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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ホバーボード実現はここまで来た

レクサスのホバーボード

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989)といえば、劇中の未来の2015年に登場した宙に浮くスケボー、“ホバーボード”に胸踊らせた方も多いだろう。地面に放り投げても浮き上がり、脚で宙を蹴って軽やかに前進する。クールで未来的で、何と言っても楽しそう。

きっと未来になれば、マーティみたいにホバーボードで街をすいすいと走れるんだ……そんな夢を見た当時の子供たちもすっかり大人になって、時代は2015年を遠に追い抜いてしまった。しかし、残念ながら今のところ実用的なホバーボードは現れていない。

ホバーボードの実現は本当に不可能なのだろうか?これまでに登場した話題やプロトタイプを振り返りながら、ホバーボードの「現在地」を確かめてみよう。

飛べないけれど、ホバーボードをDIY再現してみよう

空飛ぶテクノロジーは再現できなくても、劇中そっくりのホバーボードをDIYで作ることは可能だ。コスプレアイテムなど、ポップカルチャーのアイテムをDIYで再現するYouTubeチャンネル「AWE me」が2015年に投稿した動画では、ホバーボードのDIY製作工程が詳しく説明されている。

まずはホバーボードのデザインをプリントしてカット。合板に型をとって切り出し、サンドペーパーや電動サンダーで切断面をなめらかに。角度がついた後ろ部分はステイプラーで固定して、ペーストで繋いでテープで補強。ピンクのスプレーで着色したら、デザインプリントを貼り付けていく。裏面のディスク部分は、100円ショップで売っていそうなプラスチック皿で再現、ほかパーツ部分はウレタンフォームをカットして貼り付ける。表面のグリーンのディスク部分も再現して完成だ。かかった材料費は全部で33ドルとのこと。

これはマーティのコスプレを楽しみたい時には大いに役立ちそうだが、残念ながらホバーボードに乗って浮上するというSF的探究心を満たすことはできない。現在のテクノロジーをもってしても、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』2015年のホバーボードは、まだまだ実現できないものだろうか?

ドク役クリストファー・ロイドも登場した「HUVr」バイラル動画

実は現実世界の2015年頃にも、ホバーボード再現を夢見たいくつかの商品が話題になった。中でも世間を驚かせたのが、「HUVr」というベンチャー企業が公開したこちらの動画。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のデザインそっくりのホバーボードで、まさに劇中さながらの浮遊走行がテストされる様子が映されている。

映像の冒頭には「このデモンストレーションはまったく本物です」とのメッセージが表示され、なんとドク役のクリストファー・ロイドをはじめ、伝説的なスケートボーダーのトニー・ホークら「本物」の面々も登場。「HUVrは誰にでも楽しめます。それを証明すべく、友人を何人か招待しました。彼らにスケートボードの経験はほぼありません」として、有名ミュージシャンやアメフト選手、ラッパーや女優がHUVrで飛ぶ様子が映し出された。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように地面を蹴って推進、誰にでも乗りこなす事ができそうだし、トリックをきめることもできる。まさに夢見ていたホバーボードの実現だとして2014年当時は世界を沸かせたこの動画、実は後にフェイクであったことが明らかになる。

仕掛け人はウィル・フェレルやアダム・マッケイらコメディ俳優が設立した制作チームの「Funny or Die」。豪華セレブリティも登場したリアルな映像は様々なメディアで取り上げられ話題を呼んだが、「残念ながら嘘です」「本当に申し訳ございませんでした」発表される。

「Funny or Die」は、なぜかクリストファー・ロイドが「私も騙されました」と困惑する動画も公開。ロイドは動画内で「“騙されましたって、どういうことだクリスよ、撮影に立ち会ったはずだろう。ワイヤーやクレーン、特殊効果のスタッフたちを見ていたはずじゃないか”と思われるでしょう。私の信念が、脳からワイヤーを除去してしまい、見えていなかったのです。そういうことにしておきましょう」という、イマイチ腑に落ちない釈明をしている。

有望株HENDOのホバーボード

カリフォルニア州のスタートアップ企業が発表したHENDOは、先のHUVrとは違って本当に浮かぶスケートボードだ。これは4枚のディスク型ホバーエンジンによる磁場を利用して浮上する仕組みで、金属面上に限られるが約2.5cmほど浮かぶことができる。

いくつかのプロトタイプが発表されているが、2015年10月21日、まさに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が設定したその当日にお披露目された「HENDO 2.0」では、スケートボードの前後にホバーエンジンを2つずつ取り付けた設計。特設ステージ上で実際に浮遊してみせた。HUVrの動画にも登場していたトニー・ホークもテストに参加している。

今の所、この「2.0」に続く後継モデルは発表されていないが、HENDOのWebサイトでは最新型のコンセプトアートが掲載されている。これまでのモデルはどうしてもホバーエンジンが巨大で、マーティのホバーボードに比べるとやや大ぶりな印象だったが、現在開発中のものはずっとコンパクトなものを目指しているようだ。

Lexusもホバーボードを開発

2015年には、あのLexus(レクサス)もホバーボードを発表している。デザインは既にHENDO 2.0よりも小型化に精巧しており、細部にはLexusならではの優美さが宿ったモデルだ。LexusのWebサイトではこのホバーボードの製作レポートや解説が掲載されており、それによると「超伝導による空中浮遊に不可欠な要素」には、「① 超伝導体と呼ばれる金属かセラミックの塊」「② 塊を冷却して磁気を帯びさせる液化窒素」「③ 塊を空に浮かす永久磁石を埋め込んだレール」の3つがあるという。

映像ではホバーボードから蒸気の煙が吹き出しているが、これは磁気を帯びさせるための液化窒素によるものということだ。さらに、ホバーボードが浮遊できるのは永久磁石を埋め込んだレールの上に限られる、というわけである。なるほど、原理としてはリニアモーターカーのそれに近いということか。

Lexusのホバーボードは、同ブランドの広告キャンペーン「AMAZING IN MOTION」のために開発された。公開された映像はバルセロナのスケートパークで、このSF的なボードに試乗しているのはプロスケートボーダーのロス・マクグランだ。

このホバーボードは両手でらくらく持ち上げられるくらいには軽量のようで、地に接することなく、煙を吐き出しながら浮かんでいる。地上だけでなく、水上もすいすいと走る映像には、思わず目を疑ってしまう。熟練者のマクグランは、このホバーボードの乗り方を早速マスターしてしまい、ランプを滑らかに走ってみせ、「GS F」上をジャンプする技も披露した。

ちなみにここで取り上げたプロトタイプのほか、「Zapata Flyboard Air」というプロダクトもあるが、こちらは高度もずっと高く、どちらかと言うと『スパイダーマン』(2002)でグリーンゴブリンが乗っていたグライダーといった印象。これはこれでカッコいいし憧れもするのだが、ここでは詳しい紹介を省略させていただこう。

夢のホバーボードの開発は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』設定年の2015年をピークに、その後目立った話題は登場していない。HENDOのWebサイトやSNSの更新も、ここ数年は止まっているようだ。2019年には、Teslaのロゴが入った新しいホバーボードの映像がネットに登場したが、これもフェイクであることが分かっている。夢浮かぶホバーボードは、いったいどうすれば実現するのか?その答えは宙に浮いている。

Source:HUVr,Funny or Die,HENDO,Lexus

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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