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【インタビュー】『バンブルビー』は『トランスフォーマー』のリブートなの?『最後の騎士王』続編はどうなる? ─ プロデューサーに全てを聞いた

バンブルビー
(c) 2018, 2019 Paramount Pictures. Hasbro, Transformers and all related characters are trademarks of Hasbro. (c) 2019 Hasbro. All Rights Reserved.

『バンブルビー』が、2019年3月22日よりいよいよ日本公開となった。世界的大ヒットシリーズ『トランスフォーマー』第1作から時をさかのぼり、1987年を舞台とする本作は、これまで語られることのなかったバンブルビーの知られざる物語がついに明かされる。

これまでの『トランスフォーマー』シリーズをマイケル・ベイ監督と共に築き上げたのは、大物映画プロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ。過去に手がけた作品は数知れず、有名なタイトルとしては『マトリックス』(1999)『オーシャンズ11』(2001)『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)など数えきれないほど。最近では『MEG ザ・モンスター』(2018)の世界的ヒットでもその手腕を発揮している。

THE RIVERでは、『バンブルビー』のため来日したロレンツォ氏に一対一でじっくり話を聞いた。『トランスフォーマー』ファンの間で議論が続く「『バンブルビー』はリブート説」や、メインシリーズ前作『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)の続編の近況など、今聞くべき質問をぶつけている。ハリウッドの大物プロデューサーは、THE RIVERに何を語ったのか。

『バンブルビー』プロデューサー、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ
『バンブルビー』プロデューサー、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ氏。©THE RIVER

この記事は『バンブルビー』鑑賞前でもお楽しみ頂けますが、シリーズ前作『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)の結末に触れた上で、シリーズの今後について尋ねる箇所があります。

『バンブルビー』リブート説について

──本日はありがとうございます。よく晴れた日で良かったです。ちなみに前回の来日はいつでした?

確か『トランスフォーマー』の4作目。2014年ですね。日本には色々な作品のために何度も訪れています。僕の携わった映画はいつも日本の皆さんに気に入っていただいているので、毎回楽しみにしています。唯一不安だったのは『ラストサムライ』(2003)の時。日本が舞台の映画だから、皆さんに気に入ってもらえるかなって。

──『バンブルビー』は「『トランスフォーマー』映画最高傑作だ」と大絶賛ですが、僕も同意できます。

嬉しいですね!ありがとう。

──でも、ハッキリしておきたいことがあるんです。『バンブルビー』はリブートだとかリメイクだとか、色々な情報があるんですけど…。

一体どういうことかって?

──はい、どういうことですか(笑)。

良い質問です(笑)。実際のところはスピンオフです。1987年を舞台にした以上、シリーズ過去作以前のお話ですよね。つまり、リブートでもリメイクでもありません。始まる前の物語です。だから、1987年から『トランスフォーマー』第1作までの空白の時間をこれから埋めていくことも出来るというわけです。

──『バンブルビー』を”a new storytelling universe”と言い表しているそうですね。あなたにとってこれはどういう意味?

“自由”、ですね。映画をシリーズ展開する上で難しいことは、進めていくにつれて制約が増えていくことです。シリーズ初期の頃は、新しいことを始める自由がある。他の映画で設けられたルールに従わなくても良いですし。『バンブルビー』では、違うアプローチ、違う製作が可能になりました。

バンブルビー
(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. (C)2018 Hasbro. All Rights Reserved.

マイケル・ベイ名物「大爆発」のない『トランスフォーマー』

──『バンブルビー』では、ストップモーション・アニメの俊英トラヴィス・ナイト監督を起用しました。これは興味深いと思っていて、他のシネマティック・ユニバース、例えばマーベルやDCでは、実に様々な振り幅の監督を起用していますよね。今後の作品では、マイケル・ベイやトラヴィス・ナイトの他に新しいフィルムメーカーを起用していく考えはありますか?

『バンブルビー』の続編では、是非トラヴィス・ナイトにやって欲しいと思っています。一方で『トランスフォーマー』メインシリーズは、どうするかまだ分かりません。現在は脚本作業中です。『バンブルビー』では色々なことを学んだので、『トランスフォーマー』シリーズにも活かされると思います。もっとエモーショナルに、もっとキャラクター主体に、と。

──キャラクター主体とは、具体的にどういうことですか?

