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『スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』ではない幻のエピソード9『Duel of the Fates』のストーリーとは

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)
© 2020 Lucasfilm Ltd. 2020年10月9日(金)よりディズニープラスで独占配信開始

『スター・ウォーズ』スカイウォーカー・サーガは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)を持って完結した。長きにわたるジェダイとシス、レジスタンスとファースト・オーダーの戦いに決着がつき、レイやフィンにポー・ダメロンは戦いを終え、ルーク・スカイウォーカーやハン・ソロ、レイア・オーガナの役目も果たされた。

このエピソード9には、J・J・エイブラムス監督がクリス・テリオと共に脚本を書き上げる以前、前監督だったコリン・トレボロウデレク・コノリーと共に書き上げた幻の脚本、いわば「もうひとつのエピソード9」が存在する。

そのタイトルは『Duel of the Fates』だ。これは『エピソード1/ファントム・メナス』(1999)のクライマックスであるクワイ=ガン・ジン&オビ=ワン・ケノービ対ダース・モール戦の劇伴名で、全9作からなるスカイウォーカー・サーガの環を閉じるような意味合いもあると感じられる。仮に『Duel of the Fates』として実現していたら、エピソード9はおそらく『スター・ウォーズ/運命の戦い』という邦題になっていたことだろう。

トレボロウの降板(2017年9月)当時、ルーカスフィルムとの間で脚本に対する意見の相違があったと報じられていた。そのためトレボロウ版の脚本は基本的に採用されず、J・J・エイブラムスとクリス・テリオはイチから脚本を書き直している。たとえばパルパティーン再登場のアイデアはエイブラムスによるもので間違いないようだ

もっとも、公開された『スカイウォーカーの夜明け』で、トレボロウとコノリーは「原案」としてクレジットに残っている。トレボロウは「J・Jが僕たちのアイデアを部分的に使ってくれたことをうれしく思います。僕たち全員が必要だと思ったシーンを観てもらえるのが楽しみ」ともコメントをしている

『Duel of the Fate』がネット上でファンの話題を集め始めたのは、『スカイウォーカーの夜明け』からひと月が経った頃。信憑性を持つクオリティの脚本やコンセプトアートの数々がネット上にリークされのだ。後にトレボロウは一連の情報について、「そう、これは『Duel of the Fates』のものだ」と、脚本やコンセプトアートが本物であったことを認めている。

それでは、トレボロウとコノリーによる幻のエピソード9『Duel of the Fate』はどんなストーリーだったのか。『スカイウォーカーの夜明け』とどのような違いがあり、またどのような共通点を持っていたのか。

噂の脚本はネット上で見つけることができるが、あくまでも非公式のものであるため、直接のご紹介は控えよう。ただしEsquireScreenRantInverseなどのメディアサイトはこの脚本で語られているストーリーの一部を熱心に伝えている。本記事では、あくまでも「幻の脚本とされるドキュメント」に基づく小話として、『Duel of the Fate』で語られるはずだったらしいストーリーの主なポイントを、『スカイウォーカーの夜明け』と比較しながら見てみよう。

この記事には、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)のネタバレが含まれています。また、『Duel of the Fate』の内容に関する説明は、2016年12月16日付『STAR WARS EPISODE IX by Derek Connolly & Colin Trevorrow』とされる文書および関連情報に基づいており、コリン・トレボロウ氏もこれに関するTwitter投稿に”Yes, this is from Duel of the Fates. “と認める投稿しておりますが、あくまでも非公式のものであることをご理解ください。

『Duel of the Fate』オープニングクロール

“ファースト・オーダーの支配は、銀河の隅にまで広がっていた。残る惑星はわずかのみ。反逆行為は死をもって処されていた。不安の高まりを根絶やすべく、最高指導者カイロ・レンは近隣星系での全コミュニケーションを遮断していた。レイア・オーガナ将軍率いるレジスタンスは、全滅を防ぎ、そして自由への道を切り開くべく、秘密の任務を計画していた……”

カイロ・レンとダークサイド

『スカイウォーカーの夜明け』では、死んだはずのパルパティーンが実は復活していたことが判明し、シス復興を望む”シス・エターナル”なる新組織が登場していた。絶命した最高指導者スノークも、パルパティーンが創造した存在であることが明かされた。物語の対決は、シス・エターナル対レジスタンス、パルパティーン対レイ&カイロ・レンの構図が取られていた。

