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『DUNE/デューン』レベッカ・ファーガソン、巨大すぎるセットで迷子に ─ 撮影からオフ時まで、「恋した企画」の経験を語る【インタビュー】

DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

世界中の映画ファンから長いこと期待されてきたSF超大作がついにやってくる。その莫大すぎるスケールゆえに、映像化が最も困難なSF小説と言われ続けてきたフランク・ハーバートによる同名の一大叙事詩を現代で映画化した、『DUNE/デューン砂の惑星』だ。21世紀、ヴィジョンにテクノロジーが追いついた今、新たに映像化に挑んだのは、『メッセージ』(2016)や『ブレードランナー 2049』(2017)などで知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だ。

公開を直前に控えた今、その魅力を最大限に味わってもらうため、THE RIVERでは封切り前日(10/14)までの4日間で、監督&主要キャストとのインタビュー、そして複数の上映フォーマットを体験した筆者による映画レビューをお届けしていく。第2回は、修道女ベネ・ゲセリットであり、主人公ポールの母親でもあるレディ・ジェシカを演じたレベッカ・ファーガソンのインタビューレポート。『DUNE/デューン』との出会いから撮影地でのハプニング、砂漠での思い出などをいきいきと語ってくれた。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

『DUNE/デューン』との出会い、鳥肌が立った出来事

── あなたは原作のファンでしたか?レディ・ジェシカという役にはどのようにして取り組んだのでしょう。

正直に言うと、私は原作のファンではなかったんです。小説を読んでいなかったので。私のエージェントから、「ドゥニ・ヴィルヌーヴが、次のプロジェクトについてあなたと話したがっているけど、興味はある?」と言われました。私は「興味ある?」って言われるのが大好きなんです。私は「イエス。もちろん。今すぐに」って答えました。

それからドゥニは、彼の“ラブ・プロジェクト”について私に話してくれました。『DUNE』自体はもちろん聞いたことはありました。たぶん、前の(デヴィッド・リンチ版)『デューン/砂の惑星』も少し観たことがあると思うんですけど、私の心にはそれほど響かなかったんです。それでも私は、ドゥニによる夢の『DUNE/デューン』に、1時間半も浸りました。電話を終えて、受話器を置いた時は、「私はきっとこの役をもらえない。これをもらうのはあまりに現実的じゃない」って思いましたね。でも翌日、彼が私に電話をしてきて、この役をもらえたんです。そして、私はその世界に入った。

── 撮影について、あなたが好きだった経験をいくつか話してもらえますか?

気に入っていただけて嬉しいです。私もこの映画が大好き。あまりに大好きだから、この質問について話せて純粋に嬉しいです。でも、多くの人々がまだ観ていないから、私は我慢しないといけないんです。私は、(あまりに好きだから)そういう切迫感で、皆さんにストーリーや、どういうものなのかを無理やりにでも話してしまいたいくらいなんです。

私はティモシー(・シャラメ)の後、2番目にキャスティングされたと思います。それから徐々に、ドゥニが電話をしてきて、「この人が出演することになったよ」と教えてくれて。名前に次ぐ名前、キャラクターに次ぐキャラクターを。シャーロット・ランプリングが(ベネ・ゲセリットの教母役で)キャスティングされた時の私なんて、「そんなのあり得ない」って思いながら、全身に鳥肌が立ったのを覚えています。

私は世界で最も素晴らしい人たちと仕事をしてきましたし、今もそう。それでも、このアンサンブル(・キャスト)がそろった時に私が見せた反応には、自分でも驚いているくらいです。毎日セットにいるのは本当に素晴らしかった。みんなが全く違うふうに演技したから。主流(の演技)というものはありませんでした。誰も、何も証明する必要がなかった。誰もがただ彼ら自身でいて、彼ららしくあればよかったんです。そして、ちゃんと仕事をしないといけなかった。

迷子になった巨大なセットでの経験

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

── あなたとティモシーのシーンはたくさんあります。母親と子の関係は、ストーリーが進むにつれて起こる変化の一つです。キャラクターを作っていく過程で、母子の関係をどのように築いていきましたか?

