Menu
(0)

Search

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』今度のジェイク・ギレンホールは果たして狂っているのか?

2017年2月18日公開、ジェイク・ギレンホール主演の『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』 を観てきた。
主人公は妻を亡くした男。妻が死んでから自分は彼女にあまりにも向き合っていなかったことに気づく。周りの人々との交流を交えながら、喪失、破壊を経て再生する主人公を描いた物語である。

この『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』。タイトルからするとなんだか詩的な、夫婦の愛について描いた映画・・・という印象を受けるが全くそんな情緒的な物語ではない。映画としては終始淡々とした印象で、まるで小説をめくっているかのように感じられた。

http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm575346688
http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm575346688

映画を観た後、レビューサイトで「やっぱりジェイク・ギレンホール狂いすぎ」という感想をいくつか見かけた。確かに妻が亡くなっても涙を全く流さない主人公の心情は考えにくいし、そんな人物がそうそういるとは考えられない。

しかしこのジェイク・ギレンホール演じるデイヴィスのキャラクターは、私たちの心の中に少しずつ存在していると思う。だから彼が狂ってしまっている、とは言いにくいように感じるのだ。今回は『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』から、人間の感情や自己について考えてみたい。

人間の感情って一体

妻が死んでも涙を流さなかった主人公。彼は妻に対してだけでなく、全てに対して感情が薄いように感じる。「みんな、何を考えてるの?何も感じない俺がヤバイの?」とジェイク・ギレンホールの表情が物語っている。

http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3394707200
http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3394707200

しかし、感情があまり無い、というより”自分が今何を考えているか分からない”という人は決して少ないわけではないと思うのだ。感情はもちろん生きていく上で必要なものだが、無い方がビジネスにしろ、プライベートにしろ円滑に進む、思うこともあるのではないだろうか。何か起こっても「ああ、なるほどね」と傍観者モードの自分を発動させればその状況に対して感傷的にならず、論理的に納得することができる。

http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm1335105536
http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm1335105536

自分自身の感情に蓋をしているうちに、何を考えているのか分からなくなってくる・・・感情が無いというのは傷つかないことも多いかもしれないが、虚しくモヤモヤとした気分にもなるはずだ。
そんなこんなで現象を”理解”することで生きてきたデイヴィス。しかしそうもしていられなくなるの映画の始まりである。

自分自身と向き合うこと

そう、自分のことって1番よく分からなかったりするものなのだ。周りで起こっていることや他人の様子は分かっても、自分に置き換えるとなんだか分からなくなってしまう。

この映画でデイヴィスは身の回りのものをこっぱみじんに破壊していく。その行動は妻が亡くなり”一度全て壊して、夫婦生活を見直す”というよりは”自分自身のために”破壊に出た、という印象をうける。

http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm1234442240
http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm1234442240

自分がどんな人間であるか考える機会はあまりない。しかし、周囲と向き合うためには自分自身をよく知ることも大切だ。

この映画のように身の回りをきれいに壊し、ゼロにしてしまえば自分が見えてくるものなのかもしれない。もちろんデイヴィスのように家まで破壊するのは後が困ってしまうが、例えば少しSNSをやめてみたり、いらないものを処分してみたり。

”何かを壊す”ということも、”自分自身の再スタート” に繋がるのではないかということを教えてくれる。デイヴィスが破壊しまくるシーンに、妙な爽快感を覚える方もいるはずだ。

“よく分からない恋愛”の着地点は?

皆さんも一度はこんなことを思った経験があると思う。「あの時付き合っていた恋人のことを、本当に好きだったんだろうか?」「自分たちの関係は何だったのだろうか?」と。
デイヴィスも妻が死んでから初めて、自分が妻に無関心だったことに気づき自らの夫婦生活を振り返っていくわけだ。そして自分が本当に妻を愛していたか、問いかけていくわけだ。

http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3478593280
http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3478593280

その恋愛について考えた時、出る結論はもちろん人それぞれだろう。「きっと愛していたんだな」と思えるかもしれないし、「やっぱり分からないけれど、いい思い出としてしまっておこう」という結論になるかもしれない。

しかし”過去のよく分からなかった恋愛に向き合い、自分の気持ちを消化すること”は、自分のこれからの将来にとってプラスになるのではないかとこの映画は考えさせてくれる。
妻を思い出すデイヴィスの姿は、彼と同じ経験をしたことがなくとも自分自身を思わず重ねてしまうのではないだろうか。

http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3361152768
http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3361152768

主人公、デイヴィスというキャラクター。一見理解できない人物のようにも思えるが、彼の葛藤や孤独はきっと共感できるところも多いはずだ。

観終わったあと、後からじわじわとやってくる余韻。自分の心に落とし込まれていく感覚を楽しむことができるのが、この『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』である。(まあでもやっぱり狂っているのでは?と思ってしまう部分は、演じているのが狂気的な役が似合うジェイク・ギレンホールだからということにしておこう。)

Eyecatch Image:http://www.imdb.com/title/tt1172049/mediaviewer/rm3394707200
Demolition:Photo by Anne Marie Fox – © 2016 – Fox Searchlight

Writer

アバター画像
Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)

Tags

Ranking

Daily

Weekly

Monthly