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目を背けるな ─ ジョン・ボイエガ恐怖の熱演光る映画『デトロイト』が描いた衝撃の実話とは何か

デトロイト
© 2017 SHEPARD DOG, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

2018年1月26日公開の映画『デトロイト』が、2017年度アカデミー賞最有力作品として日本のファンの間でも公開が待たれている。本作のメガホンを執ったのは、女性初のアカデミー賞®監督賞に輝いた『ハート・ロッカー』(2008)、作品賞を始め5部門にノミネートされた『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)と、新作を発表する度に大センセーションを巻き起こしてきたキャスリン・ビグロー監督。徹底したリアルな描写による圧巻の臨場感、先が読めない骨太でスリリングなストーリーテリングで、常に観客を圧倒してきたビグロー監督の最新作は、1967年7月23日に起きたアメリカ史上最大級の”デトロイト暴動”渦中に起こった「アルジェ・モーテル事件」を描き出す。

アルジェ・モーテル事件とは

「私は自分の目で見た事実を警察署で話した。しかし聞き入れられず、第一級殺人で起訴され辛かった」と当時を回想するのは、ジョン・ボイエガが演じた実在の人物、メルヴィン・ディスミュークスだ。緊張感をみなぎらせ廊下を歩く黒人青年が、取り調べ室へと連れて行かれる。全面が白い壁で覆われた調室に座らされた彼は、デスクを叩き高圧的に取り調べを進める白人刑事によって瞬時に萎縮し、目には涙が浮かぶ。

デトロイト
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1967年当時、食料品店の警備員としてデトロイト暴動に遭遇した彼は、暴動発生から3日目の夜に起きた「アルジェ・モーテル事件」に臨場し、映画撮影時にはアドバイザーも務めた。「家に帰りたいだろう、モーテルで何があった」と白人刑事の容赦ない詰問が善良なメルヴィンを追いつめていく。

「市内では暴動が激化。立入禁止となった街の西側150ブロックにわたる区域は、破壊されて荒廃」と、暴動が発生し、略奪や放火によって戦場と化したデトロイトの模様を伝える映像は衝撃的だ。「当時のデトロイト市民は4割が黒人だったが、警察官の95パーセントは白人が占めていた」──報道記者デヴィッド・ジマンが証言する通り、黒人に対する差別や格差が蔓延しており、一触即発の状況だった。市民の緊張は高まり、まさに爆発寸前だったのだ。そして、デトロイト暴動発生から3日目の夜、銃声の報を受けて現場に急行した白人警官たちは、アルジェ・モーテルに居合わせた若者たち8人全員を容疑者と断定し、暴力的な強制尋問を始める。

キャサリン・ビグロー監督は、「アルジェ・モーテル事件は悲劇だった。この映画の製作過程で特に重視したのは、実際の被害者に話を聞くことだった」と語る。監督の言葉を受けて、「可能な限り多くの当事者に連絡を取り、起きたことを彼らの視点で語ってもらった」とジマンが続ける。監督が悲劇だと語るアルジェ・モーテル事件を捜査した元デトロイト警察署長のアイク・マッキノンは、「事件直後に同僚の警官が“白人警官が黒人青年たちを射殺した”と話していた」と証言。映像は、“戦慄の一夜”直後に撮影された事件現場の床には血痕が生々しく残る写真をクローズアップしていく。事件を生き抜いた被害者の女性、ジュリー・ハイセル(映画ではハンナ・マリーが演じる)は、「雑談し、音楽を聴いていたら銃弾が頭の横をかすめた」と今も脳裏に焼きつく恐怖を回想する。続く本編映像では、ウィル・ポールターが演じる凶悪な白人警官クラウスが、「このことを誰にも話すな」と口封じのために脅しを入れ、被害者たちは凍りつくことになる…。

デトロイト
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デトロイト暴動の渦中に起こった「アルジェ・モーテル事件」が、50年の歳月を経て遂に映画化された。密室と化した室内で一体何が行われていたのか。そして、被害者たちはどんな運命を辿るのか。ビグロー監督は、半世紀もの間、歴史の闇に封印されていた“戦慄の一夜”を徹底してリアルに再現、映画史に残る40分間の衝撃的な映像を完成させた。その衝撃を、是非、映画館で受けとめてもらいたい。

映画『デトロイト』は2018年1月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開。

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THE RIVER編集部THE RIVER

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