「原作だけでなく、ゲーム文化にも敬意を」Netflixアニメ『悪魔城ドラキュラ』製作者、日本のアニメ・ゲームにドップリ…インタビューで想い語る

「アニメ『悪魔城ドラキュラ』は、日本の『吸血鬼ハンター”D”』と『獣兵衛忍風帖』(1993)などに多大な影響を受けた作品です。」
世界中で人気を誇る日本の名作ゴシックホラー・アクションゲーム『悪魔城ドラキュラ』のアニメ版『悪魔城ドラキュラ ─キャッスルヴァニア─』が2017年7月7日よりNetflixで全世界独占配信中だ。
製作は『アドベンチャー・タイム』シリーズなどで知られるフレドレター・スタジオとワウ・アンリミテッド・メディアが手がけ、「Ultimate Fantastic Four」や「Iron Man」などのマーベル・コミック作品で知られるベストセラー作家、ワーレン・エリスが脚本を担当。エグゼクティブ・プロデューサーには、『ジャッジ・ドレッド』(2013)製作総指揮などで知られるアディ・シャンカル氏。
『悪魔城ドラキュラ』は、一見してとても海外アニメとは感じられないほどの作風に仕上がっている。アディ氏は、「今作の製作チームに日本人の方はいない」と教えてくれたが、では今作が「日本的」な印象を与える所以とは。そこには、アディ氏の幼少期から続く、日本のアニメとの長く深い付き合いがあった。
鋲付きのライダースジャケットにグローブをはめ、ロック・アーティスト風の出で立ちで現れたアディ氏は、物静かな印象ながらも一語一語を選びながらTHE RIVERの質問に答えてくれた。

原作ゲームは全てやりこみ済み
──『悪魔城ドラキュラ ─キャッスルヴァニア─』はどんな作品ですか?
コナミ(現・コナミデジタルエンタテインメント)のゲーム『悪魔城ドラキュラ』シリーズをベースにしたアニメーションです。中心となっているのは、『悪魔城伝説(1989、欧米:Castlevania III: Dracula’s Curse)』。日本版ではラルフ・ベルモンドという名の設定ですが、欧米ではトレバー・ベルモントというキャラクターのストーリー。アニメではほぼ90%原作ゲームに基き、ドラキュラと人間との戦いを描いています。
──この作品は7月7日よりNetflixで配信となっています。反応はいかがですか?
熱狂的に迎えられていますね。すべてポジティブな声ばかり頂いています。唯一のネガティブな意見といえば、「もっと観たいのに」ということだけ。
──『悪魔城ドラキュラ』シリーズは日本の伝説的なゲーム・シリーズですね。海外でも知名度が高いのですか?
僕は香港とシンガポール出身なんですが、どちらでも非常に有名でした。アメリカでも有名であることは後から知りましたね。『悪魔城ドラキュラ』の興味深いところは、様々なバージョンが様々な国で有名になっていることです。
──香港で有名なのはどのバージョンですか?
初代プレイステーションの『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(1997、欧米:Castlevania: Symphony of the Night)』です。シリーズは全てプレイしています。
──アディさんはどのバージョンがお気に入りですか?
やっぱり『月下の夜想曲』ですね。好きなキャラクターはアルカードと来須蒼真(欧米:Soma Cruz)です。
うちは両親が厳しくて、ある日スーパーファミコンを取り上げられてしまったんです。でも初代ファミコンは持っていたから、代わりにファミコンばかりプレイしていたんです。だから僕にとって初代プレイステーションは、ほとんどファミコンの次に手に入れたようなハードで、ドハマリしました。
日本のアニメから多大な影響
──アニメ『悪魔城ドラキュラ』は作画や色彩が美しくてとても気に入りました。
神話的世界を描くわけですから、映像には気を使いました。
──制作にあたって、日本のアニメを参考にすることはありましたか?
