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【ネタバレ解説】『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』クリーデンス、エズラ・ミラーが考察 ─ 真実は誰が知っている?

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
© 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Wizarding WorldTM Publishing Rights © J.K. Rowling WIZARDING WORLD and all related characters and elements are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc.

様々なドラマが交錯し、およそ想像しなかった衝撃的展開で世界中のファンに驚きと興奮をもたらしている、シリーズ第2作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が大ヒットだ。2018年11月23日より日本公開となった本作は、週末動員数ランキングで堂々の1位スタートを切っている。

本作では実に様々な展開が用意されていたが、中でも注目しておきたいのはエズラ・ミラー演じるクリーデンス・ベアボーン。シリーズ前作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)でも大筋のマクガフィンとなったが、引き続き今作でも重要な役割を担っている。

共演のクローディア・キム(ナギニ役)にして「『ハリー・ポッター』の歩く百科事典」と呼ばせるほど同シリーズのオタク的知識を持つエズラは、今作におけるクリーデンスのドラマをどう捉えたのか。米Thrillistのインタビューでは、思慮深い語り口でたっぷりと考察している。

この記事には、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の重大なネタバレ内容が含まれています。必ず本編鑑賞後にお楽しみください。

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Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C)J.K.R.

制御不能となるほど強大な魔力を秘め、やもすれば危険この上ない存在である”オブスキュリアル”であるクリーデンスは、前作『魔法使いの旅』からの再登場。出生不明のクリーデンスは反魔法主義の差別的な養母メアリー・ルー・ベアボーンから繰り返し虐待されており、ついに制御が効かなくなった魔法でメアリー・ルーを殺害。トラウマを抱えるクリーデンスは、本作で自らの出生の謎に迫っていく。

クリーデンスの正体、アウレリウス・ダンブルドアとは本物か

本作『黒い魔法使いの誕生』の終わり、”黒い魔法使い”グリンデルバルドのスピーチに心を動かされたクリーデンスは、グリンデルバルドの真の信奉者のみが潜り抜けられる青い炎を通り、闇の陣営に加わる。そして隠れ家に戻ったグリンデルバルドは、クリーデンスが世話をしていた鳥の雛が、ダンブルドア家と繋がりのある不死鳥だと告白。クリーデンスの兄弟が命を狙っていると伝えた上で、彼の正体がアルバス・ダンブルドアの兄弟アウレリウス・ダンブルドア(Aurelius Dumbledore)だと明かしたのだった。

グリンデルバルドは嘘を言っている?

これは本作における最大の衝撃のひとつとして、世界中のファンの間で多くの議論を呼んでいる。果たしてグリンデルバルドが伝えたことは真実だったのだろうか?身を守るためにダンブルドアを倒さなければならないと耳打ちしたグリンデルバルドは、オブスキュラスのクリーデンスを利用し、手の平で転がすために嘘を伝えたという可能性はないか?

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
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Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights ©J.K.R.

Nerdlistも、そう考えているようだ。同メディアは、「これはとんでもない嘘だ」と考察している。本作『黒い魔法使いの誕生』の原題は「The Crimes of Grindelwald (グリンデルバルドの罪)」であるが、クリーデンスへ嘘を言い伝えたことこそが、原題が指す「グリンデルバルドの罪」であると指摘する。

グリンデルバルドは、自身よりも強力な魔法使いであるダンブルドアとは”血の誓い”を交わしており、互いに戦えないことになっている。となれば、打倒ダンブルドアのためには自分以外の戦力が必要であり、そのためにクリーデンスに嘘の大義名分を与えたという説だ。「でも、不死鳥は?それはグリンデルバルドが魔法で見せた幻想だろう」と同記事。なるほど、そう考えれば合点がいく。

クリーデンスの素性は本当にアウレリウス・ダンブルドアなのだろうか。次回作の公開はまだ2020年11月20日(米予定)とずいぶん先だが、我々ファンはそれまで真実を待たなければならないのだろうか。米Thrillistは、実際のところをエズラ・ミラーにインタビューで尋ねているが…。

