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『ブレードランナー 2049』もうひとつの原案とは ― 初期ストーリー執筆秘話&変更された結末

ブレードランナー 2049
(C) 2017 Alcon Entertainment, LLC., Columbia Pictures Industries, Inc. and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

映画『ブレードランナー 2049』の脚本はいささか特殊なプロセスを経て書かれた。
フィリップ・K・ディックによる小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』をキャラクターの原案として、前作『ブレードランナー』(1982)の脚本を手がけたハンプトン・ファンチャー氏が草稿を執筆。そこに『LOGAN/ローガン』(2017)やドラマ『アメリカン・ゴッズ』(2017)のマイケル・グリーン氏が加わって長編映画の脚本に仕上げていったのである。

すなわち本作には、完成した物語以外にふたつの原案があるというわけだ。ひとつはディックによる小説、もうひとつはファンチャーによる草稿である。では、その初期のアイデアはどのように構想されたのか、映画のエンディングはいかにしてできあがったのか……。米メディアの取材で、ファンチャー氏とグリーン氏の二人がじっくりと語っている。

注意

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この記事には、映画『ブレードランナー 2049』のネタバレが含まれています。必ず本編の鑑賞後にお読みください。

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前作脚本家の紡いだ、Kの短い物語

LATimesの取材によれば、『ブレードランナー』の続編を製作すると知った時、かつて脚本を執筆したファンチャー氏も「すごく楽しみで、すごく緊張した」という。なにせ最初にオファーがあった当時、彼には「外には出せない」ようなアイデアが1つあっただけだったというのだ。

急遽3つのアイデアを用意したというファンチャー氏は、製作総指揮を務めたリドリー・スコットと面会する前に、続編のため『ブレードランナー』にまつわる短い物語を執筆している。そこで着想されていたアイデアの中に、すでに主人公Kの存在はあったのだ。

ファンチャー: 新しいブレードランナーについての短い物語を書きました。彼にカード(Kard)、Kという名前を付けたんです。つまり何かを調査しているであろう人物は存在していて、それが(続編に)直接つながったのかもしれませんね。デジタルの女性との恋愛もありました。要素や特色は確かにあったんです。

(Kがレプリカントであることは)世界を反映するものだと思っていました。自動化が自動化を呼んでいるんです。私のイメージでは、Kという男はガイドブックでした。ルールに従う、ある意味では機械そのものなんです。ただし、こんなイメージをしていました。ひとつのガイドブックが、経験や試練、愛を通じて詩へと変わる。デジタルの女性も同じです。

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その物語を書き終えたファンチャー氏は、スコットとの面会を経て、やがて“誕生”というアイデアにたどり着く。そうして執筆された脚本の草稿は、二人目の脚本家であるマイケル・グリーンに手渡された。

ファンチャー: 私の仕事はそこで終わりです。あとはマイケルが(物語を)さらに長く、より豊かにしてくれました。

脚本作業を引き継いだグリーン氏は、草稿を読んだ印象を「一行目から、時間をかけてやりたい作風と世界が広がっていた」と振り返る。「新しいブレードランナー、デジタルの恋人、子供の可能性。ハンプトンのアイデアはさらなる可能性を一瞬で見せてくれましたし、興味深いテーマを示してくれたんです。」

デッカードに用意された「もうひとつの結末」

Colliderの取材で、ファンチャー氏の草稿に手を加えていく作業についてグリーン氏はこう語っている。

グリーン: 自分の仕事を終えたとき、ハンプトンさんによる部分がたくさん残っていること、時折違った展開が入っていることがわかりました。(映画の)1分目からエンディングまでです。

しかし、完成した脚本の結末はファンチャー氏による草稿とは異なるものだったという。彼は「私のバージョンにはなかったもの。私のものとはまったくの別物です」と話しているのだ。グリーン氏は最初の時点で結末を変更し、そこからは一度も変えなかったという。

グリーン: (結末については)時々せりふを足したり引いたりしただけだと思います。最後の瞬間はそのままです。あの瞬間のために物語を組み上げたんですから。

ブレードランナー 2049
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むしろグリーン氏がドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と話し合いを重ねたのは、物語の結末をどこまでセリフにするかということだった。

グリーン: (結末に)会話の場面がもうひとつあったかもしれません。ドゥニと話し合ったのを覚えていますよ。僕はなるべく言葉にしないほうが良いと思っていて、彼もそう感じていましたね。ただ扱いの難しいセリフがいくつかあったので、じっくり話し合ったところ、彼はそのセリフに意義があるかもしれないと思っていたんです。
でも映画がうまくいけば――僕はドゥニならできると常に感じていましたが――そのシーンは純粋にエモーショナルで純粋に自由な場面になる、何を言ってもそれは純粋な音楽になると思っていたんですよ。」

ではグリーン氏によって変更された、ファンチャー氏による草稿の結末とはどんなものだったのか? LATimesにて、彼はこう明かしている。

ファンチャー: 私の脚本では、最後にデッカードは死ぬんです。でも生かすことになりましたね。
1986年くらいにリドリー(・スコット)と『ブレードランナー』の続編について初めて考えたんですが、その時にデッカードのことや彼の新しい仕事を思いつきました。私の空想の中では恐ろしいことが起こってたんです。でもデッカードは生きてますから、そのアイデアは頭の中に逆戻りですね。どういう内容なのかは言いませんよ。

映画『ブレードランナー 2049』は2017年10月27日より全国の映画館にて公開中

Sources: http://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-blade-runner-screenwriters-20171009-htmlstory.html
http://collider.com/blade-runner-2049-alternate-ending/
(C) 2017 Alcon Entertainment, LLC., Columbia Pictures Industries, Inc. and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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