【インタビュー】『キャンディマン』主演俳優、その名を唱えることに恐怖はなかったのか? ─ キャンディマンは悪か英雄か

“その名を5回唱えると、死ぬ”
凶悪な殺人鬼による忌まわしき都市伝説を描いたカルトホラーシリーズ『キャンディマン』が、リブート版として復活した。『ゲット・アウト』(2017)『アス』(2019)のジョーダン・ピールが製作・脚本を務め、現代へと語り継いでいく。
舞台は、米国に現存する公営住宅地区「カブリーニ=グリーン」。その界隈では、鏡に向かって5回その名を唱えると、右手が鋭利なかぎ爪になった殺人鬼に体を切り裂かれるという怪談めいた都市伝説が語り継がれていた。老朽化した公営住宅が取り壊されてから10年が経ち、ビジュアルアーティストのアンソニーは、創作活動の一環として、“キャンディマン”の謎を探求していた。調査を進めていく中で、アンソニーは公営住宅の元住人だという老人から、その都市伝説の裏に隠された悲惨な物語を聞かされる。アンソニーは恐ろしい過去への扉を開いてしまったのだ……。
メインキャラクターのアンソニー役を演じるのは、『アクアマン』シリーズではブラックマンタ役を担当し、『アス』(2019)『シカゴ7裁判』(2020)をはじめとする映画や、ドラマ「ウォッチメン」(2019)などでも高い注目を浴びた俳優、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世。今後の作品としては、『マトリックス レザレクションズ』(2021年12月公開)など多数の注目作を控えている。そんな気鋭俳優が、THE RIVERの取材に応じてくれた。キャンディマンというキャラクターは俳優にとってはどんな存在なのか。悪か英雄か。それとも?

その名を唱えてはならない

──『キャンディマン』についてはオファーされる前からご存じでしたか?
1作目の記憶はありませんでしたが、もちろん存在は知っていました。 キャンディマンの都市伝説と共に育ちましたから。僕の家族では、キャンディマンのゲームをよくやっていたんです。キャンディマンの名前を鏡の前で唱えていました。5回まで唱えることは絶対にしませんでしたけど。
──劇中では、5回鏡の前で名を実際に唱えていましたが、それに対しては恐怖を感じなかったのですか?
いいえ、感じませんでした。自分自身に許可みたいなものを与えていましたから。自分が口にすることが台本に書かれていれば、問題はないみたいな。だから、カットがかかったら、それ以上はその言葉を言うことはありませんでした。そうして撮影中は自分の身の安全を確保していましたよ(笑)。
キャンディマンは英雄か悪か

──世界中で旋風を巻き起こした『キャンディマン』ですが、その背景は何だったと思いますか?
『キャンディマン』が人気を博したのには、いくつかの理由があります。ひとつは、黒人居住区に住むブギーマンのようなキャラクターだったからでしょう。僕たちと同じような境遇にいる人だと感じて、親近感が湧いたんです。もうひとつの理由は、その象徴的な姿。身体は蜂に包まれていて、右手は鉤爪、つまり恐ろしい存在だったわけです。
──オリジナル版では、現代にも色濃く残る黒人への人種差別が描かれていました。そんな映画が、ジョーダン・ピールの脚本により現代に蘇ることになったわけですが、主演依頼を受けたときの気持ちを教えてください。
電話で依頼を受けた時は興奮しました。今の時代にやるには、これまでとは何か違うことをしなければならないと思っていたので。そのまま同じ映画を作ることはできませんから。ただ、ジョーダン・ピールはホラーというジャンルに社会的側面を上手く取り入れてきた方なので、『キャンディマン』の物語に新たな捻りを加えることができるだろうと思ったんです。

──その続編となる本作でもまた、人種差別や都市の高級化が色濃く反映されている作品だと思いますが、前作からアップデートされているところはありますでしょうか?
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