模倣のように感じられたと記している。この点については米The Hollywood Reporterでも、「あたかも別の映画で既に紹介済みであるかのように」登場していたことが指摘されている。

The Washinton Postはクセのある形で筆を進めた。「『ブラック・アダム』は、予想通りのアクションシーンと、退屈な戦闘シーン、そして今や必須となった主要人物の犠牲で進んでいく。しかし、自由の戦士は戦争の道理に従わなくてはならないのかという政治テーマが、この映画にちょっとしたスパイスを与えている。もっとも、スーパーヒーロー映画が飽和状態となっている中で、それが『ブラックアダム』を際立たせるのに十分かどうかと言われると、わからない」。

辛辣な意見が続いたが、英Empireは好意的で、「総じて面白い作品だ」と評価している。ブラックアダムはアンチヒーローであることから、「スーパーパワーが恐ろしいものとして描かれるところ」が最大の強みであり、ドウェイン・ジョンソンが演じる冷酷なスーパーヒーローは「他と違う、歓迎すべきもの」と称えた。

Deadlineは視覚効果やドウェイン・ジョンソンのインパクトについて言及。どうやら本作は派手な爆発シーンが魅力らしく、「こんなに多くのものが画面いっぱいに飛び交うのは、マイケル・ベイの全盛期以来見ていなかったかも」と表現。物語の進行は、DCキャラクターに深く通じていない人は置いてけぼりになるだろうとしつつ、「あとは文句なしに壮大なスケールの映像を眺めるだけ。特殊効果は常に存在感を放ち、映画全体を支配しているが、それでもミスター・ジョンソンは別格だ」「ザ・ロックは、登場シーン全てで常に中心である」と、強烈な“画力”に触れた。

同じく、英Guardianも「ジョンソンの巨体、惑星サイズの頭、冗舌なユーモアの才能全てが、彼を偉大なスーパーヒーローに仕立て上げている」とし、本作の見応えをドウェイン・ジョンソンに見出している。またThe  Hollywood Reporterは、本作にはザック・スナイダー監督『300 <スリーハンドレッド>』(2007)のような、スローモーションと血が飛び交う劇画チックな映像があることや、DC神話のマッチョな側面、ザック・スナイダー作品との結びつきもあると伝えている。

Colliderでは、舞台となるカーンダック世界の紹介部分が情報過多でマクガフィン的であるとし、ヴィランの描写はアンチヒーローである主人公アダムとのバランスを取るため、「コミカルなヴィラン」として「ありきたり」だと指摘されている。一方で好意的な見方も混えられており、ブラックアダムは異常な存在でありながらも、過去10年間観てきたDC世界にきちんとフィットしていると評価。「DCエクステンデット・ユニバース(DCEU)のパズルのピース全てが合わさるわけではない」「DCEUの全面的な軌道修正というわけではない」としながら、将来にむけた新キャラクターの美味しいところをうまく示していると称えている。

ジェームズ・ボンド俳優としておなじみの名優ピアース・ブロスナンが「JSA」のヒーロー、ドクター・フェイトを演じる点も、本作のお楽しみになりそうだ。Colliderは「元ボンド俳優がCGIスーパーヒーローのスーツを着ているのはちょっと滑稽に見えるが、ブロスナンは登場シーン全てを、そのカリスマ性で喰っている」、Varietyは「ピアース・ブロスナンのドクター・フェイトは、二流のドクター・ストレンジっぽさもありつつ、傑出している」「少なくとも視覚効果チームに楽しいトリックを与えている」と着目した。

『ブラックアダム』は、5000年の眠りから覚めた規格外のヒーロー、ブラックアダムが大暴れする中、危険視するヒーロー軍団“JSA”が立ちはだかる……という物語。主演ドウェイン・ジョンソンが長年映画化を望み、自らワーナー幹部陣に掛け合って実現した待望作だ。原作コミックではシャザムのヴィランで、もともと『シャザム!』(2019)に登場する計画があったが、規格外のパワーがハミ出して単独映画になった。

ドウェインは「DCユニバースを変えてやる」と強気を見せるが、その結果は米一般公開(10月21日)以降に明らかになるだろう。日本では2022年12月2日より公開だ。

Source:Rotten Tomatoes,Vairery,CNN,IndieWire,The Washinton Post,Empire,Deadline,Guardian,Collider,The Hollywood Reporter

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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