はい、ありました。『吸血鬼ハンター”D”』や『獣兵衛忍風帖』をね。
当初、頭の中に「2Dで手描きのアニメを作る」というヴィジョンがありました。
僕は香港で『吸血鬼ハンター”D”』や『北斗の拳』、『AKIRA』のアニメを観て育ったんですが、周りで理解してもらえることが一切なかった(笑)。だからみんなに『吸血鬼ハンター”D”』のイラストを見せたんです。みんな驚いていましたよ。絵は文字よりも語りますが、手描きの絵は更に多くを語りますから。
──『悪魔城ドラキュラ』も手描きの文化に習った?
はい。昔ながらのやり方でね。
──実際に観ていて、いい意味で90年代の日本のアニメのような美しさを感じました。
嬉しいですね。日本のアニメ作品に沢山影響を受けましたから、この作品では敬意を払いました。小さい頃香港で観ていたTV放送は広東語だったから内容は理解できなかったんですけど、その分ビジュアルの影響を沢山受けました。そのインスピレーションが活かされています。
──『吸血鬼ハンター”D”』の他にも観ていた日本のアニメは?
『宇宙海賊キャプテンハーロック』、カッコいいですよね。ハーロックっぽい服装に憧れます。
──ちなみに、初めて観た日本のアニメは覚えていますか?
(自身のドラえもん型iPhoneケースを差し出す)
──ドラえもん!
インドから香港に引っ越した時、学校から帰ってきてテレビを付けたら、ドラえもんも広東語でしか放送されていなくって。唯一英語で放送されていたのが『セサミ・ストリート』だけで、毎日泣いてました(笑)。
個人的に、僕はガンダムの大ファンなんです。ガンダムがこの辺だとしたら…(右手を高く上げ、一方の左手を低く下げながら)『トランスフォーマー』はこの辺だから(笑)。ストーリーが大好きなんです。特に『鉄血のオルフェンズ』が超クール。
ストーリーはまるでRPG
──『悪魔城ドラキュラ』はショッキングな暴力描写も見ものですね。ホラー映画は参考にされましたか?
ホラー映画は特に参考にしていません。
──トレバーらキャラクターにモデルはいるんですか?
トレバーはクラシックなアンチ・ヒーローとして描きました。もともと善人であるより、善の道を選ばなければならない人間、という方が面白いストーリーになると思ったからです。
──アドリアン・ツェペシュ(アルカード)がお気に入りです。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のトム・クルーズみたいでカッコいいですよね。
トム・クルーズ、その通り!『月下の夜想曲』でアドリアン・ツェペシュ(アルカード)はスターなんですよ。
お喋りで酒飲みなトレバーとは対象に、ツェペシュは内に秘めた男です。

──ストーリーは、ロールプレイングゲームを意識したかのようでした。エピソード1はエピローグのような作りになっていて、それから主人公が現れ、街で人と話して情報を集め、ダンジョンのような場所に入っていくという。
そうそう。パーティーを作ってね。僕が子供の頃、一緒にゲームをする友達がいなかったので、1人で出来るRPGが一番のゲームでした。『ファイナルファンタジー』や『ダーククラウド』、『ワイルドアームズ』『スターオーシャン』…。小さい頃に体験したことが、大人になって創るものに影響してきますね。
原作モノ映像化に大切なこと
──実写作品とアニメ作品を手がけるにあたっての違いは?
全然違うものだと思います。まず、アメリカではアニメは子供向けのものという風潮があり、アニメーターを探すのに苦労しました。
10~20年前に比べて、実写映画の制作がアニメ制作に似てきています。CG技術が発達しましたからね。ピクサーのアニメ映画も、マーベル映画も、制作プロセスはよく似ています。
──アディさんにとって、ゲームやコミックのような”原作モノ”を映像化する際に重要なこととは?