『Duel of the Fates』では、Tor Valumなる古代の闇の存在が登場。これはダース・プレイガス以前にダース・シディアス(パルパティーン)のマスターだったシスで、恐ろしいクリーチャーのような風貌をしている。

パルパティーンは生前、不測の事態に備えてルーク・スカイウォーカーをレミニコアのTor Valumの元に連れてゆき、ダークサイドの修行をさせよとのメッセージを、ダース・ベイダーに向けてシス・ホロクロンに残していた。フォースの未知の領域、モーティスの力を手に入れるためだった。モーティスとはジェダイ/シス以前から神話のように伝わる古代の場所で、そこでは光と闇が調和しており、モーティスのテンプルにはジェダイすら知らぬ強大な力が眠っているということが後に説明される。(モーティスは、「クローン・ウォーズ」や「反乱者たち」でも登場するが、Tor Valumは『Duel of the Fates』独自のキャラクターのようだ。)

カイロ・レンは灼熱の惑星ムスタファーに赴き、パルパティーンが残したシス・ホロクロンを発見。ここに辿り着くまでに、レンにはルーク・スカイウォーカーの霊体が付きまとっており、闇の道を探求する無意味さを説いていた。

カイロ・レンがTor Valumに関するパルパティーンのメッセージを再生すると、ホロクロンは彼の顔をスキャンし、再生の主がダース・ベイダーではないと判別すると、赤い閃光を放つ。レンの顔は爛(ただ)れるが、後にマンダロリアンのアーマーを製錬し、ダース・ベイダーに似たマスクを被るようになる。

レミニコアに向かったカイロ・レンは、そこでTor Valumから、相手のリビング・フォースを自在に吸い取るダークサイドの術を学ぶ。やがてレンはValumの指示で氷の洞窟に入ると、そこにダース・ベイダーの亡霊が現れてレンと対決する。『エピソード5/帝国の逆襲』惑星ダゴバのシーンを彷彿とさせるようだ。

怒りとともに洞窟から戻ったレンは、Tor Valumにモーティスの場所を問いただす。しかし、亡霊のベイダーに破れたレンにはその力に値しないとしてValumは教えない。これに逆上したレンはフォース・ホールドでValumを捕らえ、リビング・フォースを吸い取って殺害してしまう。

やがてレンがモーティスの地にたどり着くと、そこでレンは木でできた家を訪ねる。そこにはハン・ソロの霊がおり、レンは父の霊に「母さんはお前を愛している」と説得を受ける。

ソロの霊は『スカイウォーカーの夜明け』にも登場し、レンの心を動かすことに成功していたが、『Duel of the Fates』は絶望的だ。「ライトセーバーを渡すんだ」と手を伸ばしたソロに、レンが「できないと分かっているだろう」と返す。そこで『フォースの覚醒』のシーンに戻り、レンは再び父をライトセーバーで突き刺す。ソロの亡霊は愛に満ちた目をしていて、続いてレンは雪の中でひとり震えている。

コルサントの再登場

『Duel of the Fates』では、プリクエルに頻出した首都惑星コルサントが再登場する予定だったようだ。コルサントはファースト・オーダーに支配されてしまっており、同地のジェダイ・テンプルが物語の鍵となる。

コルサントではフィン、ローズ、C-3POとR2-D2がファースト・オーダーとの激戦を繰り広げる。元兵士のフィンはストーム・トルーパーの心を動かし、ヘルメットを脱いだトルーパー軍団を味方につける。元ストーム・トルーパーというフィンの出自を最大に活かした展開となったはずで、演じたジョン・ボイエガも「これになってたらヤバイ。最高だったと思う。間違いない」と絶賛している

ハックス

『最後のジェダイ』よりコメディ・リリーフらしい方向性を進んだハックスは、『スカイウォーカーの夜明け』で実はレジスタンスからのスパイだったという設定が与えられる。

『The Duel of The Fates』のハックスは、コルサントの議長として君臨している。ハックスはライトセーバーをコレクションしていたことが明らかになり、コルサントでの敗北を悟ると、そのうちの一本を使って自害の最期を迎える。コンセプトアートでは、まるで侍の切腹のような姿が確認できる。

