Menu
(0)

Search

誰もがメディアに取り込まれる!鮮烈な映像と音楽、スペイン発SFファンタジー『ネクソス』が衝撃的すぎる

もし自分の生活が、マスメディアによって全て操作されているとしたら……。考えてみると恐ろしい話だが、他人事だと笑いとばせるようなことではないのかもしれない。今回ご紹介したいのは現在デジタルスクリーンで公開中、スペイン発のSFファンタジーネクソスだ。 

映画『ネクソス』あらすじ 

ある不気味な部屋に集まっている、真っ白な服に身を包んだ謎の人々。彼らはスクリーンを眺め、どうやら人間を選別しているようだ。

そして所変わって、ごく普通のスペインの街並み。女子大生の主人公はある日、見ていたテレビの映像が自分を映していることに気づき、うろたえる。そして徐々に彼女の身の回りに奇妙な出来事が連発し始め、事態は思わぬ方向に……。これは何者かに自分たちの様子を監視され、テレビとマスメディアによって生活を操作されるようになった世界を描いた物語だ。 

ネクソス
(C) All Rights reserved by New World Cinemas, inc.

自分の生活が実はテレビ番組によって操作されていたものだった、自分の身の回りのことは全て番組内で仕組まれていたことだった、という話には聞き覚えがある方も多いだろう。1998年公開、ジム・キャリー主演の『トゥルーマン・ショー』だ。ごく普通のアメリカ市民であるトゥルーマンの人生は、実はテレビ番組“トゥルーマン・ショー”として国中に放送されていた、という物語である。

しかし『トゥルーマン・ショー』が自分の本当の人生を探すトゥルーマンの姿をコミカルに描いているのに対して、『ネクソス』は全く異なった雰囲気である。派手派手しさはなく、冷たくひんやりとした雰囲気が漂う、まるでホラー映画のような世界観の作品だ。  

 鮮烈なヴィジュアル、テクノ・ミュージック  

 『ネクソス』の本編が始まった瞬間から、あなたはきっと「スタイリッシュな作品に出会った」と感じるはずだ。ダーレン・アロノフスキー監督による映画『π パイ』を思い出させるような、脳内に響き渡るテクノ・ミュージック。そしてチカチカとフラッシュするモノクロの映像、浮かび上がる『NEXUS』というタイトルロゴ。

オープニングが終わったかと思えば、場面は研究施設のような場所に切り替わる。まるで宇宙船の中のような真っ白な部屋に、同じく真っ白な衣装に身をつけた仮面をつけた人物たち。彼らは何やら会議をはじめ、画面に浮かび上がる女性たちを選別していく。 

ネクソス
(C) All Rights reserved by New World Cinemas, inc.

研究施設以外の画面も全てどんよりとしていて、その色彩には全くあたたかさが感じられない。近未来を描いている作品といえど、決して綺麗とはいえないその街並みや生活感あふれる部屋の装飾、人々の身なりがリアリティを演出している。陰鬱なブルーがかったような映像、そして時折流れだす似つかわないほど刺激的なテクノ・ミュージック。そのストーリーの緩急の激しさに、安全かどうかもわからないジェットコースターに乗せられているような気分になってしまう。ただスタイリッシュなだけではない、ゾッとする“何か”が劇中にずっと潜んでいる作品なのだ。 

「いつの間にか、メディアの中に取り込まれている」 

タイトルでもある“NEXUS”とは、英語で「結び、連結」という意味である。

誰もが知っている通り、今の社会にマスメディアは必要不可欠な存在である。誰もが携帯電話を持ち、家にテレビがあり、いつでもどこでも情報を手にすることができる。若い世代にとってはSNSも欠かせない! ネットワークの中には本当の自分とはちょっぴり違う自分が存在しており、小さなスマートフォンの中ではもう1つの社会が完成されていると言ってもいいだろう。

もしかしたらSNSでの世界の方が、自分の本当の生活よりも華々しい……という人もいるかもしれない。TwitterやInstagram、そこで飛び交うたくさんの情報に誰もが操られているのかもしれない。無意識のうちに誰もが、マスメディアによって扇動されているのかもしれない。 

ネクソス
(C) All Rights reserved by New World Cinemas, inc.

「マスメディアに踊らされてはいけない」、そのような風刺を描いた作品は映画に限らず多々ある。

この『ネクソス』も、テレビや携帯と“連結”しすぎた人々を描いた風刺映画だ。しかしこの映画のラストはあまりにも衝撃的で、残酷で、おそろしい。「知らず知らずのうちにマスメディアに取り込まれると、その先に待っているものはこれだ」と、無情にも私たちに突きつけてくる。人間味が感じられない映像、日常風景と入り混じる虚構の世界、近未来の人々が目撃するその異形な“モノ”……。『ネクソス』は私たちに得体のしれない恐怖の余韻を植え付ける、そんな風刺映画なのだ 

スペインからやってきた斬新なSFファンタジー『ネクソス』。何度でも観たくなる、新しい発見をしたくなる難解なストーリーもその魅力のひとつだ。れでもかとばかりに視覚を刺激されたい! テクノ・ミュージックに痺れたい! ゾッとする異様な世界観につつまれたい! そんな時にぜひ、よく目を凝らしながらご覧いただきたい。 

映画『ネクソス』はオンライン上の映画館「デジタルスクリーン」にて上映中

【デジタルスクリーン】ウェブサイトはこちら

【ネクソス】上映ページはこちら

※デジタルスクリーンは現在パソコンでのみ視聴可能です

(C) All Rights reserved by New World Cinemas, inc.

Writer

アバター画像
Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)