ユニコーンを轢き殺しちゃった?A24新感覚モンスター・ホラー『Death of a Unicorn』 ─ ポール・ラッド&ジェナ・オルテガ共演、『X エックス』に続く衝撃作【レビュー】

(カナダ・トロントから現地レポート)『ミッドサマー』(2019)や『X エックス』(2022)など、これまで数多くの人気ホラーを生み出してきたスタジオA24の新作は、ユニコーンを轢き殺しちゃった騒動が描かれる?
現地時間3月28日に北米で劇場公開を迎えた『Death of a Unicorn(原題)』の題材はユニコーンとの出会い。そう聞いて、パステルカラーやファンタジーのイメージを持つ人も少なくないだろう。
本作は、そんなイメージを完全にぶち壊すユニークな一作。本作のユニコーンは、人を襲い、血まみれの角を振り回す恐ろしいクリーチャーとして描かれている。キャストも豪華で、『アントマン』ポール・ラッドと「ウェンズデー」ジェナ・オルテガが父娘役を演じるほか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のウィル・ポールターも出演している。
シングルファーザーのエリオット(ポール・ラッド)は、弁護士として大手クライアントであるレオポルド家の代理人を務めることに。新たな仕事は、娘リドリー(ジェナ・オルテガ)との生活を安定させる絶好のチャンスだった。亡き妻を失って以来、2人の関係はギクシャクしており、エリオットは仕事を成功させることで、何とか娘との距離を埋めようとしていた。そんな中、レオポルド家に向かう途中、エリオットの車は何かに激突。 車を降りて確認すると、そこに横たわっていたのは“まさかの”ユニコーンだった……。
パニックになりながらも、エリオットはユニコーンの死骸を車に隠し、何事もなかったかのようにレオポルド家を訪れる。だが、そんな隠蔽工作が長く続くはずもなかった。やがてユニコーンに病を治す効果があることを知ったレオポルド家は、大いに喜び、研究を開始する。一方、子を奪われた親ユニコーンたちが彼らを襲いに邸宅へと向かっていて….。
本作では、ポール演じるエリオットと、ジェナ演じるリドリーのぎこちなくもお互いを思いやる父娘の関係が見どころ。ホラーというジャンル上、細かい心理描写は少なめだが、2人の距離感の変化には思わず引き込まれる。また、レオポルド家の息子を演じたウィルのぶっ飛んだ演技が素晴らしい。彼の突飛な言動が、シリアスな展開の中でブラックコメディ的な笑いを生み出している。
そして、ユニコーンの角が人の体を貫くなど、スプラッターシーンも多く、まるで『X エックス』を彷彿とさせる迫力。さらにジャンプスケアのタイミングも絶妙で、十分にホラーとして楽しめる一本だ。
ちなみに、劇中でリドリーはユニコーンについて研究を始めるのだが、15世紀末〜16世紀初頭に制作された「ユニコーン狩りのタペストリー(The Unicorn Tapestries)」が登場する。このタペストリーは、ニューヨークのメトロポリタン美術館(The Met Cloisters)に所蔵されている実在の作品で、作中で重要な意味を持つため、鑑賞前に少し予習しておくと、より楽しめるはずだ。
『Death of a Unicorn』は、同じホラー作品であるブラムハウスの『The Woman in the Yard(原題)』と同日公開となった。オープニング興行収入は『Death of a Unicorn』が580万ドル、『The Woman in the Yard』が945万ドルで、興行的にはやや苦戦した形だ。しかし、映画ファンの評価は真逆の結果に。Rotten Tomatoesの観客スコアは、『Death of a Unicorn』が78%、『The Woman in the Yard』が45%(現地時間4月1日時点)と、観客の満足度では逆転した。
グロ描写が苦手な人にはハードかもしれないが、ホラーあり、笑いあり、そして『ジュラシック・パーク』のような緊張感もありで、異質な魅力に満ちた作品に仕上がっている『Death of a Unicorn(原題)』。日本公開情報についても待ちたい。
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Source:Deadline