エズラ・ミラーの考察

やはり、返答は「知りません。本当に知らないんです。真実かどうかもわからない」とのことだ。演じるエズラ自身も現在は考察の真っ只中にあるようで、「確かに(グリンデルバルドは)信用なりません。だって、”より良いもの”のために、何でも言うような人じゃないですか。自分の利益第一だし、本当に、本当に信用できない」と混乱している。「誓って言いますが、誰も本当に何も知らないんです。J.K.ローリングの進め方を考えると、おそらく苦い終わりを迎えるまでは真実として扱われるんだと思いますけど。」

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
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今のところ全ての答えは、創造主J.K.ローリングの頭の中にあるのみ。他に知っている人は?エズラによれば、本映画シリーズを手がけるデヴィッド・イェーツ監督が最も多くのことを知っており、キャストの中ではダンブルドア役のジュード・ロウが一番知っているという。エズラはここで『ハリー・ポッター』から引用した比喩表現をしており、「イヴァナ・リンチ(ルーナ・ラブグッド役)が誰も知らないようなことを知っているみたいな感じ。多分、特定の人は選ばれているんだと思う。ルーナ・ラブグッドは『ザ・クィブラー』に記事を書いていたし、誰も知らないようなことを知っているから」と語っている。(『ザ・クィブラー』とは『ハリー・ポッター』シリーズに登場する雑誌で、ルーナの父が編集長を務めている。)

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自らもジェンダーの面で様々な偏見に対峙するエズラ・ミラーは、傷とトラウマを抱え、自身のアイデンティティを探る青年クリーデンス・ベアボーン役を誰よりも理解し、心から演じられる唯一の俳優だ。本作『黒い魔法使いの誕生』ではグリンデルバルドにまんまと操られたクリーデンスだったが、エズラはその信条操作のからくりを深く理解している。同インタビューでエズラは、「人として目的を見出し、アイデンティティを明かそうともがく時、僕達は道徳的な誠実さを犠牲にしてしまう。そして妥協して、与えられたアイデンティティを受け入れるために、本来兼ね備えているはずの自由な個性を差し出してしまう」と語っているが、これはエズラから発せてこそ意義があり、クリーデンスという哀れなキャラクターに深く染み込んでいく。

僕は、人間ってアイデンティティを後から選んで自分に貼り付けて、縛られて生きているなってよく思うんです。だから本来兼ねているポテンシャルをもって成し遂げられるであろうことを妨げてしまう。分かります?これって、ISIS(イスラム過激派組織)とか兵士の徴募に近いと思うんです。基本的に、彼らはアイデンティティの欠如が残った人々だった。文化や家族、教育との現実的な繋がりが欠如していた。だから彼らは、(人生の)目的やアイデンティティに飢えていて、それで簡単に操られてしまうんです。究極の目的のために、彼らを駒に使いたいような人にね。

エズラは、クリーデンスは他人の戦闘のために駆り出された徴集兵のようだと例える。グリンデルバルドは、自らの歪んだ目的のためにクリーデンスのトラウマを利用したのだ。養母から虐待され、抑圧に苦しんだトラウマを。エズラの例えを借りるなら、やはりクリーデンスもグリンデルバルドにとって、便利な駒でしかないのは明らかだ。(何せ無情なグリンデルバルドは、前作『魔法使いの旅』でクリーデンスをいちど”用済み”として捨てているのだから!)

