波のように揺れ動く二人の「愛」の誓い 映画『白い帽子の女』レビュー

映画『白い帽子の女』評価・感想

今作よりクレジット表記をアンジェリーナ・ジョリー・ピットへと変えた彼女の監督第3作目。
2005年の「Mr.&Mrs.スミス」以来となるブラッド・ピットとの共演作である。

1970年代
小説家のローランド(ブラッド・ピット)と妻 ヴァネッサ(アンジェリーナ・ジョリー・ピット)は、休暇で南フランスの浜辺にあるリゾートを訪れる。
過去のある出来事をキッカケに心が通じ合わなくなった二人
ローランドは村のカフェで酒浸りになりながら執筆作業に打ち込み、ヴァネッサは一日の殆どをホテルで過ごしていた。
そんなある日、部屋の壁にある小さな穴を見つけたヴァネッサ。
穴の先の隣室には 新婚旅行で訪れた若い夫婦が宿泊しており、ヴァネッサは取り憑かれたかのように隣室の様子を覗き見するようになる。
苦しみの果てに現実を直視し、再び心を通わせ始める夫婦の再生の時を描いた作品だ。

構図としては至ってシンプルである。
夫婦の間に何かがあったことは明白。
それと対峙することから、核心に触れることから逃げ続けているのも一目瞭然。

ローランドはヴァネッサのサングラスの置き方が気に入らないが、そんなことすら言葉で伝えられない程に関係はギクシャクしている。

ヴァネッサが見つめる海 子どもの真っ直ぐな眼差し 小舟
そして、穴

はじめからすべてのピースは揃っていた。

極端な言い方をすると、どういった方向性の作品で どうストーリーが展開していくのかも分かってしまう。
大どんでん返しだとか、意表をつくような展開などとは無縁の作品である。

そう、今作の醍醐味は二人の心模様
その一点のみ。

扱う心 その想いには、繊細さ 脆さ 危うさが伴なっていた。

二人が交わす言葉の一つ一つがどれも重い
それらだけで充分に観応えがある
観入ってしまう。

本来であれば、愛を誓い合った者同士が左手の薬指にリングをする。
けれど、二人がしていたリングはまるで枷のよう
ホテルという名の監獄にいる囚人のようであった。

新婚夫婦が放つリングの輝きとは最早別物であった。

二人ともどうするべきなのか分かっていた
分かっていたが、どうすることもできずにいた。

現実でもそういったことがあると思う。

分かっていてもできないこと
進むべきなのに立ち止まってしまうこと
忘れるべきなのに忘れられないこと
ラクになりたいのに苦しみから脱せないこと

あなたにもぼくにも、いくらでもあることだと思う。

理屈では分かっている。
分かっちゃいるけどやりきれないこともある。

原題である「By the Sea」は、海辺の波を 寄せては返す波を 狭間で揺れ動く想いを指していたのかもしれない。

そんな素晴らしい原題があるにも関わらず、「白い帽子の女」って何なんだ。
冒頭は白い帽子なんてかぶっていないし、特別な意図があるとも思えない。
ナンセンスなガッカリ邦題だ。

無神経な男とメンヘラ女の話などでは決してない。

同じ傷を抱え、共に抜け出す方法を見出せずにいる夫婦の話
一人ではなく、二人で抜け出す道を模索していたからこそ苦悩し 衝突し 傷付け合っていた夫婦の話

それはつまり「愛」の話であった。

その経験はおろか、結婚すら未経験のぼくには感じられないモノがきっとたくさんあったのだと思う。

愛する人が 共に歩む人ができたその時に、あらためて観てみたいと思いました。

ぜひご夫婦で、愛する方と共にご覧になってください。

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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