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オークワフィナ、アジア系女優初の快挙まで ─ キャリア総おさらい、ラッパーから『オーシャンズ8』そして『フェアウェル』へ

awkwafina オークワフィナ
A Photo by Casi Moss https://www.flickr.com/photos/158844663@N06/27789229497/

2020年、ハリウッド映画界におけるアジア・コミュニティの歴史が大きく2つ動いた。1つは、ポン・ジュノ監督が手がけた『パラサイト 半地下の家族』(2019)が作品賞・監督賞・脚本賞・長編国際映画賞の4冠獲得というアジア映画初の快挙を成し遂げたこと。そしてもう1つは、アジア系女優オークワフィナがルル・ワン監督作『フェアウェル』にて、ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門でアジア系女優として初の主演女優賞を獲得したことだ。

1990年代から映画監督としてのキャリアを築き上げてきたポン・ジュノ監督に比べると、オークワフィナの女優としてのキャリアは受賞時の2020年時点で僅か4年。驚くべきスピードでの活躍ぶりといえよう。それまでに『オーシャンズ8』や『クレイジーリッチ!』、『ジュマンジ/ネクスト・レベル』など、ハリウッドの大作映画に出演を重ねてきたオークワフィナとはいったい何者なのか。 THE RIVERでは、いまやハリウッドの最前線で活躍するオークワフィナのキャリアの始まりからこれまでの活躍を総おさらいすると共に、今後の出演作に関する情報をお届けしよう。

これまでのキャリア

1988年6月2日、アメリカ・ニューヨークにて中国系アメリカ人の父親と韓国系アメリカ人の母親の間に生を享けたオークワフィナ。本名はノーラ・ラム。4歳の時に母親を亡くしており、父親と祖母によって育てられた。

オークワフィナがエンタメ業界に足を踏み入れたきっかけは、自身が制作したラップ曲「My Vag」のミュージック・ビデオをYouTubeに投稿したこと。これを機に世間の注目を集め始め、2014年にデビュー・アルバム『Yellow Ranger』を発表している。いまや女優としてのイメージが定着しているオークワフィナだが元々ラッパーとしてキャリアを築いているのだ。

自身のミュージック・ビデオに出演していたオークワフィナが本格的な女優デビューを飾ったのは、セス・ローゲン主演のコメディ映画『ネイバーズ2』(2016)。「Mary + Jane(原題)」(2016)「Future Man(原題)」(2017-2020)など、ドラマ作品への出演を重ねたのち、オリビア・ミルチ監督作『エンド・オブ・ハイスクール』(2018)で長編映画デビューを果たした。

女優としての転機が訪れたのは、スクリーンデビューを飾って間もない『エンド・オブ・ハイスクール』後のこと。同作でのオークワフィナの演技を見た『ハンガー・ゲーム』(2012)などで知られるゲイリー・ロス監督が、自身の次回作『オーシャンズ8』に起用したのだ。米BuzzFeedによれば、ハリウッドを代表する人気シリーズにもかかわらず、当時まだ知名度の低かったオークワフィナはオーディションをすること無く出演が決定したのだとか。『オーシャンズ8』を皮切りに、オークワフィナはハリウッド女優への階段を上っていくこととなる。これ以降は、オークワフィナの代表作ごとに彼女の活躍を追っていきたい。

『オーシャンズ8』(2018)

オーシャンズ8
(c) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

オークワフィナが記念すべき初のハリウッドの大作映画で演じたのは、一級品の腕を持つスリ師コンスタンス。都会の雑踏が“職場”であるコンスタンスは、観光客を相手に手品を披露しながら次々にスリを働く。

サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム・カーターなど、一流のハリウッド女優が並み居る中、オークワフィナは引けを取らないユニークな存在感を発揮した。

『オーシャンズ8』で一躍その名を知らしめたことは言うまでもないが、どうやらオークワフィナ本人にとっても、同作への出演は忘れられない経験となったようだ。米国公開直後の2018年6月、米MTV Newsのインタビューに応じたオークワフィナは、「これまでの自分の人生で2018年がたぶん最高の年ですね」と喜びを伝えている。

『クレイジー・リッチ!』(2018)

クレイジー・リッチ!
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT

1993年公開の『ジョイ・ラック・クラブ』以来の、出演者全員がアジア系俳優で構成される映画作品となる『クレイジー・リッチ!』。映画史上においても特別な意義を持つそんな本作で、オークワフィナはコンスタンス・ウー演じる主人公レイチェルの大学時代の親友ゴー・ペク・リンを演じた。

本作には、コンスタンスやヘンリー・ゴールディングら、ハリウッドの大手スタジオ作品に初出演の俳優から、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)ジェンマ・チャン、「glee/グリー」(2009-2015)ハリー・シャム・ジュニアら、すでにハリウッドで名を馳せた俳優たちまで幅広い役者たちが出演している。こうした中、オークワフィナは大作映画への出演が2回目にもかかわらず、得意のコミカルさを活かした安定の演技を見せてくれた。

