Menu
(0)

Search

海外で「尖りすぎ」の無料ストリーミング・サービス始まる ― 発起人は『ネオン・デーモン』監督、配信されるのは「芸術文化」

http://www.bynwr.com/ スクリーンショット

Netflix、Hulu、Amazon。すでに群雄割拠のストリーミング・サービス界に衝撃の新参者が現れた。
2018年2月にスタートする新サービス「byNWR」では、長編映画をはじめ、音楽や映像作品、エッセイ、写真など多岐にわたるコンテンツをすべて無料で配信するという。

業界の常識を覆すスタイルで新規参入を果たす「byNWR」を仕掛けるのは、『ドライヴ』(2011)や『ネオン・デーモン』(2016)を手がけた映画監督、ニコラス・ウィンディング・レフン。サービス名の由来は“by Nicolas Winding Refn”だろう。そう聞けば、もはやこれが普通のストリーミング・サービスでないことはご想像いただけるかもしれない。そう、このサービスが取り揃えるコンテンツとそのテーマは明らかに尖りすぎているのだ……。

芸術文化を配信するストリーミング・サービス

まずは仮オープンしているbyNWRのウェブサイトを確認してみよう。そこには「芸術のための純粋なる高速道路(AN UNADULTERATED EXPRESSWAY FOR THE ARTS)」という文字が踊っており、早くもただものではない雰囲気を感じることができるはずだ。
このサービスの特色は、3ヶ月ごとに異なるテーマを打ち出してコンテンツを配信していくこと。各テーマにはゲスト・クリエイター(ゲスト・エディター)が参加し、テーマに沿ったオリジナル・コンテンツを製作するという。

記念すべき第1回目のテーマは「地域の背教者たち/南アメリカ発、エクスプロイテーション映画の至宝」(エクスプロイテーション映画とは、同時代の社会問題やポルノ的な題材を売りにして観客を集めていたジャンルの作品群のこと)。
配信される作品は、1965年のカルト映画『ネスト・オブ・ザ・カッコー・バーズ(原題:The Nest of the Cuckoo Birds)』、『シャンティ・トランプ(原題:Shanty Tramp)』(1967)、テキサスでポルノ寄りの作品を手がけたデール・ベリー監督についての長編だ。ゲスト・クリエイターには、エクスプロイテーション映画の第一人者だったラス・メイヤー監督の伝記を執筆したジミー・マクドノー氏が参加している。
ちなみにレフン監督は、『ネスト・オブ・ザ・カッコー・バーズ』を「ジョン・ウォーターズ監督のいないジョン・ウォーターズ作品のようなもの」と説明し、映像を復元する予算を「見たくもないコマーシャルを監督して」用意したという。と、尖りすぎ!

そして第2回のテーマは「アメリカ・インディペンデント映画のクラシックを復元・再発見する」
配信されるのは例に漏れず日本未公開作品ばかりで、初復元となる『ナイト・タイド(原題:Night Tide)』(1961)、『スプリング・ナイト、サマー・ナイト(原題:Spring Night, Summer Night)』(1967)、『イフ・フットメン・タイアー・ユー、ホワット・ウッド・ホーシズ・ドゥ?(原題:If Footmen Tire You, What Would Horses Do?)』(1971)、そして『バーニング・ヘル(原題:The Burning Hell)』(1974)という想像もつかないラインナップとなっている。なお、ゲスト・クリエイターにはイギリスの映画雑誌Little White Liesが参加する予定だ。

このサービスについて、レフン監督は「これからの映画についての現代的な考え方を作り出す」「すべてのエンターテインメントはいずれ無料になる」という指針を語っている。
それぞれのテーマやラインナップは、既存のストリーミング・サービスとはまるで異なる、いわば“NetflixやHuluが絶対に採用しない”方向性だ。新作映画やテレビ番組、オリジナル・コンテンツを数多く発信するのではなく、あくまでレフン監督が重要視する作品ばかりを取り上げるサービスになることだろう。単純なストリーミング・サービスとして捉えるのではなく、かつては美術館や博物館、図書館が主に担ってきたような仕事がオンラインで展開されるもの、あるいはレフン監督によるひとつの作品として考えるべきだろう

「byNWR」は2018年2月より開始される予定で、第3回・第4回のテーマは2017年秋のうちに発表される。
日本でサービスを楽しめるかどうかは不明だが、ウェブサイトではメールアドレスを登録することができるので、気になる人はぜひ登録をお薦めしたい。まず間違いなく、ほかのストリーミング・サービスでは絶対にできない体験が味わえるはずだ。

Sources: http://www.hollywoodreporter.com/news/nicolas-winding-refn-launch-bynwr-content-platform-1049053
https://www.screendaily.com/news/nicolas-winding-refn-eyes-2018-launch-for-digital-platform-bynwrcom/5123350.article
Eyecatch Image: http://www.bynwr.com/ スクリーンショット

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。