大爆発やら何やらが無くとも、観客はひとつのキャラクターに集中するための忍耐を受け入れてくれるということですね。『バンブルビー』では哀愁やぬくもりを感じられる映画にしたかったのですが、それには2人の間で育まれる関係性を観察し続けるという忍耐が求められると思いました。数分おきに大爆発、をやらずにね。こうした作風も気に入ってもらえるんだと学べたことが大きいです。『バンブルビー』『トランスフォーマー』両作の続編で活かされると思います。

バンブルビー
(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. (C)2018 Hasbro. All Rights Reserved.

──確かに『バンブルビー』は作風を大きく変えました。不安だったことはありましたか?

『トランスフォーマー』には沢山のキャラクターがいる中で、『バンブルビー』では3体だけ、オプティマスも入れれば4体の登場です。『最後の騎士王』では15体ほど登場させたので、そこが大きな違いでしたね。

これをどう思われるかが心配ではありました。でも、懸念していたような反応はありませんでした。本作で描かれるキャラクターを楽しんでもらえましたし、ディセプティコンの描き方も気に入って貰えたと思います。だから今後の作品では、キャラクター像をもう少し複雑にしても良いかなと。

──では、一番エキサイティングだったことは?

この映画は、チャーリーとバンブルビーの関係性をうまく描けないと、全体として失敗してしまう。でも現場で、2日目か3日目だったと思いますが、チャーリー役のヘイリーが、(バンブルビーは後からCGで描かれるため)何もない空白に向かって感情を表しているのを見て、これは上手くいくぞと思いました。この映画が成功したなら、それは”感情”が確かにそこにあるからだ、と確信したものです。

──確かに、ヘイリーは最高の演技を見せてくれましたね。

でしょう。トラヴィスのおかげでもあるんですよ。彼はアニメーションの監督だったので、アニメキャラクターというものを非常によく理解しているんです。だからこそヘイリーに、バンブルビーの頭がここにあって、目がここにあってこういうことを訴えている、という詳細を的確に指示できるんです。アニメ的なアプローチですね。これって実際には本当に難しいことなんですよ。彼女も非常に助かったと思います。

バンブルビー
(C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. (C)2018 Hasbro. All Rights Reserved.

作品ごとに複雑化したトランスフォーム

──オートボットたちのトランスフォーム(変形)アクションも最高でした。トランスフォーマーの変形オモチャで遊んでいた小さい頃を思い出しましたよ。

トラヴィスからの最初の要望は、パーツを減らしてみたいということでした。『トランスフォーマー』映画って、本数を重ねるごとにパーツが増えたんですよね。『最後の騎士王』なんて、1体あたり1,000くらいのパーツがありましたからね。あそこまでいくと(変形シーンに)集中できないと。シンプルにしてみると、パーツの動きもよく分かるし新鮮だと思いました。

──この作品を、80年代の『トランスフォーマー』を愛した”ジェネレーション1″世代のファンに捧げますか?

ある意味では、そうです。これまでも往年のファンからは、当時のアニメのデザインを取り入れて欲しいとの声が寄せられていたんですね。でもマイケル・ベイ監督版の世界観にはフィットしなかった。今作は新たなスタートとなったので、ジェネレーション1的な要素を取り入れることができました。

80年代リバイバルブームについて

──ちなみにロレンツォさんは『トランスフォーマー』映画の楽曲面にも携わっていますか?

はい。

──『トランスフォーマー』歴代サウンドトラックにも、いつもお世話になってます。リンキン・パーク、ザ・ユーズド、ディスダーブドにグー・グー・ドールズ…。今作は80年代が舞台ということで、ボン・ジョヴィなんかが流れますね。チャーリーがモーターへッドのTシャツを着ていたり。

それから、ザ・スミスもね。80年代の音楽には、皆それぞれの思い出があるものなんです。私はトラヴィス監督よりも年上なわけですが、彼が好きな80年代の音楽って、私が当時リアルタイムで聴いた時には「酷い歌だな」と思ったものですよ。これはチャチいとか、これは良いアーティストだとか、色々と議論したものです。皆が全然違う意見を持っているのが面白いですよね。それでどの曲を選ぼうかと、(選曲には)私も参加しました。

──最近のポップカルチャーは80年代のリバイバルが盛んですよね。このブームはどう見ていますか?