複雑な関係なんです。第一に、ティモシーはこの上なく素晴らしかったです。彼は才気あふれていて、独自のテクニックを持っている。ドゥニが監督としてとても素晴らしかったことは……彼にはエゴがないんです。だから、彼は自分の考えを押し付けることはせずに、後ろに下がっているだけ。そして、私たちを見ている。彼は、私たちみんながそれぞれのやり方で仕事をすることを知っていました。ここにいる皆さんがそうであるように。だから彼は、それぞれの人に合わせて演出を調整していくんです。

私とティモシーの関係については、マエストロによって必要に応じて作られたみたいな感じです。まるでパペットマスター(人形遣い)に動かされているみたいに。でも、そこには何の糸もなくて。私たちは、やりたいことを出来ました。フレームの中で。難しかったけれど、特に私が大好きだったことは、恐怖のパワーの変化、そして誰が誰を教えているのかということの変化でした。その変化はいつ起きるのか?私たちは常に、全てのシーンを新しいシーンとして取り組みました。

── ちょうど今言及されていたように、レディ・ジェシカはポール(ティモシー)の母であり、導く師でもある役どころでした。この作品に参加してから、リサーチはたくさん行いましたか?

私は、関連する全ての書籍は読みませんでした。本を読んで、他のことをして、また元に戻って読む、といったことをしました。ドゥニが「読んでみて?」と勧めてくれた本を読むとか。ほとんどの準備は、肉体的なものとか、体についてのものではなかったです。この映画では、そういうことには興味深く思えなかった。私にとって興味深かったのは、精神状態についてでした。私は、人間としてとても外向的なタイプ。だからこそ私がやらないといけなかったのは、勉強することではなくて、後ろに引いて(演技の)プロセスを信頼する可能性を自分の中で活用することでした。それがジェシカのためにやったことでした。

彼女は、目立たないように後ろに立っている。なぜなら、表に立つ人である必要はないから。彼女は、他のすべてのものより、もっとずっとすごい存在なんです。大切なのは、彼女のテクニックのどれを、いつ作動させるのか、そしてその瞬間を知るということでした。私は母親なのか?私は(誰かを)守っているのか?または、私は叱っているのか、警告しているのか、それとも受け入れているのか?そういうことを考えることが楽しくて。同時にチャレンジングでもありましたけど。

『DUNE/デューン 砂の惑星』
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

── あなたが初めて『DUNE/デューン』のセットやあの世界に足を踏み入れて、実際に存在するものを見た時の経験について聞かせてください。

とてもリアルでした。ほとんどの物はCGによって再現されたものじゃなかったです。(ハンガリーの)ブダペストで、彼らはすべての部屋を実際に細かいところまで作り込んだんです。映画の中には極端なミニマリズムもありました。家具もたくさんはありませんでした。壁には、牛の頭以外何もなかったかな。でも、物質主義を必要としてはいなかったんだと思います。目的に役立つ建物がただあるだけ。

初めてセットを歩いていて、迷子になったのを覚えています。助監督の1人が私を追いかけてきたので、「私は大丈夫。ここに浸りたいから」って言ったんです。それから彼女を見失ってしまった。その日から、彼らは私のことを1人にしてくれなかったです。彼らは私にレーダーまでつけて。それから、ワディ・ラムやアブダビでもそう。一方で、私はとても幸運でした。オーニソプター(羽ばたき式飛行機)のヘリコプター・シーンは、とても美しくて。とても気に入っています。トンボのかたちをしているんです。

── 壮大な世界観を持つ『DUNE/デューン』を映像化することにチャレンジした監督とのお仕事はいかがでしたか?

