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人工知能と人類の未来とは?名作映画、そして『エクス・マキナ』『バイオハザード:ザ・ファイナル』から考える

早いもので、2016年もあと1週間足らずで終わろうとしています。みなさん、今年の抱負は無事達成できましたでしょうか? 心に響く映画にたくさん出会えましたでしょうか?

映画は娯楽であり、観る人の人生を豊かにしてくれるものであり、制作された時々の世界や人々の心情を表しているもの。「今だからこそ、この映画が作られたのかなあ」という作品や、「ひょっとしてこんな未来を暗示しているのでは?」「監督は私たちに何かを警告しているのでは?」と感じさせられる作品、そして、その内容があながち間違っていないような、“予知夢”めいた作品もありますよね。

恋愛、戦争、ビジネス、青春など、映画の題材は数多くありますが、私たちをワクワクさせてくれる作品のテーマとして、“宇宙人”“人工知能”は欠かせないと思います。

たとえば宇宙人を描いた映画の内容は、時代と共に移り変わってきました。宇宙人の存在を私たちに知らしめた1977年の『未知との遭遇』、宇宙人って友好的な存在なのかも?と思わせてくれた1982年の名作『E.T』。

逆に、1979年の『エイリアン』は宇宙人を恐ろしいものとして描いていますし、2009年の『第9地区』では、難民として地球にやってきた宇宙人が人間と争うようになる様が描かれていました。時代によって、また監督によって、宇宙人の描かれ方が変化していることが分かりますよね。

そこで今回はもうひとつのテーマ、現在科学者たちも警鐘を鳴らしている“人工知能”と映画の関係を考えていきたいと思います。

【注意】

本記事には、映画『エクス・マキナ』『バイオハザード:ザ・ファイナル』のネタバレがが含まれています。

これまでの映画と人工知能

1968年公開の伝説的映画『2001年宇宙の旅』、撮影技法やビジュアルなど、数々の謎に包まれたこの作品にも人工知能は登場していました。それが「HAL 9000」です。人工知能の研究が活発に行われていなかった時代に人工知能を登場させていたスタンリー・キューブリック、彼はやはり鬼才でしょう。

また、1985年に第1作が公開された『ターミネーター』シリーズでは、人類が生んだ人工知能スカイネットが人類を滅亡させようとしています。つまり、人工知能が脅威として描かれている作品なのです。

ところが2001年に公開された『A.I.』では、人工知能が男の子の姿をして登場します。彼は人類の脅威という恐ろしいものではなく、ひたすら家族の愛を求めている、そんな人工知能なのです。ここで私たちは「人工知能と人間が共存する日がくるのか?」「人工知能は恐ろしいだけではないのか?」という考え方を提示されています。

2014年の『トランセンデンス』では、人間であった科学者の意識が人工知能にアップロードされます。“人間の意識と人工知能の融合”、亡くなった人間の意識や感情や記憶を、もしも人工知能に託して蘇らせることができたなら……。哲学や倫理について考えさせられると共に、現代科学の進歩をも感じとることができる作品です。

http://www.cbc.ca/news/entertainment/film-review-transcendence-1.2614136
http://www.cbc.ca/news/entertainment/film-review-transcendence-1.2614136

『トランセンデンス』と同じ時期に公開された『her/世界でひとつの彼女』は、主人公と人工知能が恋におちるという斬新な内容です。感情が無いはずの人工知能と真剣な恋愛ができるのか? 本当にこんな未来が訪れるのか? ファンタジックなラブストーリーですが、どこかリアルで、ちょっぴりこのような世界が想像できてしまう。人工知能がどんどん身近な存在になってきていることが読み取れます。

それでは、最新の映画は人工知能をどのように描いているのでしょうか? ここからは、2016年に公開された映画『エクス・マキナ』『バイオハザード:ザ・ファイナル』を例にあげながら、その内容を細かく見ていくことにしましょう。