面白いと思います。というか、私は80年代がまだそんなに昔だと思ってない(笑)。特別な時代だったと思います。クリアーだったと言いますか、いいヤツ、悪いヤツが文化的にハッキリしていた。今は文化も変わってきていて、普遍的になったのかな。私はあまり好きじゃないんですけど。もっと多様性があると良いですよね。だって、(この東京のホテルから)下に降りて歩いたらスターバックスがあるでしょう。別にスターバックスが悪いわけではないですけど、せっかく日本に来たんだから日本のコーヒーが飲みたいなぁと思うわけですよ。

映画のユニバース化に傲慢はご法度

──ロレンツォさん、『トランスフォーマー』のような一大シリーズを動かすビジネスについて教えてください。何でも、“優れた映画シリーズとは生き物である”と考えられているとか。

その通りです。これからシリーズを作ってやるぞ、みたいに傲慢な考えをしていたら失敗しますよ。私がこれまで携わった映画シリーズは、いつも”1本の映画を作るんだ”という意識でした。その1本に集中して、上手くいったからこそ次がある。はじめから”3本作る”発想でやると厳しいですよ。良い映画1本作るのだって大変なんですから。

ここ数年でカルチャーは変化し、人々の好みも変わってきています。『トランスフォーマー』のようなシリーズではいつもビジュアル面や、派手なバトルを推してきました。テクノロジーも進化していくので、どんどんデカいこと、変わったことが出来るようになる。そうやって同じことを続けていると、ファンから”前作みたいなのを作って”と言われるようになります。でも、それをやると飽きられる。というのは、前作の要素も若干は求められる一方で、新しいことを取り入れるバランスが重要だからです。だから毎作ごとに、少しずつ変化を加えるようにしています。

──難しいですね。同じことを求められながらも変化が必要で、でも変えすぎるわけにもいかないんでしょう。

まさに!その通りですよ。これまでの長い道のりの中で、たくさんの実験を行ってきました。ある時は脚本で、あるアイデアを拡張して感触を試したり。ある時は製作の真っ只中で浮かんだ新たなアイデアを取り入れるために、途中から方向性をちょっと変えてみたり。

──そんなことがあるんですね…。

ありますよ。その様はまるで石油タンカー。ゆーっくり曲がっていくでしょう。小規模な映画ならすぐに曲がれるけど、大規模な映画は超ゆっくり曲がっていくんです。だから一度マイケル・ベイが決断したら、それに従う必要があります。

どうなるメインシリーズ、ユニクロンが好きじゃないって本当?

『トランスフォーマー/最後の騎士王』より。© 2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. © 2017 Hasbro. All Rights Reserved.

──さて、シリーズのファンとしてはメインシリーズの続きも気になります。前作『最後の騎士王』ではユニクロン(※)の登場を示唆したところで終わりました。続きはどうなるんですか?聞いたところによると、ロレンツォさんはユニクロンがお好きじゃないとか(笑)。

(大笑い)はい、そうなんです。

※ユニクロンは、『トランスフォーマー』におけるラスボス的存在。惑星から変形する巨大なトランスフォーマー。『最後の騎士王』では、地球そのものがユニクロンであることが明かされた。

──『最後の騎士王』の続編は、ユニクロンのストーリーにならざるを得ませんよね?

アハハ、ちゃんと理由をお話します(笑)。ユニクロンはデカすぎて恐怖が追いつかない。想像を超える大きさでしょう。一体何と戦っているんだと、どうやって戦えばいいんだということになる。デカけりゃ良いってもんじゃないんですよ。

──『最後の騎士王』の続編はいつになりますか?『バンブルビー』の続編も検討されているということですし、また新たなスピンオフの可能性もありますよね。『トランスフォーマー』の次回作はどれになるんでしょうか?

次作がどれになるかは私にも分かりません。脚本の上がり次第です。現在2作分の脚本が進行中で、うち1本はメインシリーズ続編の脚本。この脚本から始めよう、という感じでもないんですよ。今も脚本家達と会議を重ねてアイデア出しを行っている最中です。バンブルビーとオプティマス・プライムのバディ映画というアイデアも皆気に入っていますが、これから変わる可能性もありますからね。もしかしたら誰かがオプティマス・プライム単独映画のすごいアイデアを持ってきて、「良いね!やってみよう!」ってなるかも(笑)。予定は未定というところが、この仕事の面白いところでもあります。


なおロレンツォ氏との本インタビューでは、バンブルビーとオプティマス・プライムのバディ映画としてアイデアが検討されている『バンブルビー』続編についての詳細や、3DCGアニメ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』映画化企画の話題なども引き出している。それぞれ以下の記事にスピンアウトさせているので、合わせてお読みいただきたい。

ビーとオプティマスのバディ映画について
「ビーストウォーズ」映画化案について

映画『バンブルビー』は2019年3月22日(金)全国ロードショー。

『バンブルビー』公式サイト:https://bumblebeemovie.jp/

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。