とりわけ、オークワフィナ演じるペク・リンの父親役として出演した、「コミ・カレ!!」(2009-2015)『ハングオーバー』シリーズなどで知られるコメディ俳優ケン・チョンとの息ぴったりの掛け合いは、さすがと言える面白さ。また、トレードマークの黒髪ロングのストレートヘアーから一転、金髪ショートにパーマというオークワフィナの変貌ぶりも楽しめる1作となっている。

『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019)

ジュマンジ/ネクスト・レベル
©2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved

ロビン・ウィリアムズ主演、1995年公開の『ジュマンジ』の続編シリーズの第2作。ドウェイン・ジョンソン、ケヴィン・ハート、ジャック・ブラック、カレン・ギランと個性の強いキャスト陣の中で、オークワフィナはゲームのキャラクターであるミン・フリートフット役を演じた。

大学生とおじいちゃんたちがゲームの世界に吸い込まれる『ジュマンジ/ネクスト・レベル』は、「誰がどのキャラクターになるのか」という仕掛けがキモのコメディだ。したがって、オークワフィナ演じるミンが現実世界の誰なのかを明かすことはご法度だろう。しかしながら驚かされるのは、おなじみの軽やかな演技をのびのびと発揮しつつ、彼女自身とはまるで異なるアイデンティティのキャラクターを体現した技術の高さだ。わずかな見せ場で人物の心理を観客に伝え、不意にほろりとさせる仕事ぶりは、“女優”オークワフィナのさりげない幅広さを証明している。

「この映画の大ファンだったし、新キャラクターということもあってナーバスだったんです」。2019年時点で女優歴3年とは思えないほどの演技を見せているオークワフィナだが、出演時はやはり緊張はしたのだそう。「でも、共演者の1人ひとりが私を受け入れてくれて、その緊張はすぐにほぐれました」と陽気な現場の様子を語っている

『フェアウェル』

フェアウェル
© 2019 BIG BEACH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

2020年ゴールデングローブ賞にてアジア系女優初の主演女優賞を獲得したこともあり、オークワフィナにとって思い入れが一際強いであろう1作。オークワフィナは、ニューヨーク在住、作家志望の中国系アメリカ人女性ビリーを演じた。ガンで余命3ヶ月と宣告された祖母ナイナイと最後に会うために中国へ帰郷し、幼い頃に過ごした故郷、そしてナイナイとの思い出を蘇らせていく。

これまでコミカルな役での出演を重ねてきたオークワフィナにとって、本作への出演は「かなり怖かった」という。「これまでドラマチックな演技をしたことがなかったですから」。一方で、幼い頃から祖母に育てられたオークワフィナは、自身の境遇と重ね合わせながら祖母ナイナイと触れ合うビリーを演じたのだそう。「自分を育ててくれた祖母に感じていた愛が、ビリーのナイナイへの愛と同じようなものだったので、本当の祖母のようにナイナイに接しました」と語っている。

米レビューサイトのRotten Tomatoesでは、批評家スコア98%、観客スコア87%と高評価を得ている。英Empireは作品を「2019年において最も愉快な驚きの1つ。大きくて温かい、愛のこもった映画で、そこには何の偽りもない」と表現。オークワフィナの演技についても、米The Hollywood Reporterは「繊細で優美、慎み深いパフォーマンス」と評価している。

続々と控える今後の注目作

『リトル・マーメイド』

リトル・マーメイド
© Buena Vista Pictures 写真:ゼータ イメージ

1989年製作のディズニー・アニメ版『リトル・マーメイド』の実写映画化企画。オークワフィナにとってディズニー作品への初進出となる。2019年7月に、人魚姫の主人公アリエルの友である陽気なカモメのスカットル役として出演交渉が報じられていた

監督を務めるのは、『メリー・ポピンズ リターンズ』(2019)のロブ・マーシャル。本企画は2020年3月中旬より撮影開始予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、一時製作中断となっている。

『シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テン・リングス』

シャン・チー

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)初のアジア系ヒーロー映画。オークワフィナはじめ出演者情報は、2019年7月下旬に開催されたポップカルチャーの祭典「サンディエゴ・コミコン」にて米マーベル・スタジオより正式に告知された。

主人公シャン・チー役には、ドラマ「Blood and Water(原題)」(2015)や「Kim’s Convenience(原題)」(2016-)のシム・リウ。ほか、『インファナル・アフェア』『レッド・クリフ』シリーズなどで知られるトニー・レオンがテン・リングスの首領マンダリン役を演じる。監督は『ショート・ターム』(2013)『ガラスの城の約束』のデスティン・ダニエル・クレットン。脚本は『GODZILLA ゴジラ』(2014)デイヴ・キャラハムが務める。なお、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中断されていた撮影は、2020年7月中にもオーストラリア・シドニーにて再開予定

このほかオークワフィナは、ニコール・キッドマン、メリル・ストリープ共演のミュージカル・コメディ『The Prom(原題)』や、カレン・ギランと『ジュマンジ/ネクストレベル』以来の再タッグとなるアクション・コメディ『Shelly(原題)』への出演を控えている。

Source: BuzzFeedMTV NewsAccess, Hollywood XYZRotten TomatoesEmpire , THR

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。