原作がどのようなものかによって異なると思います。ゲームもコミックも、作品ごとに大きな違いがありますから、「これをやればうまくいく」という共通の方法はありません。でも、制作者自身が原作のファンであるということは必要不可欠。これがなければ、95%は失敗するでしょう。
──アディさんも『悪魔城ドラキュラ』には丁寧に敬意を払う必要があった、と。
もちろんです。それから、作品だけでなく、ゲームのファンらがつくる文化そのものにも敬意を払わなければいけません。『悪魔城ドラキュラ』は日本発祥の偉大なゲームなので、特に気を使いました。
──このアニメは、『悪魔城ドラキュラ』原作ゲームで遊んでいた方はもちろん楽しめる内容となっていますが、他にもこんなゲームが好きなら楽しめるよ、というタイトルを教えてください。
『バイオハザード』のゲーム版のファンにはオススメです。映画版じゃなくてね。
──『デビル・メイ・クライ』は?
アイ・ラブ・ダンテ。
──(笑)他には?
(少し考えて)『鉄拳』かな。家族のドラマですからね。
シーズン2以降とアニメ版『アサシン・クリード』について
──ところで、アディは『悪魔城ドラキュラ』の次も、同じく人気ゲームを原作とした『アサシン・クリード』のアニメ化を手がけられるそうですね。
はい。とても興奮しています。『悪魔城ドラキュラ』はもっと小さい頃にプレイしていたタイトルでしたが、『アサシン・クリード』は最近のタイトルなので、大人になってからプレイしていました。
──『アサシン・クリード』はUbisoftによってTVドラマシリーズも計画されているそうですが、今回のアニメ版と関係があるのですか?
それについては何も言えません。もし言ったら首が飛ばされちゃう。
──現段階でアニメ版『アサシン・クリード』について他に教えて頂けることはありませんか?
…もう既に言いすぎました。
──シーズン2も楽しみなのですが、進捗をお聞かせください。
シーズン2は全8話構成で、新キャラクターも登場します。
──いつ頃リリースになるのですか?
それは言えません。でも、もうすぐかな…?
──シーズン2ではどんなことに期待できますか?
更なるモンスターも登場しますし、シーズン1に比べて格段にボリュームアップしますよ。
──シーズン1そのものがプロローグのような構成に感じられました。シーズン2で本当の物語が始まるのですね。
そうですね。シーズン1はシーズン2に向けての下準備なのです。
──ちょっと気が早いかもしれませんが、シーズン3は…?
もしシーズン3も観たいようでしたら、みんなNetflixに登録して、応援メッセージを送ってください(笑)。
『ガッチャマン』をやりたい
そういえば、『ガッチャマン』も大好きでした。向こうでは『Battle of Planets』というタイトルなんですよ。『ガッチャマン』の映画を作りたくて、タツノコプロにメールもしたんです。そしたら今は映画化出来ないと断られてしまって。じゃぁ出来るようになるまで毎月メールしますねって(笑)。
──もし『ガッチャマン』が自分で映画化できるとしたら、どんな作品にしたい?
オリジナル・シリーズは父と子を描く非常に深いストーリーだから、そのドラマをしっかり描きたいです。やはり家族やチームワークの物語が好きなんですよね。だから『ガッチャマン』は大好きだし、『スーパー戦隊』シリーズも大好きなんです。
──『悪魔城ドラキュラ』もチームの物語ですもんね。
そう!RPGみたいでしょう?パーティーを育てなくちゃいけないんです。3人のうち1人が弱い状態だと、たとえ残り2人が強くても負けちゃいます。
──そして彼らには異なる…
目的がある。
──それと能力も。
そうそう、それこそが人生における大切な教えなんですよね。チームが無ければ人は成り立たないんです。
──日本には熱心なアニメ・ファンが沢山いらっしゃいます。彼らに向けてメッセージを。
アイ・ラブ・ユー。僕もアニメの大ファンです。日本のアニメを観て育ちましたからね。『悪魔城ドラキュラ ─キャッスルヴァニア─』は、日本の皆さんにきっと気に入って頂けると思います。

Netflixアニメ『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』は、シーズン1がNetflixにて全世界独占配信中(約23分/全4話)。待望のシーズン2も全8話構成で2018年全世界配信予定。
(取材、撮影、文:Naoto Nakatani)