レイの正体とカイロ・レンとの戦い

『最後のジェダイ』で「何者でもない」という正体を明かされたはずのレイは『スカイウォーカーの夜明け』で一転、復活した悪のパルパティーンの孫娘だったという設定が与えられる。最終決戦ではカイロ・レンや先代ジェダイたちの力を借りてパルパティーンを打ち破り、ラストシーンではスカイウォーカーの故郷タトゥイーンで「私はレイ・スカイウォーカー」と名乗る。

『Duel of the Fates』ではパルパティーンが復活しないので、レイは「何者でもない」ままである。レイはダース・モールのようなダブルブレードのライトセーバーを作っており、コンセプトアートでも確認できる。

レイはルークの霊体の修行を受けながらも、光と闇、フォースのバランスに悩んでいる。

脚本のクライマックスではモーティスでカイロ・レンと対峙し、そこでレイの両親を殺したのはカイロ・レンとレン騎士団だったことが明らかになる。ここからレイ対カイロ・レンの”Duel of the Fates(運命の戦い)”にもつれ込む。

レイとレンが激戦を繰り広げ、レンは彼女の目元にライトセーバーの一撃を加える。視力を失って倒れたレイを置いて、レンはテンプルの内部へと進む。しかしテンプルの中心部に辿り着いても何も見つからず、怒ったレンはライトセーバーで古代の彫像を切り刻む。

そこにルークの霊が現れ、お前の負けだ、ベイダーのように、ダークサイドのせいで失敗したのだと告げる。怒りのレンはライトセーバーでルークを攻撃するが、亡霊であるはずのルークの手はレンのセーバーの光刃を鷲掴みにする。レンが「俺はどんなスカイウォーカーよりも強い」と訴えると、ルークは「お前はスカイウォーカーではない」と返す。

ルークはレイアやフィンたちの意識に呼びかけ、レイに力を集結させる。再び立ち上がったレイは、「マスターたちは間違っていた。私は怒りを否定しない。愛も拒まない。私は闇であり、そして光」と宣言。レンが「お前など何でもない。お前は何者でもない!」と声を上げるが、レイは「何者でもない人なんて、いない」と返す。『最後のジェダイ』で定めた「レイは何者でもない」という設定に説得力をもたせる展開となっている。

レイとレンは激戦を繰り広げるが、レンがTor Valumから習得した技でレイのリビング・フォースを吸い取る。みるみる力を失っていくレイだが、ここでレンは母レイアの声を聞き、やがてレイにリビング・フォースを返し始める。レンは力を失っていき、息絶える最後にレイの真実の名「レイ・ソラナ(Solana)」と言い残す。

目を覚ましたレイを、ルーク、ヨーダ、オビ=ワン・ケノービの霊体が囲んでいた。先代のジェダイたちは、レイがフォースのダークサイドとライトサイドを受け入れたことで、フォースのバランスを見つけたのだと告げる。霊体たちが消えゆく中、オビ=ワンの「君はジェダイだ、レイ・ソラナ。君が最後ではない」という声が残る。

ランド・カルリジアン

『スカイウォーカーの夜明け』では、レジェンド俳優ビリー・ディー・ウィリアムズによるランド・カルリジアンが『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)ぶりに再登場。惑星パサーナでいちど登場した後、エクセゴルの最終決戦では銀河中から集めた大勢の援軍を引き連れて現れるいう見せ場が与えられた。

ランドの役割は『The Duel of Fate』でも似ている。この構想版でランドは、ファースト・オーダー相手のナイトクラブのような店を経営していて、レイアの訪問を受ける。パイロットを求めるレイアはランドの助けを求め、ランドも、もし何かあればレイアを守るとハン・ソロと約束していたと明かす。しかし、ランドは約束は守れないとしてレイアの申し出を断り、「すまない」と言ってレイアを帰す。

終盤のコルサントの戦いでは、劣勢となったレジスタンスが退却しようとしたところ、ランド率いる大勢の援軍がハイパースペースから出現する。ランドは自らの宇宙船レディ・ラックに搭乗している。

R2-D2とC-3PO

『スカイウォーカーの夜明け』では、C-3POが暗号解読と引き換えに記憶を失う。後に3POは記憶を取り戻すこととなるが、長年『スター・ウォーズ』でファンと冒険を共にした3POの自己犠牲は、感動的なハイライトとなった。

