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新作にも思わず期待!『ファンタスティックMr. FOX』で考える、ウェス・アンダーソンアニメの魅力

『グランド・ブダペスト・ホテル』でバズり、多くの日本人の間でも知名度をあげた監督、ウェス・アンダーソン。最近ではH&MのホリデーコレクションのCMを手がけた事や新作発表など、何かと話題を呼んでいる。 

現在製作中の彼の新作は、実写ではなくストップモーションアニメーション映画とのこと!

新作タイトルは『犬ヶ島』?日本的要素がキーとなるか

http://www.spin.com/2016/12/heres-your-extremely-brief-first-look-at-wes-andersons-new-animated-film-isle-of-dogs/
http://www.spin.com/2016/12/heres-your-extremely-brief-first-look-at-wes-andersons-new-animated-film-isle-of-dogs/

新作『Isle of Dogs(原題)』は犬が主人公となるアニメ映画であると、監督自身がvimeoに投稿した動画で紹介している。実は今作のコンセプトアートに、日本語で「犬ヶ島」という文字が記載されているらしい。しかも、ランドセルを背負った日本人風な少年のイラストも描かれている事から、どうやら日本との関係性がある作品となる可能性が高いのだ。

日本人のウェス・アンダーソンファンとしては、嬉しい限りではないだろうか。

豪華すぎる声優陣に注目

また、現段階で発表されている、『Isle of Dogs(原題)』に参加する声優陣は以下の通り(順不同)である。

  • 『ファイト・クラブ』のエドワード・ノートン
  • 『ブレイキング・バッド』のブライアン・クランストン
  • 『ゴースト・バスターズ』のビル・マーレイ
  • 『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』のジェフ・ゴールドプラム
  • 『ロスト・イン・トランスレーション』のスカーレット・ヨハンソン
  • 『グランド・ブタペスト・ホテル』のF・マーレイ・エイブラハム
  • 『フィクサー』のティルダ・スウィントン
  • 『スモーク』のハーベイ・カイテル
  • ジョン・レノンの元妻であり芸術家のオノ・ヨーコ
  • 『ターミネーター:新起動 ジェニシス』のコートニー・B・バンス
  • 『フランシス・ハ』のグレタ・カーウィグ
  • 『あの頃ペニー・レインと』のフランシス・マクドーマンド
  • 『ムーンライズ・キングダム』のボブ・バラバン
  • 『ウルヴァリン』のリーブ・シュレイバー

一体全体何が起きてこんなメンツが集結したんだ…!と、思わず呆然としてしまうほどの豪華さ。注目したいのは、スカーレット・ヨハンソン。以前、『her 世界でひとつの彼女』で人工知能役として声優を務めた彼女は、同作をもってローマ国際映画祭 最優秀女優賞を受賞している。世界一セクシーな声と絶賛された彼女が今回再び声優を務めることで期待が高まる。

また、今作には多くの日本人が参加する。オノ・ヨーコをはじめ、NYで役者として活動中の伊藤 晃、『ピクチャーブライド』のアキラ・タカヤマ、そして野村訓市だ。野村訓市は、クリエイターであり女優 佐田真由美の旦那さんなのだ!本人は雑誌『STUDIO VOICE』のクリエイティブ・ディレクターを務めるだけでなく、J-WAVEにてラジオDJとして活動もしている。アンダーソン監督、さすがコアな人選!

さて、新作は「犬」が主人公という事で、まだ具体的なテーマが発表されていないのだが、我々がこのアニメ映画に期待をしてしまう理由は、監督が以前手がけた「狐」を主人公にしたアニメーション作品で、大成功を果たしているからなのである。

そう、『ファンタスティック Mr.Fox』だ。

アンダーソン監督のアニメがなぜ魅力的なのか

『ファンタスティック Mr.Fox』は、ロアルド・ダールの『父さんギツネバンザイ』を原作とした、2009年公開のストップモーションアニメーション作品だ。

こちらもまた、ジョージ・クルーニーや、メリル・ストリープビル・マーレイオーウェン・ウィルソンと、豪華な俳優陣が声優として参加している。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=QnYPF7Uf-qw]

物語はこんな感じだ。

人間の農場主から食糧などを盗んで暮らすMr.フォックス。彼は妻もいて、人望が厚く(人じゃないけど)、所謂デキる男だ。しかし、子供が出来たので盗みから足を洗い新聞記者として働いていたものの、狩りの欲求など野生の本能が抑えきれずにまたこっそり盗みを始める。

するとついに堪忍袋の緒が切れた農場主たちが、フォックスも住んでいる動物達の居住地である丘を掘り返しはじめるのだ。生命の危機に直面した動物たちは、フォックスを筆頭に人間と真っ向勝負をはじめる。

余談ではあるが、この作品は人気アパレルブランドMAISON KITSUNÉ(メゾンキツネ)のクリエイティブ・ディレクター、ジルダ・ロアエックが「自分の大好きな映画」だと公言している。また、衣装協力の依頼がアンダーソン監督からあり嬉しく思ったものの、諸事情により断ってしまったと残念がってもいるのだ。

ジルダ・ロアエックをはじめ、多くのクリエイターに愛されているこの作品。彼らをどのように魅了しているのか、その理由を探っていこう。

ストップモーションアニメというクリエイティブ

http://filmexperience.blogspot.jp/2010_03_01_archive.html
http://filmexperience.blogspot.jp/2010_03_01_archive.html

