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バスを飲み込む巨大穴の恐怖! 陥没事故の恐怖を描いた少しおバカなパニック・ディザスター『地盤沈下 シンクホール』DIGITAL SCREENで上映中!

アメリカの田舎町に謎の大穴が突如として現れた。それは建物や人々などを一瞬にして飲み込んでしまうくらいの大きさで、その正体は地盤沈下による陥没孔(シンクホール)だった。ある日、陸上部の会合に向かう途中だった一台のスクールバスが、なんの前触れもなく現れたその巨大なシンクホールに、抗うすべもなく飲み込まれてしまう。

地盤沈下といえば、昨年11月に福岡市で発生した、JR博多駅前の大規模な陥没事故は記憶に新しい。信号機が無残にも穴の中へと吸い込まれていく、あの衝撃的なニュース映像を見て驚いた人も多いことと思うが、世界ではアメリカやスウェーデン、果てはグアテマラなどでも大規模なシンクホールが確認されている。この映画で描かれた悲劇が実際に起きてもなんら不思議ではない、まさに半実録のパニック映画と言って差し支えない。

しかし、本作はそんなシリアスなテーマを題材にしつつも、ちょっと“間抜け”でツッコミ甲斐のある、一種のおバカ要素なども付け加えられており、単純な災害モノとしては描かれていないあたりが面白い。まさに“おバカ映画”と“パニック映画”を荒くかき混ぜたような、異色のディザスター・ムービーに仕上がっている

本作でメガホンを取るのは、凶暴な“人喰い”ドーナツの悲劇を描いた青春ホラーコメディ『アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ』のスコット・ホイーラー監督だ。

さて、今回は世界各国の映画を独占上映する、オンライン上の映画館『DIGITAL SCREEN』で上映中の、ちょっと間抜けなB級ディザスター『地盤沈下 シンクホール』をご紹介したい。

『地盤沈下 シンクホール』あらすじ

(C) 2013 Odyssey Media Inc.
(C) 2013 Odyssey Media Inc.

シンコ社は原油採掘事業を積極的に進めていた。救命士のジョーンは夫のゲイリーと娘のペイジが見守る中、気球に乗り原油採掘反対運動を起こすが油井から噴出した蒸気で墜落してしまい、同乗の仲間を失ったことで心に大きな傷をつくってしまう。
ある日、ゲイリーが運転するスクールバスが陸上部会に向かう中、突然地面が割れ巨大な陥没穴に落ちてしまう。バスにはペイジや彼女の恋人ジェイソンら数人の生徒たちも同乗していた。ジェイソンはシンコ社社長チャンドラーの息子で原油採掘でわかりあえないペイジとは疎遠になっていた。バスはパイプにぶら下がっただけの不安定な状態でいつ深い穴に落ちるかわからなかった。原油が流れてきてジェイソンは事故の原因がシンコ社にあると確信する。(『DIGITAL SCREEN』より一部引用)

おバカ要素が見え隠れする風変りなB級ディザスター

(C) 2013 Odyssey Media Inc.
(C) 2013 Odyssey Media Inc.

爽やかな音楽と共に熱気球が大空へと舞い上がる、なんとも陽気なワンシーンで始まる本作。後半の展開を考えると全くそぐわないオープニングだ。

原油の採掘事業を積極的に推し進める“シンコ社”。ペイジとその母ジョーン、父ゲイリー、そしてジョーンの同僚らは、気球に乗り込み油井の上空を飛ぶことによって、シンコ社に対する採掘反対をアピールするつもりだったのだが、油井から噴出した蒸気にあおられ気球は墜落、ジョーンの同僚が死んでしまう。冒頭の雰囲気から一転して、いきなり過ぎる同僚の事故死。悲しみを煽る音楽によって無理な悲哀を誘うが、よく考えると始まって7分で人が死ぬという超展開に少し笑ってしまう。しかし、一見すると不要にも思えるこの気球のくだり、実はしっかりとした伏線が張られているので忘れないでほしい。

最後までシビアで、かつシリアスな展開が待ち受ける本作は、どこかバカっぽい演出も随所に垣間見える。一見すると真面目なテーマだが、よーく観るとツッコミどころが満載の本作。「お前は何をやっているんだ」と勝手にダメ出しを入れつつ、ツッコミどころを探しながら気楽に観るべき作品なのだ。決して大真面目に観てはならない。

あの有名俳優に似すぎなキャストたち

ペイジの父ゲイリー、演じるのはドラマやテレビ映画などで活躍するジェレミー・ロンドンだ。日本ではあまり馴染みのない彼だが、本作の彼はどことなく少し太ったロバート・ダウニー・Jr.にも見えてしまう。髪型や口ひげの感じからしても非常によく似ているし、「ちょっと意識しているのでは?」と思えてならない。なんならロバート・ダウニー・Jr.だと思って最後まで観てもいいんじゃないだろうか。

それを言えば、ペイジ役のブルック・マッケンジーも『デッドプール』(’15)のモリーナ・バッカリンによく似ていると感じた。なんなら、ロバート・ダウニー・Jr.とモリーナ・バッカリンの共演作として、勝手に妄想でもしながら楽しんでしまえばいいのだ。

本作はテレビ映画として制作され、映画館で上映される類のものではないため、殆どのキャストは日本において無名だ。このように、似ている俳優を探して勝手な妄想で楽しむ、といったことも、先入観のない無名俳優だからこそできる楽しみ方だ。それもまた一興ではないだろうか。

また、このほかにも、『ファイナル・デッドコースター』(’06)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』(’10)のジーナ・ホールデンや、『暴走機関車』(’80)、『ダークナイト』(’08)のエリック・ロバーツなど、名の知れた俳優たちも多からずキャスティングされている。

ディザスター映画の醍醐味もしっかりと演出

(C) 2013 Odyssey Media Inc.
(C) 2013 Odyssey Media Inc.

ある日、ペイジの父ゲイリーは陸上部の会合のためバスを走らせていた。学校の校長を務める父ゲイリーが自ら運転する黄色のスクールバスは、突如として現れた巨大なシンクホールに飲み込まれる。予算の都合上かCGが非常にチープで、陥没に飲み込まれていく演出もやけにシュールだが、そこも本作の魅力として楽しむべきなのだろう。

穴に落下したスクールバス、後半はその車内に閉じ込められた10代のメンバーによる、ある種の密室劇が展開する。緊迫した状況がひしひしと伝わる一連のシーンからは、ディザスター映画の醍醐味をしっかりと感じ取ることができる。本作はここからが本番と言えるだろう。シンクホールに落ちたバスは激しく損壊しており、乗っていた生徒も泥だらけ傷だらけ、いがみ合いつつもなんとか脱出を図る演出など、まさにディザスターな雰囲気をきちんと醸し出しているのが高ポイントだ。

バスの車内で繰り広げる10代の若者らしい奮闘ぶりは、非常にリアルで現実味を帯びた演出だったし、先の読めない展開には自ずと引き込まれてしまった。死者の声が聞こえてくるという謎のオカルト要素があったり、割と重要そうな人が無駄に死んでいくなどといった、真面目なのか不真面目なのか、イマイチよく分からない作風ではあるが、そこが本作の特徴なのだと割り切ってしまえば、これがまた楽しめる。もっとも、非常に評価の難しい映画ではあるが、B級映画ファンならば是非一度ご覧いただきたいと思う。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ZJoU8VaEl54?ecver=1&w=1280&h=720]

【デジタルスクリーン】ウェブサイトはこちら

【地盤沈下 シンクホール】上映ページはこちら

※デジタルスクリーンは現在パソコンでのみ視聴可能です

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Writer

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Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。

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