『The Duel of Fate』で記憶を失くすのはR2-D2だ。コルサントの戦いでR2-D2が故障し、最後に修理にかけられる。レイアが気遣う中、C-3POは「あいつがいないと、私はどうすれば。あいつ、頑固なやつですけど、私…」と狼狽する。レイアはBB-8からメモリードライブを受け取り、R2-D2に挿入する。するとR2はビープ音と共に再起動し、R2の視点から見た過去60年の光景を映し出す。

ジャワ族からC-3POを買うルーク。ルークに父のライトセーバーを授けるオビ=ワン。デス・スターの溝を飛ぶR2。ヤヴィンの戦いでメダルを授与されるハン・ソロ。沼地からX-ウイングを持ち上げるヨーダ。ジャバのセール・バージで、合図の敬礼を送るルーク。エンドアのバンカー外にいるレイアとハン・ソロ。

レイアは驚き、息を呑む。「ありがとう、R2」と伝えると、R2も愛らしいビープ音で答える。レイアはR2と3POをふたりにしてやる。

ラストシーン

『スカイウォーカーの夜明け』のラストでは、戦いを終えたレイがタトゥイーンのスカイウォーカー家跡地を訪れ、彼女だけの黄色のライトセーバーを起動させる。そこに現れた老婆に「あなたは誰なの」と尋ねられ、「レイ・スカイウォーカー」と答えると、双子の太陽を望んでBB-8と歩き出す英雄的な後ろ姿で完結を向かえた。

『The Duel of Fate』のラストでは、フィンが草原で子どもたちを集め、レイたちと共にした冒険の日々を語り聞かせている。その中には、『最後のジェダイ』に登場したホウキの少年テミリ・ブラッグの姿もある。

どうやらレイはいなくなっているらしく、フィンは「いつか彼女が帰ってくると信じている。そのために俺たちはここで待っているんだ」と話す。解散した子どもたちは、BB-8も交えて駆け回る。フィンとローズはフォース=センシティブの子どもたちのための避難場を作っていたようだ。

一度、シーンはミレニアム・ファルコン内のポー・ダメロンとチューバッカに移る。ライトスピードで飛行中のファルコンだが、警告灯が突然鳴り始める。ポーが「チューイ、旋回だ」と言うと、チューバッカは雄叫び。「わかってる!とにかく旋回だ!」ダメロンは、ハン・ソロに代わってチューバッカの相棒となったようだ。

シーンはフィンたちに戻る。外に出たフィンの寂しげな顔を、双子の太陽が照らす。そこに人影が見え、フィンとローズは眩しそうにしながら近づいていく。水平線にぼやけた姿は、やがて見覚えのある姿を象っていく。

レイ・ソラナだ。視力も回復し、額に傷跡が残っている。レイのもとに駆け寄る子どもたちを、BB-8が追い抜いていく。レイもそちらに向かう。

レイが新たな世代のジェダイを鍛えること、内なるバランスを見出すことが銀河に平和と正義をもたらすという教えを継承していく、ということが示され、『The Duel of Fate』は完結する。

コリン・トレボロウ「素晴らしい思い出」

コリン・トレボロウ
Photo by Red Carpet Report on Mingle Media TV https://www.flickr.com/photos/minglemediatv/23481531320/ Remixed by THE RIVER

コリン・トレボロウは後になって、降板のタイミングは「企画の開発段階、アートや脚本を作っている途中だった」と明かしている。「自分が何かをとても気にかけて、そこに力を注いでいると、それがトラウマになることはありうる」「つらい出来事はあります。すごく落ち込むこともあるし、それから逆転することもある。うまくいけば、最後には釣り合いが取れる」とも語っており、やはりある程度のショックを受けていたことは伺える。

とは言えトレボロウは米メディアのオンラインインタビューで、『Duel of the Fate』で登場予定のあった新型タイ・ファイターの模型を持ち出しながら、「素晴らしい思い出です」と笑顔で振り返ってもいる

実現しなかった物語を想像してみるのは自由で、楽しいことだ。米Esqureは『Duel of the Fate』について、「これぞファンが求める結末」と惜しんでいるほど。もっとも、人は”ないものねだり”をしてしまうものだ。隣の芝……、隣のブルーミルクは青く見える?

Source:『STAR WARS EPISODE IX by Derek Connolly & Colin Trevorrow 12.16.16』,Esquire(1,2,3),ScreenRant,Inverse

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THE RIVER編集部THE RIVER

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