Menu
(0)

Search

DCユニバースはドウェイン・ジョンソンを手放してはいけない ─ 『ブラックアダム』がもたらす「DC新時代」とその意義

ブラックアダム
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC Comics

「DCユニバースを築き上げ、この新時代、DCユニバースの新しい時代を導いていくことが目的」。そう宣言する“ロック様”ことドウェイン・ジョンソンは、『ブラックアダム』と共にDCユニバース再建のための強力な屋台骨になるかもしれない。なぜ、DCには今ドウェイン・ジョンソンが必要なのか?

かねてよりドウェインは、「DCユニバースのヒエラルキーを変える」と言い続けている。2020年1月ごろより宣言しているので、もう2年半以上、繰り返していることになる。

ドウェインはもともとレスラーだ。「DCユニバースのヒエラルキーを変える」宣言は、自身の映画をプロレス的に盛り上げる謳い文句かと見ていたが、いよいよそれ以上の意味合いを帯びてきた。つまり、ドウェインが文字通り、DCユニバースを突き動かす“筋肉”になり得るということだ。「DCユニバースのヒエラルキー」は、スーパーマンやバットマンといた作中のヒーローたちの強弱順だけではなく、製作陣やスタジオ幹部陣の中での己の立ち位置をも示すものなのかもしれない。

長年リングの上で汗を流して観客と向き合ったドウェインは、言わばショウビズ界の申し子。映画の世界でもそのセンスを発揮し、『ワイルド・スピード』『ジュマンジ』シリーズの成功にも一役買った。『ワイスピ』に至っては、途中参加にもかかわらず自身のスピンオフ『スーパーコンボ』(2019)ももぎ取ったヤリ手だ。

その熱血才能には大手スタジオ各社が注目。ドウェインはユニバーサル、ディズニー、ワーナー、Netflixなどを股にかけて仕事しつつ、NBCとは自伝ドラマ「Young Rock(原題)」まで制作している。

凄腕プロデューサーとしての顔も持つ。2012年の主演作『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』(2012)の頃から製作にも携わるようになっており、やがて自身の製作会社「Seven Bucks Productions」を設立。同社を通じて『ランペイジ』(2018)『スカイスクレイパー』(2018)『レッド・ノーティス』(2021)といったアクション映画を続々と放った。

さらにドウェインといえば、Instagramでは3.4億人のフォロワーを持つスーパーインフルエンサーでもある。有名スポーツブランド「アンダーアーマー」とコラボしたり、自身のエナジードリンク「ZOA」をプロデュースしたりと、その胸筋のように大きな影響力を活かしたビジネスをいくつも展開。各SNSのプロフィールはただ一言、「Founder(創業者)」だ。もはや事業家である。

ザ・ロックが踊れば、世界が踊る。DC/ワーナーが絶対に手放してはならない巨人だ。DCユニバースは長らく、「マーベルのケヴィン・ファイギのようなリーダー不在」と指摘されてきた。『ジョーカー』(2019)や『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)のような素晴らしい独自作品が成功した事実もあるが、裏を返せば「出たとこ勝負」を続けている、という見方もある(もちろん、DCの作品は素晴らしいものばかりという事実を否定するものではない)

『ブラックアダム』は、DCエクステンデッド・ユニバースのシリーズ作としてはやや久々の完全新作だ。2021年8月の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』からは、実に1年以上が空いた。その間、DC/ワーナーでは人事再編があり、コロナ禍などによる幾度かの公開延期があり、「バットガール」のキャンセルがあり、エズラ・ミラーのスキャンダルがあった。

やや不安定となりつつあるDCユニバースを、ドウェイン・ジョンソンが支えて立とうとする。ドウェイン自身、「DCのリーダー不在」を認識し、マーケティングの仕切り直しの必要性を感じ取っているようだ。ファンの声を聞こうとするドウェインは、「『ブラックアダム』だけでなく、DCユニバース全体にとっても有意義だ」と、その広い視野をインタビューで語る。「最も大切なのは、ファンを大事にするってこと。リーダーにはそれが必要」。

ブラックアダム
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC Comics

ドウェインは、『ブラックアダム』の最初の話し合いから実現に至るまで、実に6年もかかったことを述懐する。「6年ですよ。僕たちは6年も話し合いを続けてきたけど、ずっと(スタジオから)“ダメだ”と言われてきた。今はそのリーダーシップも、もう不在になっている」。かくも多忙なドウェインが、DCのために6年も費やした意義は大きい。ちなみに今から6年前といえば2016年、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』やデヴィッド・エアー版『スーサイド・スクワッド』の年である。ドウェインはその頃より、自身のDC参入を訴えていたというわけだ。「ここから、DCユニバースの新時代を告げるんだ」と、ドウェインは高らかに宣言する。

実際に『ブラックアダム』以降も、DCユニバースそのものの製作を手伝うことも、ドウェインは藪坂ではない。「DCでのベスト・ポジションだと思うのは、アドバイザーの1人になること。それなら手伝えるかなと。DCのことは小さい頃から大好きですから」。

『ブラックアダム』では、マーケティング会議の様子さえ自身のSNSで発信。「お誕生日席」に鎮座するドウェインの背中からは、まるで彼がワーナー・ブラザースのマーケティング部門を束ねているかのような信頼感さえ漂っている。

この投稿をInstagramで見る

Dwayne Johnson(@therock)がシェアした投稿

現在、DCユニバースはリーダー探しを続けているところ。有力候補とされた映画プロデューサーのダン・リンとは、条件面で折り合わず破談となった。他に『ジョーカー』のトッド・フィリップス監督も候補とされているが、そもそも『ジョーカー』がユニバースから逸脱した作品であり、かつ今後しばらくは続編の製作にかかりきりになると見られることから、あまり現実的ではないように思われる。

『ブラックアダム』の成績次第では、DCユニバースに「ザ・ロック節」がさらに注入される可能性もあるかもしれない。少なくとも、DCユニバースを大いに盛り上げる新たな顔となることは間違いないはずだ。マーベル参加の可能性を一蹴し、DCとの真剣交際宣言もしたドウェイン。その規格外のパワーに大いに期待したいところだ。

ちなみにドウェインは、ファン待望であるヘンリー・カヴィル版スーパーマンの復活にも尽力を誓いつつ、そもそも自身のキャラクターが『シャザム!』のヴィランであるという基本も忘れていない。「『シャザム!』のことと、彼のオリジンには敬意を払っています」「クロスオーバーはいずれ起こります」。

『ブラックアダム』は2022年12月2日、公開。DCユニバースの新時代をとくと見よ!

Source:Comicbook.com(1,2

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly