Menu
(0)

Search

これなら魔法使いでもMCUの住人になれるぞ!ドクター・ストレンジ! 

拡がり続けるマーベル・シネマティック・ユニバースはとうとうこの人を登場させた。
その名はドクター・ストレンジ!

その出自は60年代でマーベルヒーロBIG3と同世代の古参組。しかし、彼は魔法使い!確かに北欧神話の神様ソーなんて言う思い切りファンタジーな存在もいますが、彼はまぁ神様なんで…。

ところがドクター・ストレンジは人間。人間が魔法というファンタジーの武器を使うのはこれまでのなんでもありではあったMCUにおいても、さすがにバランスを崩しかねないのでは?という心配と躊躇が作る側にも見る側にもあったはずです。

ところが、これがオリジンのテイストを持ちつつMCUの一角に想像以上になじんでいて、びっくりです。
これで思い出したのが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と『アントマン』。肥大化の一途をたどるMCUの合間に会って、独特のリズム&テイストを追及。当然先々“本丸”『アベンジャーズ』に合流することはわかっているのですが、ちゃんとこれはこれで成立していて、一本の映画としても普通に見て楽しい。
フランチャイズ作品数が10本以上を超えてきた中でこれ見事です。

しかも事実上の『アベンジャーズ2.5』だった『シビル・ウォー』の後に、これを持ってこれるというのは大したもののですね。MCU内のものであるとカウントされつつも『ウィンター・ソルジャー』と『エイジ・オブ・ウルトロン』の直後に放たれて、重くなりかけた空気、肥大化し続ける世界に待ったをかけるかのように、単品で堪能できる作品になってくれて、見る側も同じリズム一辺倒ではなくいろんなノリ方があるんだということを再認識させてくれました。

MCUの他の作品でもリズムを変えるというほどではないにしても『ウィンター・ソルジャー』や『アイアンマン3』など映画『アベンジャーズ』の影を感じさせずに、各々のヒーローの続編としてちゃんと成り立たせてきた実績があることを思い出しました。

“合法ドラッグムービー”“『インセプション』再び”と評されている映像は圧巻の一言。これまでもCGがなくては絶対にできなかった映像を展開し続けたMCUですが、“まだ、あったか!?”というのが正直な感想です。

そして、成功のもう一つの理由は何といっても主役!『SHERLOCK』や『イミテーション・ゲーム』で変人&天才を演じさせたら抜群のベネディクト・カンバーバッチをここで持ってきたキャスティングは、トニー・スタークをロバート・ダウニー・ジュニアに演じさせて以来の見事な差配です。

例によって原作コミックは様々なライター・イラストレイターによって描かれ、幾度となくリブートされてきていますが、ひげを蓄え、マントを羽織った彼の姿は、最大公約数的なドクター・ストレンジです。

さらに言えば、ここで古参組のストレンジを投下するということは、目下分裂状態のアベンジャーズにとっても大きな作用をもたらす存在になることは、間違いないでしょう。

そうなるとある種の尊大さも必要となってきます。遅参しながらも、抜群の存在となるキャラクターにはまってくれて、なおかつオリジンを投影できる役者というのはそうそう見つかるものではありません。
そんな中、絶好のタイミングで映画の企画とベネディクト・カンバーバッチがぴたりとはまりました。

もちろん脇を固めるティルダ・スウィントン、マッツ・ミケルセン、キュテル・イジョフォーという、豪華すぎる共演陣の効果も抜群です。(裏を返せば、この分厚いキャストが作品の重要性を語っているわけですが…。)

もう一つ、驚いたのが監督のスコット・デリクソン。過去のフィルモグラフィーから見ても、ここまでジャンプアップしてくるとは思いませんでした。もちろんMCUを引っ張る剛腕プロデューサーのケヴィン・ファギの存在も大きいのですが、ここまで実験的なアクション&ファンタジーにかじを切ってくるとは思いませんでした。

盛り沢山の内容ですが、実は二時間を切っているのも大したものです。
先ほど『インセプション』的な映像と言いましたが、この手法があることで、魔法使いのお話なのにMCUに合流してもよさそうな感じがちゃんとしています。それこそ『ハリー・ポッター&ファンタスティック・ビースト』路線まで“魔法感”を出されると、さすがにテイストが違いすぎてアベンジャーズに混ざれません。

これまでのMCU。そしてこれから拡がるであろうMCU。この二つのことはいったん忘れて『ドクター・ストレンジ』の世界にどっぷりとつかりましょう。

恒例のエンドロール中の特典映像も健在なので、劇場が明るくなるまでは席は立たずに!

最後に、この映画を見て楽しみなったのがいよいよ始動するMCU版スパイダーマンこと『スパイダーマン/ホームカミング』。

大きな流れ、枠組みありきの中でもちゃんとした独立性を確保してくれることが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アントマン』『ドクター・ストレンジ』で三度にわたり証明されましたので、新たな“親愛なる隣人”もきっと楽しいませてくれることでしょう。

『シビル・ウォー』から始まったMCUフェーズ3は現状の予定のままでいくと、なんと10作品!ちょっと付き合うのが大変そうですが、こういう具合にいろんなリズムで見せてくれるなら、まだまだいけそうな気がしますね!

Writer

アバター画像
OsoneRampo≒村松健太郎村松 健太郎

≒村松健太郎。脳梗塞との付き合いも10年目。 映画祭の審査員、映画学校を手伝い。シネマズBY松竹にて執筆も。 映画を広げるのに便利な舞台とか本とかも・・・・。黒手袋て杖をついていれば私です、