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テリー・ギリアム『ドン・キホーテを殺した男』2019年3月米国公開決定 ─ 約20年越しの一作、アダム・ドライバー主演で実現

ドン・キホーテを殺した男 テリー・ギリアム アダム・ドライバー
[左]Photo by Vegafy https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Terry_Gilliam.jpg [右]Photo by Dick Thomas Johnson https://www.flickr.com/photos/31029865@N06/27163437599/ Remixed by THE RIVER

『未来世紀ブラジル』(1985)や『12モンキーズ』(1996)などの鬼才テリー・ギリアム監督による新作映画『ドン・キホーテを殺した男(邦題未定、原題:The Man Who Killed Don Quixote)』が、2019年3月に米国公開を無事迎えることがわかった。米Deadlineなどが報じている。

『ドン・キホーテを殺した男』の米国配給権を取得したのは、米Screen Media FilmsとFathom Eventsの2社。2018年5月にカンヌ映画祭で初上映され、その後フランスで劇場公開されていた本作が、紆余曲折を経てアメリカの観客にもお披露目となる。

テリー・ギリアム悲願の新作、これまでの紆余曲折

これまでギリアム監督は、『ドン・キホーテを殺した男』に過去19年で8回挑んできたといわれている。始まりはジャン・ロシュフォールとジョニー・デップのタッグによる「2000年版」で、これは撮影2日目に洪水で撮影現場が崩壊したため再制作を強いられ、直後にロシュフォールが降板したことで製作が打ち切られた(悲惨な顛末は2002年のドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』に詳しい)。その後もギリアムは企画を幾度となく立ち上げ直しているが、主に資金面の理由で製作は開始されていなかった。

『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジョナサン・プライス、『スター・ウォーズ』新3部作などのアダム・ドライバーを主演に迎えた今回の企画は、米Amazon Studiosの出資によって実現したもの。2017年6月に撮影が終了し、その後ポストプロダクション(仕上げ作業)が行われていた。

しかし2018年4月、映画祭での上映を控えて、元プロデューサーであるパウロ・ブランコ氏が映画の権利を主張して裁判を起こしている。6月にはフランス・パリの裁判所が、映画の権利はブランコ氏にあるとの判決を下したとも伝えられた。裁判に発展した時点でAmazon Studiosは米国配給から手を引いており、その後、世界各国での上映も不透明とみられたのである。

だが一連の報道を受けて、『ドン・キホーテを殺した男』のプロデューサーであるマリエラ・ブシーブスキー氏は、この結果を「判決内容をブランコ氏が大げさに語ったにすぎない」と一刀両断している。裁判所はブランコ氏が提訴に費やした10,000ユーロを支払うようギリアム監督に命じたが、作品の権利はギリアム監督が保有しているため、監督とブランコ氏の経済的な問題は映画の公開に影響を与えないとしたのである。そしてこのたび、新たな配給会社を得て米国公開が決定したというわけだ。

『ドン・キホーテを殺した男』

『ドン・キホーテを殺した男』は、タイトルの通り、スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの名作『ドン・キホーテ』をモチーフとした物語だ。アダム・ドライバーが演じるのは、幻滅し疲弊しきった映画業界人のトビー役。ある時、トビーは自分をドン・キホーテだと信じ込んでいるスペイン人の老人(ジョナサン・プライス)に出会う。すると老人は、トビーを自分の信頼する従者サンチョ・パンサだと思い込むのだった。言われるがまま老人に付き合うトビーだったが、やがて彼も現実と夢の見分けがつかなくなっていく……。

出演者はアダム・ドライバー&ジョナサン・プライスのほか、『マイティ・ソー』シリーズのセルウィグ博士役やラース・フォン・トリアー作品などで知られるステラン・スカルスガルド、『007 慰めの報酬』(2008)や『オブリビオン』(2013)のオルガ・キュリレンコ、『ナイト&デイ』(2010)のジョルディ・モリャほか。脚本はギリアム監督とトニー・グリソーニが共同執筆した。グリソーニは『ラスベガスをやっつけろ』(1998)や『ローズ・イン・タイドランド』(2005)でギリアム監督をタッグを組んだのち、数々の映画・ドラマを執筆してきた人物だ。

映画『ドン・キホーテを殺した男(邦題未定、原題:The Man Who Killed Don Quixote)』は2019年3月に米国公開予定。さて、そろそろ日本公開も気になるところ……。

Sources: Deadline, THR, /Film

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。