(しばらく考えた後)私とドゥニの関係を作ったのは、彼との最初のミーティングだったと思います。子どもみたいな人が出てくるのを見た時です。ドゥニはまるで少年みたいなんです。12歳の少年みたいで(笑)。私がなぜニヤニヤ笑っているかというと、私はこの映画に恋をしているから。このプロジェクトに恋をしている。どんなにひどい批評にも傷つくことは絶対にない。だって私はこれを経験したんですから。

彼は、全てのクリエイティブ・ルームにいましたね。衣装合わせにも。私たちが着る全てのドレスはコミュニケーションのようなものだと思います。私が身につけたチェーンも、人々とのコミュニケーション。私が着ている全てのものには、理由がある。もし(ドゥニの)大ファンなら、そういうことを知っているでしょう。皆さんは、その絶妙さを劇中で見ることになる。でも、あからさまである必要もなくて。ある人は「あ、わかった!彼らは“葉っぱ”でコミュニケーションしているんだ」となるかもしれない。とにかく、ディテールがある。そして愛が。そういうものが巨匠を生み出す。彼の話し方とかもそうですね。

仲間と駆け下った広大な砂漠

DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

── 『DUNE/デューン』は砂漠で撮影されました。砂漠で撮影している時、どういうことをするのが好きでしたか?プールに飛び込んだり、美味しい食事をしたり?

そういう質問好きです。私たちみんなで車に乗って、砂の中をドライブしました。丘をとても速く登ったり下ったりして。たぶんそれは、私の契約書に含まれていなかったこと。訴えても良いですよ(笑)。

でもとにかく、本当に素晴らしかった。それからこういうことがあったのも覚えています。とてもバカバカしい話なんですけどね。旅先のひとつが(ヨルダン南部の)ワディ・ラムだったのですが、たぶんガイドの人は、私たちが誰か知らなかった。私が飛び出すと、彼(ガイド)は「おいで、おいで。あそこにある岩を見て」と言ってきました。私が「ええ、素敵な石ですね」と答えたら、彼は「あれは、マット・デイモンが『オデッセイ』を撮影した時に座った岩なんですよ」と教えてくれたんです。「違う違う、そういうことは知りたくない!」って思いました(笑)。私の頭の中で、そこは別の場所だったのに(笑)。

それから、その時「私たちが何者で、どんなスケールなのかは関係ない。私たちの想像力はとても生き生きしている」と考えたのも覚えています(笑)。そのあとに、(ガイドが教えてくれた)岩の上に座りました。あとは、砂の上を登ったり下に降りたり、トレッキングをしたりしました。真夜中に1人で歩いて、星を眺めもした。ボートもレンタルしました。スタントチームを連れ出して、みんなでスキューバダイビングをやったりして。私はダイビングをするんです。

── 彼らはみんなスパイス(砂の惑星アラキスで産出される香料、メランジのこと)を求めています。人をもっと賢くし、知能を高めるスパイスです。それは、とても良いメタファーのように思えます。あなたは実生活で、ああいうスパイスを使えると思いますか?

テンションが上がるスーパー・クールなコカインみたいに?もちろん。完璧ですね。

(参加していた一同、歓笑)

なぜなら、(スパイスは)そういうものだから。それは、啓発するはずのもの。私自身はとてもクリーンですよ。ドラッグはやりません。

── もちろんです。

ブラッドリー・クーパーの映画『リミットレス』を覚えています?私はあの映画のアイデアをすごく気に入っていました。馬鹿げているほど頭を良くしてくれる薬(NZT-48)を飲むというアイデアが大好きで。

「シンプルな映画ではない」

 DUNE/デューン 砂の惑星
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── 『DUNE』にインスパイアされた映画はたくさんあります。『スター・ウォーズ』や(ローランド・エメリッヒ監督の)『スターゲイト』など。こうした全ての映画が作られた今、観客がポール・アトレイデスのサーガを受け入れる余地があると思いますか?

