地下鉄の乗客の似顔絵で大ブレイク、デヴォン・ロドリゲス日本独占インタビュー ─ 「あなたの情熱を追い続けて」

初の個展 1000人のファン
今やデヴォン自身もスーパースターである。「4年前から、ずっとこれが止まらないんです」と、彼はInstagramの通知画面を見せてくれた。更新するたびに、新しい通知が滝のように溢れる。「クレイジーなことだと思いますが、一方で“数字”に慣れてしまったところもあって」。彼の反響は、良くも悪くもスマホの中の“数字”でしかない。「これは現実なのか?それともコンピューターの何かなのか?」
2023年9月、デヴォンは自身初の個展をニューヨークで開催した。タイトルは「アンダーグラウンド(Underground)」で、これはデヴォンのこれまでの旅路を様々な形で表している。個展を通じて、デヴォンは初めて自分の人気が実在するものだと知った。「イベントは初めてだったし、どうなるかわからなかった。でも、まさか1,000人も来てもらえるとは……。警察も来るほどでしたよ」。個展を経て、自身の活動の見方が変わった。「これは本物だったんだ、リアル・ライフなんだ」。
ファンの中から、80代の老人が現れて、デヴォンに声をかけた。「私も若い頃に絵を描いていた。しかし40年ほど前に、とっくに絵への情熱なんて失っていた」。老人は言う。「でも、君の動画を見てから触発された。久しぶりに画材屋に行って、ペンやブラシを300ドルほど買い込んだよ。君のおかげで、アートへの愛が甦ったんだ」。
今度は、バスケットボール選手を志す若者。「選手になるなんて、僕には無理だと思っていました。何もないブロンクスから急激に成功していくあなたの姿を見てから、僕も毎日バスケの練習を頑張るようになりました。あなたみたいになりたいです」。
あなたの絵や動画のお陰で、笑顔になれました。たくさんのファンからかけられた言葉をヒントに、デヴォンは自身のブランド『Keep Smiling』を立ち上げた。「僕はただ、ありのままでいるだけ。見知らぬ人に声をかけて、絵をあげているだけです。それなのに、たくさんの人から“笑顔になれた”と言ってもらえて。だから、“笑顔でいよう(Keep Smiling)”というポジティブなメッセージを広げたいと思って。ふと思いついて作ったんです」。無事に商標権も取り、アパレルグッズをネット販売した。「そうしたら、世界中から毎日、たくさんの注文が入るんです。クレイジーですよ」。

現在デヴォンは、地下鉄で乗客を描くシリーズのほか、路上で通行人に声をかけ、インタビューを行いながら似顔絵を描く新シリーズを始めた。相手の半生を聞き出しながら、その姿を描きこみ、アートとして世に残す。「ある意味、あなたは素晴らしいジャーナリストでもあると思いますよ」というと、デヴォンは「ありがとう」と照れ笑いを浮かべた。
ペンを動かしながら、質問を考えて対話をする。こうしたマルチタスキングは「慣れています」とデヴォン。「高校の時の美術の授業でも、ずっと友達と喋りながら絵を描いていました。冗談を言い合いながらね。だから、絵を描きながら、同時に会話をすることには慣れています」。
デヴォンはお喋りが好きだ。このシリーズなら、様々な人たちと対話を楽しむことができる。これを世界中でやってみたい。さて、どこに行ってみようか?「パッと頭に浮かんだのが、東京だったんです」。