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【レビュー】映画『コロニア』虚構と事実の織り交ぜ方が見事!観ておくべき『人間の過ち』

映画『コロニア』評価・感想

1973年 独裁政権で荒れるチリ
フライトでチリを訪れたキャビンアテンダントのレナ(エマ・ワトソン)は、反体制運動に参加する恋人 ダニエル(ダニエル・ブリュール)と再会し 至福の時を過ごす。
そんな喜びも束の間、突如起きたクーデターに巻き込まれ ダニエルは秘密警察に連れ去られてしまう。
教皇と呼ばれるナチス残党 パウル・シェーファー(ミカエル・ニクヴィスト)が支配者として君臨する慈善団体施設とは名ばかりの拷問施設にダニエルがいることを突き止めたレナは、助けになってくれる者もおらず 彼を救うべく単身施設への潜入を試みる。
実在した拷問施設「コロニア・ディグニダ」の真実と闇を描いた作品だ。

実話ベースの作品となると、実際に起きた出来事故の重みが伴う。
そういった作品の場合、「楽しむ」だとかの観点からは遠ざかってしまいがちだ。

だが、今作においては その存在が創作であるレナとダニエルがいるおかげでエンターテイメント性が保たれていた。

コロニア・ディグニダ
それは絶対に抗えない事実
決して許してはならない事実

その重みと同時に、2人がいることによって
まるで恋愛映画のような
まるでスパイ映画のような
そんな要素をも併せ持った作品になっていた。

それらは決して事実を軽んじたり 歪めたりするモノではない。
むしろ、観客にコロニア・ディグニダの恐怖をリアルに 身近に感じさせてくれていたように思う。

冒頭、荒れるチリの街並みとは裏腹に レナとダニエルはラブラブである。

ほのぼのしてしまうようなラブシーンの数々に、人によっては自らの恋愛を重ねられるだろう。
人によっては「バカだなぁ」と微笑ましく2人を見守っていられたりもするだろう。

2人の姿に国や時代は関係ない。
あなたやぼくと同じ人間であった。
ありのままの恋人達の姿であった。

そんな身近に感じられる要素を初めに描き、見事に観客を引き込んでおいてから描くモノ

そう、非現実 恐怖の世界だ。

導入で丁寧に作品世界へと引き込まれた分、その世界がブチ壊されていく様もまたリアルに感じ取れてしまう。

そして、「男が女を助けに行く」のが定番の中「女が男を助けに行く」というストーリー展開にも引き込まれるモノがあった。

あんなに小さくて華奢なレナで大丈夫だろうか
彼女が酷い目に遭ったりしないだろうか
いっそ彼のことは諦めて国を出なよ レナ!
君が心配で心配でたまらないよ!
そんな風に思ってしまった。

彼女に対する不安・心配=どっぷり作品世界へと引き込まれている証拠である。

施設への潜入
施設内での極秘調査
ダニエルの救出

彼女に課せられた使命は、スパイ映画の主人公と何ら変わらない。

けれど、彼女には状況を覆すだけの武器や特殊アイテムもなければ 訓練された肉体すら持ち合わせていない。
危うくなった時に助太刀に現れる仲間もいやしない。

あまりにも脆弱な彼女だから
愛する者を助けたいがために行動を起こした彼女だから
観客は引き込まれる。

その無力さ
その想いの強さ

そこに親近感を、身近なモノを感じてしまう。

先程「彼のことは諦めて国を出ちゃいなよ」と書きましたが、彼女がそうしなかった理由が途中で分かった。

理由とは違うか
何故レナとダニエルが付き合うに至ったのかが理解できた。

逆の立場だったのなら、間違いなくダニエルも同じ行動を取っていた。

劇中の2人を見ていると、同じモノを胸に宿した人間なんだということが分かる。
そんな2人だから惹かれ合い、共にいるのだと納得ができる。

2人の絆が垣間見えた。

創作要素による魅力に引き込まれてばかりいると、自動アラームかのように「コロニア・ディグニダ」の恐怖が顔を出す。
スヌーズ機能によっていつまでも付きまとってくる。

忘れてはならない。
忘れさせてはくれない。
この作品はあくまでも「コロニア・ディグニダ」の事実をベースとして描いたモノ

虚構と事実
そのバランスがとても優れていた
虚構を織り交ぜて描くことで、より一層「コロニア・ディグニダ」の恐怖が伝わる作品になっていた。

ぼくが言っても上辺の綺麗事にしかならないが、人が人を家畜のように扱う世界があっていいはずがない。

その事実を 理不尽を 今現在も正義が執行されていない事実があることを
どれもこれもぼくらと同じ人間がやらかした行いだということを
とてもリアルに感じさせてくれる作品でした。
その重さだけに囚われることのない楽しめる作品でもありました。

ぜひ劇場でご覧ください。
知っておいて損のない過去の出来事、人間の過ちです。

 

Writer

ミヤザキタケル
ミヤザキタケル

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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