『ミッドサマー』ラストで「永遠に笑い続けた」『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』監督が綴る

死体と旅する奇想天外サバイバル・アドベンチャー『スイス・アーミー・マン』(2016)で長編デビューを飾ったエル・シャイナート監督が、『ミッドサマー』(2019)に対する熱い思いを綴っている。
『スイス・アーミー・マン』では、死体のオナラで海を渡るという、そんな発想はどこから来るのですかと尋ねたくなる不思議な魅力を放ったシャイナート監督。最新作『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』は2020年8月7日(金)より公開となるが、こちらもドタバタと悲哀が絶妙に融合したダーク・コメディ。そんなシャナイート監督の『ミッドサマー』への思いとは。
ダニエル・シャナイート『ミッドサマー』について
「前作だと、おならをする死体ですが、奇妙な物でも観客が必ず感情移入するように、共感を生み出すポイントを作品に入れる事を大切にしています。なぜなら、僕の好きな映画達は、かならずそうゆう仕掛けがしてあって、僕自身、奇妙な話なのになぜか共感させられる事に大いに感動するからです。
だから、自分の作品もそんな映画にしたいと常々思っています。人は、期待していない展開や、思ってもみない出来事に直面したときに、抱えていた気持ちとのギャップで感情が大きく動くから、奇妙な物語に観客が共感できるようなポイントを入れ込んでおくと、最終的には、『まさか!こんな物に共感するなんて!』と、普通の物語より心が大きく動くから、強烈な印象を残せるんです。
例えば、『犬が死んでしまう物語で悲しくなる』これは普通の感情の動きで、心を吹き飛ばすほどの驚きはないけど、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』のラストの展開は、僕の心を吹き飛ばしてめちゃくちゃにしましたね。予期しない信じられない出来事ばかり目の前で起きるから、なんて物語だ!ありえないこんな事!と、奇妙すぎる展開に驚かされ、永遠に笑い続けました。
登場人物が、とてつもない仕打ちを沢山受けて、徐々に気持ちが変わっていくの同じように、観客の感情も動いていくように設計され、知らない間に共感するようにされている点が素晴らしいと感じたんです。特にラストは、一生思い出せるぐらい強烈ですね。
見た時に何を思うか?どんな感情を抱くのか?驚きを生み出すために何をしかけておくか?観客の気持ちを想像しながら物語を組み立てていく事は楽しいプロセスで映画製作の醍醐味だから、この映画(『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』)も強烈なインパクトを残せるように脚本家のビリーと物語を練りに練りました。前作に負けないぐらい奇妙だし、『ミッドサマー』と同じように衝撃的で、ありえない!と思ってもらえる自信があります。
奇妙な物語ではあるけど、ちゃんと登場人物達に共感できるようにしているから、彼らと同じ気持ちを味わってもらうためにも、是非映画館の大画面で観て欲しいと思っています。細かい表情ひとつまで楽しんでほしいですから。」
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』で描かれるのは、ジーク、アール、ディックの売れないバンド仲間。ある晩、練習と称しガレージに集まりバカ騒ぎをしていたが、あることが原因でディックが突然死んでしまう。やがて殺人事件として警察の捜査が進む中、唯一真相を知っているジークとアールは彼の死因をひた隠しにし、自分たちの痕跡を揉み消そうとする。誰もが知り合いの小さな田舎町で、徐々に明らかになる驚きの“ディックの死の真相”とは?
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』は、2020年8月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国ロードショー。