『エクス・マキナ』

今年6月に公開された『エクス・マキナ』。美しい女性の顔とはうらはらに無機質な機械がむき出しのボディという、ぞっとする妖艶なビジュアルに惹かれたのですが、観終わったあとも底知れぬ不安と恐ろしさがつきまとう作品でした。

観終わってすぐの感想は、人工知能の怖さを今までで一番リアルに感じられる映画だな、ということでした。

本作に登場する人工知能エヴァは、とても美しく、人間に近い心を持っています。いや、ラストで自分の望みのため主人公の恋心を利用し、外の世界へと脱出する様子は人間の欲望そのままといったほうが良いかもしれません。またエヴァのほかに登場する、もうひとりの人工知能キョウコはセックスだってできる存在です。『エクス・マキナ』は、「人工知能と性」という、一見かけ離れているように思えるものが結びつけられた作品でした。

『エクス・マキナ』は、この人工知能たちを友好的な存在というイメージでは描いていません。人間を殺しますし、裏切りますし、恐ろしい印象を私たちに植えつけます。しかし人工知能たちの彼女たちは、本当に“悪”なのでしょうか?

http://deadline.com/2015/05/ex-machina-alex-garland-2000-screens-no-sequel-1201421795/
http://deadline.com/2015/05/ex-machina-alex-garland-2000-screens-no-sequel-1201421795/

エヴァやキョウコが住む研究施設で、人工知能の開発を行っている社長ネイサン。エヴァやキョウコに対する彼の扱いはなかなかひどいものでした。人間の見た目、人間と同等の知性や心を備えているにもかかわらず、人工知能の彼女たちに「こいつらは人工知能だから、機械だから」 といって横暴な振る舞いを行っていたのです。人間でもそんな扱いをされたら逃げ出したくなるのは当然でしょう。

私たちは無意識に、“人工知能=ヤバいもの、敵にまわしたら怖いもの”という考えを持っていると思います。だからエヴァが主人公を見殺しにして外の世界へ脱出するのを観ると、「やっぱり人工知能が進化するとこんなに怖いんだ……」という感想(本当に怖いんですけれど)を持つわけです。しかし『エクス・マキナ』は、逆に“人工知能を差別せず、むしろ尊重して上手に共存していけばいいのでは?”という解釈もできる映画だと思うのです。

『バイオハザード:ザ・ファイナル』

そして『バイオハザード:ザ・ファイナル』です。本作の序盤で仰天したのは、これまで主人公アリスの仲間を殺し、苦しめてきた人工知能・レッドクイーンが、世界を救うための情報をアリスに提供していること! 敵であったはずの人工知能がラストには味方についている。物語の展開のため……とはいえ、このことは人間と人工知能の未来の何を意味しているのだろう? 思わず考えさせられました。

かつて、2009年の『ターミネーター4』では、マーカス・ライトは人間とマシンのハイブリッドとして描かれていました。『her』では人間と人工知能の恋模様が描かれ、『エクス・マキナ』では欲望や性といった人間らしい題材を人工知能を通して描かれています。そして『バイオハザード:ザ・ファイナル』でのレッドクイーンの存在は……。

これまでは“脅威”であり、人間を超えた“よく分からないけれど恐ろしいもの”として描かれていた人工知能が、近年の映画では“上手に共存していかなきゃいけない”存在として描かれている、そんなメッセージを映画が暗示しているように思えるのです。

果たして来年は、どんな人工知能を扱った映画が公開されるのでしょうか? そして、人間とはどのような関わり方をしているのでしょうか? 映画も、私たちを取り巻く生活の変化も、今から気になるところです。

Eyecatch Image: https://www.fastcocreate.com/3043726/sxsw/alex-garland-film-ex-machina-uses-a-tinder-trap-at-sxsw
© Universal City Studios Productions L.L.L.P. 2014
© 2014 ALCON ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

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Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)

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