現在はCGが主となっている中、ストップモーションアニメという古き良きアナログ感がまず魅力のひとつ。CGと比べて、よりスピリットがこもっていて、表情豊かで温かみのある狐やオッポサムが可愛らしく、チャーミングなのだ。

ストップモーションは、ご存知の通り人形を少しずつ動かしながら撮影をし、それを連続撮影することで動いているように見せるコマ撮り技法のことである。つまり、とんでもなく膨大な作業時間が要されるのだ(この作品は構想10年、製作2年!)。

そのクリエイティブ魂は、クリエイターに限らず多くの人を関心させるはず。

Mr.フォックスというカリスマ

http://artrix.co.uk/whats-on/all-shows/fantastic-mr-fox/#gallery
http://artrix.co.uk/whats-on/all-shows/fantastic-mr-fox/#gallery

とにもかくにも、主人公のMr.フォックスがスーパースマート!狐なのに、いっちょまえにスーツを着こなし、口が上手い(ん?狐だから口がうまいのか?)。担当声優がジョージ・クルーニーというのもズルいくらいにマッチしている。

冷静沈着で、ヴィジョンが明確、自分がやると決めたことは絶対に信念を曲げずにやり遂げようと常に努力する姿はマジで良い男、いや良い雄ギツネだ。

しかも冷静なだけでなく、お喋りで飄々としていて、ウィットに富んでいる。憎みきれない、なんだかかっこよくて憧れてしまうような魅力的なキャラクターだ。

また、どこか『ゴッドファーザー』のドンを彷彿させるような、「リーダー気質だけど、人に何かをしてもらったら必ず感謝を伝える」フォックスの性格も、魅力の大きなパートとなっているだろう。

同じく魅力的な雄ギツネとして『ズートピア』のニックがいるが、こんなお洒落で素敵なアニマルキャラは、後にも先にも彼を超えるものはいないと信じている。

大人が楽しめる内容

https://www.imagejournal.org/arts-and-faith-films/
https://www.imagejournal.org/arts-and-faith-films/

アニメーション作品でありながら、どこか大人向きな内容が特徴的な今作。主人公Mr.フォックスは男であり、夫であり、同時に父である。家族を、そして周囲の動物を自分が守ると危険を顧みず、前進していく。しかも同時に、雄としての威厳を保つため、自分のプライドを守る戦いも行っているのだ。

同じ状況下にいる男性であれば、このキャラクターに自分を照らし合わせ共感してしまうはず。

注目したいのはMr.フォックスだけではない。内緒で盗みをして家族を危険に晒した事はしっかり叱る、しかしそんな彼を変わらず信じ続け支える妻、Mrs.フェシリティー・フォックスという存在。そして周りの狐より小柄で、どこか変わっている思春期の卑屈な息子アッシュ。

彼は、映画の前半までは人に褒められないと地団駄を踏み、自分に自信が持てない。しかし、後半では「変わっていてもいい、あなたの父親もそういう人だ。そしてそれが、とてもファンタスティックな事なんだ」と説かれて自己肯定がようやく出来るようになり、成長する。

 

このような、どんな立場の人が見てもどこか共感でき、発見・学びに繋がるストーリーこそが、この映画の最大の魅力ではないだろうか。脚本を手がけたノア・バームバックは、不器用な人間が少しだけ成長しながら奮闘する物語を得意とした脚本家であり、彼自身が監督する映画作品にもその色は強く反映されている。

アンダーソン監督に話を戻すと、今作は家族の絆や信頼の重要性を描いたという点で、『ダージリン急行』に通じるものがあるかもしれない。

また、テンポの良さも素晴らしい。ウェス・アンダーソン監督は独特なテンポでストーリーを運ぶ特徴がある。『ムーンライズ・キングダム』のようなスローテンポで超ほっこり平和作品もあるが、この映画はどちらかというと『グランド・ブダペスト・ホテル』のようにテンポが早く、場面の切り替えもサッサと行われるものなので、決して飽きる事がなく楽しめるのだ。

音楽の良さ

http://sgnewwave.com/main/2016/05/sgnewwave-presents-fantastic-mr-fox-2009/
http://sgnewwave.com/main/2016/05/sgnewwave-presents-fantastic-mr-fox-2009/

そしてなんといっても、サントラが最高にクール!映画音楽を手がけたのは、アンダーソン監督と何作もタッグを組んでいる作曲家アレクサンドル・デスプラ

近年公開作品に共通する“アンダーソンっぽいBGM”は彼によるもので、その他に今作ではザ・ビーチ・ボーイズローリング・ストーンズと最高なロック楽曲に加え、フランソワ・トリュフォーの数多くの作品を手がけた作曲家ジョルジュ・ドルリューのサウンドも含まれている。

このサウンドトラックは批評家の間でも評価が高く、映画を観て気になった方は必聴ものだ!

 

アカデミー賞長編アニメ映画賞および作曲賞にノミネートされるなど、まさに優秀作品である『ファンタスティック Mr.フォックス』

ウェス・アンダーソン監督は、新作の『Isle of Dogs(原題)』では一体どのような形で我々を魅了してくれるのだろう。

source:http://eiga.com/news/20161227/11/
2015年発刊POPEYE6月号
Eyecatch Image:http://www.cinepremiere.com.mx/36650-12-datos-de-la-filmacion-de-el-gran-hotel-budapest.html

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ANAIS

ライター/編集者/Ellegirlオフィシャルキュレーター、たまにモデル。ヌーヴェルヴァーグと恐竜をこよなく愛するナード系ハーフです。

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