『フォールガイ』アクション手がけた浅谷康「こういうの、やっぱカッコいいっすよね」が通じる現場 ─ 映画の中の「スタントマンあるある」

とても面白かったですよ。もともとデヴィッドの作品が好きで、『ブレット・トレイン』もちょっとおしゃれな感じで好きだった。音楽の選曲だったり、音とスタントを融合させたりする雰囲気が好きですね。
──アクション映画ファンだからこそ気づいて欲しい、楽しんで欲しいポイントはありますか?
ビーチで車を転がす「カー・ロール」というシーンがあるんですけど、もともとの台本の中で「世界記録を破った」っていうのが書かれてたんです。それありきで始まってるんで、そこのプレッシャーをわかってほしい(笑)。

──現実でも本当に世界記録を更新するテイで撮影をしたということですか?(笑)
そうなんです、もともと更新するというストーリーが書かれていた。無茶振りですよね(笑)。もちろん87ノースが作るシーンで、監督もデヴィッドで、スタント・アンリミテッドから車のスペシャリストも来ているんで、もしも更新できなかったとしても、映画として成立はするんですけど。でも、そういうわけにもいかないだろうっていう現場のプレッシャーが結構すごかった。意地でもギネスを更新しなきゃないけないという雰囲気です。何回もテストして、いろいろミーティングして。僕は車の専門で入っていないんで、あのシーンにどっぷり浸かってはないけど、同じスタジオにいるんで、わー大変なんだろうなと思いながら見てましたね(笑)。

──この記事を読んでくれる人の中で、これからスタントマンになりたいっていう人がいるかもしれません。そういう子たちは、これから何をしたらいいですか?
スタントマンにもいろいろあります。車が好きな方は車やってたり、ファイトが好きな人とか、最近ではパルクールやってる子たちも、そこからスタントの道に入ってきたりするんで。結構人気が出てきています。今回の作品もそうだし、Netflixの作品にも日本の方がコレオグラファーでたくさん入ってたり、パフォーマーで入っていることが多くなっている。それこそ谷垣さんは、日本から何人も連れていろんな作品に入っています。やりたいと思う気持ちさえあれば、すごくいい時期だと思います。養成所もあるので、連絡してみたり、知り合いを探してみたり。スタントを目指す人にとっては、昔よりもいい時代になったと思います。
──英語はマストですか?
海外の現場入るなら、ベラベラに喋れなくてもいいけど、コミュニケーションはやっぱり取れた方がいいかもしれないですね。例えば、英語ができる谷垣さんは海外で重宝されています。日本でやって、海外の作品に出たいなっていうんだったら、英語を喋れるとアドバンテージにはなると思いますね。
──浅谷さんはどうやってスタントマンとしての現在地までに辿り着いたのですか?
僕はもともとダンサーでした。一番最初に携わった作品は、スティーブン・スピルバーグがエクゼクティブ・プロデューサーを手がけた、クイーンズランドとメルボルンで撮影の「ザ・パシフィック」(2010)という戦争ドラマ。そこでエキストラをやらせてもらうことになって。日本からも何人かスタントの方が来てたんですけど、10か月ぐらいの撮影の中で人数が足らなくなってちゃって。誰かバックスタントできる人いない?って言われて、じゃあ僕やります、みたいな。そんなノリです、最初は。そのままズブズブと入っていた感じです。
──そこからどんどん次の作品に呼ばれるようになり、チャンスを掴んだんですね。
そうですね。当時からブレイクダンスをやっていたので体には自由が効いた。地元の人たちに「そのままスタントやった方がいいよ」みたいに言われて、徐々にやるようになって、気づいたらこうなっていました。
──ブレイクダンスのルーツと格闘技や武道との出会いがどこかであったのかなと思うんですけれど、どこかで学ばれたのですか?
「ザ・パシフィック」が終わってメルボルンに帰ってきた時ですね。ジャッキー・チェンのスタントチームであるポールとブラッド・アランという2人がメルボルン出身で、きっかけがあってポールのところに練習に行かせてもらったんです。ポールは元々プロのキックボクサーなので、ずっとジムでキックボクシングを一緒にやっていました。中国武術はブラッド・アランの師匠のマスター・タンから学びました。
──ダンスをもともとやられていたので、武術の習得も早かったのでは?
早かったと思いますよ。プロのダンサーって、コレオグラファーから振り付けをパッと渡されて、「じゃあ来週ステージだから」みたいなことを、沢山こなさなきゃいけない。振りを即興で自分に移すことには慣れていました。やっぱりダンスができると強いと思います。これからスタント目指す子には、ダンスはおすすめですね。
──尊敬するスタントマンはいらっしゃいますか?
ジャッキー・チェンを観て育ったので、やっぱりジャッキー・チェンはすごいなと思う。それこそ、谷垣さんも尊敬しています。ジャッキーが黄金時代を築いて香港の映画を世界に広めたように、谷垣さんは日本のアニメをライブに落とし込んで、あのレベルに持っていったのは、スタントの教科書に乗るぐらいの革命だと思っています。谷垣さんはこの映画でも日本語字幕の監修をされているので、心強いですよね。
『フォールガイ』は大ヒット公開中。
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