イエスです!私たちの想像力というのはスゴいと思います。私は『スターゲイト』を観たことがないんです。私はインタビューで嘘をついて、観たことがあるとは決して言いません。『スター・ウォーズ』は素晴らしいと思う。『スター・トレック』は一度も見たことがなくて。サイモン・ペッグは、私がそう言ったことに対して、私のお尻を叩いてきました。それが人生というもの。そうでしょう?

でも私は、いつも誰かが何かを極限まで持っていこうとするのが大好きです。彼らは何かを作り出している。例えばこの映画では、皆さんが観に行って、女性の役割がどう関わっているのかについて考えてくれると嬉しいです。(小説が出版された)1965年当時のレディ・ジェシカというキャラクターの描かれ方に比べて、本作には平等がある。(1965年の)彼女はもっと側室という感じでした。

けれど私たち(『DUNE/デューン』)には、地政学がある。資源や原料といった、私たちが利用出来る水を作り出すスペーススーツ(スティルスーツ)がある。私が言ってることは間違っているかもしれません。こういうことは『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』にも存在していたのかもしれない。私にとっては新しいことなんです。そして、他の人々にとっても新しいものになるでしょう。私たちの精神の発展に対する好奇心には、決して終わりはない。そうでしょう?

── 本作で初めて『デューン/砂の惑星』の世界観を体験する人にとって、もっとも興味深いことはどういうところでしょう。

みんなが「ふむふむ」って顔をしているところ(を見るのが)が大好きです。私が惹かれることといえば、さまざまな要素が全て入っていることかなと。でも、それはとてもシンプルな関係の周りにあるもので。母と息子だったり、愛人だったり。私が演じているキャラクターは妻ではない。愛のためにどんな法律をも破った愛人なんです。

もし愛がたやすいなら、それはたやすい関係でしかない。でも、全ての側面に、大惨事の不快な音があり、それに繋がる結果がある。もっと多くのものを欲しがる人類のエゴであれ、強欲であれ、コカインであれ。マフィアの取り引きは、基本的に良い比較になります。まさにそういうことだから。お金であり、中毒となる。これには簡単な答えはないですが、(『DUNE/デューン』が)シンプルな映画ではないということは確かです。


10,190年、銀河系は分裂した。人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いたあとの世界では、ひとつの惑星をひとつの大領家が統治する身分制度が敷かれている。レト・アトレイデス公爵は、皇帝の命を受け、通称「デューン」と呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めていた。そこは、抗老化作用を持つ香料・メランジの唯一の生産地。一家には莫大な利益がもたらされるはずだったが、レト公爵を待っていたのは、メランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝の陰謀だった……。

『DUNE/デューン 砂の惑星』には、ハリウッドを代表する俳優陣が集結した。『君の名前で僕を呼んで』(2017)のティモシー・シャラメ、『スパイダーマン』シリーズのゼンデイヤ、『アクアマン』(2018)のジェイソン・モモア、アカデミー賞俳優ハビエル・バルデム、『アベンジャーズ』シリーズでサノスを演じたジョシュ・ブローリン、そして『スター・ウォーズ』続三部作のオスカー・アイザックと、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)のレベッカ・ファーガソンらが名を連ねている。ほか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのデイヴ・バウティスタや、『マイティ・ソー』『マンマ・ミーア!』シリーズなどの名優ステラン・スカルスガルド、『アントマン』シリーズや『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)などのデヴィッド・ダストマルチャンら、多彩な実力派が参加し、強力な布陣が揃った。

第3回は、アトレイデス家に仕える剣士にして、主人公ポールの兄貴分でもあるダンカン・アイダホを演じたジェイソン・モモアのインタビューレポートをお届けする。

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、2021年10月15日(金)全国公開。

▼ 『DUNE/デューン』鑑賞前はコレ

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    THE RIVER編集部THE RIVER

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