こうして人って、殺人者になって、モンスターになって、誰かにとっての敵になっていくんです。」エズラは続ける。「トラウマを利用し、信念を操ってしまう。誰かの信条を、敵を生むために利用する。時には戦争を永続させるという目的のためにも」との語りは、妙にリアリティを帯びていて不安になる。「分かりやすい歴史的戦法でしょう。」

その上でエズラは、『黒い魔法使いの誕生』で誰もが驚いた結末描写について、次のように例えている。

「拳銃を握らされて、”さぁ、これがお前だよ。お前はこの宗派とこの国の忠誠のための兵士なんだよ。こういう理由でお前は怒り、これがお前の敵だよ”と言われたようなもの。グリンデルバルドはクリーデンスに銃を与え、名を与え、そして敵を与えたんです。一度に。

こうしてエズラは、クリーデンスを兵士に例えた持論に帰結してゆく。「自分とは関係のない大義のために戦ったすべての兵士みたいじゃないですか。僕はそう捉えました。」あまりにも不穏だ。「まだ2作目だよ、ベイビー。(展開が)良くなる前に、もっと酷くなっていくはず」と続けたエズラよ、その真意とは一体…?

エズラ・ミラー、当初は誤った事実を知らされ混乱していた

ところでエズラは、クリーデンスがダンブルドアの家系であるという驚きの事実を、前作『魔法使いの旅』の製作を終えた段階で知らされていたのだという。最も、知らせ方に問題があり、エズラは間違った事実にずいぶん頭を悩ませていたようだ。

その時、エズラは プロデューサーのデヴィッド・ハイマンとバスに乗っていた。「今から君の正体を教えるね」と切り出したデヴィッドは、「君はダンブルドアの兄弟なんだよ」と伝えた。

むろん、「歩く『ハリー・ポッター』百科事典」と呼ばれるエズラである、ダンブルドアの兄弟と言われ、すぐに『ハリーポッターと死の秘宝Part 2』(2011)に登場した弟のアバーフォースが浮かんだ。「そんな馬鹿な、アバーフォースってことですか?」と驚いたエズラに、デヴィッドは間違えて「うーん、そうだよ」と答えてしまったのだ。

あまりにも辻褄が合わなかった。クリーデンスとアバーフォースでは人種も違うし、瞳の色も違うからだ。迂闊に間違った伝達をしてしまったデヴィッドは、そこでエズラの質問攻めに遭ってしまう。「えっと、待ってくださいよ。どういうことですか?僕のアクセントがイギリス英語になって、瞳の色も青くなるってことですか?」「デヴィッドさん、意味がわからないです。話が矛盾しちゃう。もうアバーフォースの子供時代は明かされてるんですよ。どういうことですか?全然意味がわからない。」哀れなデヴィッドは、「知らない、知らないよ。あーあ、言うんじゃなかった。ジョー(J.K.ローリング)に聞いてみてくれ」と答えるのがやっとだったようだ。

J.K.ローリングに絶大な信頼を抱いており、何よりも”ハリー・ポッター魔法ワールド”をこよなく愛するエズラである。まさかJ.K.がこんな初歩的な設定ミスをしでかすハズがないと、「一ヶ月はパニック発作を起こした」という。

そんなに長い間悩むのであれば、デヴィッドが言うように、早いうちにJ.K.ローリングに確認すれば良かったのではないか?エズラにそんなことは出来なかった。その理由というのが、まさにファンの鑑のよう。

「ジョーには連絡しませんでした。あの方の貴重なお時間が尊すぎたので。

エズラの誤解はいかにして解かれたのか?『魔法使いの旅』がプロモーション・ツアーを終え、エズラはプレミアのパーティーでJ.K.ローリングに会った。クリーデンスの正体をアバーフォースだと思いこんでいるエズラは、「デヴィッドさんに言われたことが意味分からないんですけど。どうやってイギリス英語になるんですか?どうやって瞳の色が青くなるんですか?逆転時計(『ハリー・ポッター』に登場する、時間が元に戻る懐中時計)を使うんですか?ストーリーラインが2つになっちゃいません?意味分かんないんです」とついに尋ねることができた。するとJ.K.は、そこでこう答えたという。

あら、デヴィッド・ハイマンがそんなことを言ったの?違うわよ、馬鹿ね。あなたはアウレリウス。

映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、2018年11月23日(金・祝)より公開中。次回作『ファンタスティック・ビースト3(仮題)』は2020年11月20日に米国公開予定。

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/

Source:Thrillist,Nerdist

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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