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『MEG ザ・モンスター』ジェイソン・ステイサム特集 ─ 元飛び込み選手、アクションスターへの軌跡と出演作まとめ

jason statham ジェイソン・ステイサム
© Avalon.red 写真:ゼータイメージ

『エクスペンダブルズ』『ワイルド・スピード』『MEG ザ・モンスター』など、数々のアクション映画に出演を重ね、いまやハリウッドを代表する肉体派アクション俳優の地位を確立したジェイソン・ステイサム。キレキレのアクションに、その鋭い眼差しとブリティッシュアクセントを加えた演技は、他のアクション俳優と一線を画すユニークな才能を感じさせる。

そんなステイサムは演技の世界に足を踏み入れる前に水泳の飛込競技の選手として活躍するなど、異色なキャリアの持ち主でもある。本記事では「ジェイソン・ステイサム特集」と題して、ステイサムのキャリアの歩み、そして俳優としての変遷と活躍を振り返ることにする。

俳優になるまでの歩み

1967年7月26日、ステイサムは、イギリス・イングランド中部に位置するダービーシャーに生まれた。若き頃から空手やカンフー、キックボクシングなどの武術やフットボールに打ち込む中、上述の通り、とりわけ水泳の飛込選手として活躍。1990年にはイギリス連邦所属の国々が一斉に参加する総合競技大会コモンウェルスゲームズのイギリス代表選手に選ばれたほどの実力を持っている。ステイサムは、水泳選手時代の経験を「規律や集中力を学び、正常に保つ」ことができたと米IGNに語っており、現在までの人格形成に大きな影響をもたらしたと言えよう。

その後、キャリアは一転、ステイサムはモデル活動をスタート。フレンチコネクションやグリフィン、トミー・ヒルフィガー、リーバイスなど有名ブランドのモデルを務めた。また、ダンサーの母親を持つステイサムは得意としていたダンスを活かして、1993年にスコットランド出身のエレクトロバンド、シェイメンの楽曲「Comin’ On」のミュージック・ビデオにパンツ一丁のバック・ダンサーとして出演してもいる。

多才な活躍を見せていたステイサムが俳優デビューを飾ったのは、いまや『シャーロック・ホームズ』シリーズや『アラジン』(2019)などで知られるガイ・リッチー監督の長編映画デビュー作である『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)。この時点で31歳だったステイサムは俳優としては遅咲きと言えるが、同作は英国アカデミー賞英国作品賞にノミネートされるなど、話題作となった。なお、ステイサムが同作に出演するきっかけとなったのは、当時モデルを務めていたフレンチ・コネクションの創設者ステファン・A・マークス氏が出資者として同作に参加しており、リッチー監督にステイサムを紹介した為だそう。まさに奇しき巡り合わせと言えよう。

その後、同じくリッチー監督作『スナッチ』(2000)はじめ、数々の話題作に出演を重ねたステイサム。ここからは、ステイサムのフィルモグラフィーを代表する作品を厳選して、現在までの活躍の軌跡を辿っていくことにする。

『スナッチ』(2000)

長編作品の経験が2回目の新人俳優だったステイサムが主演に抜擢された犯罪コメディ群像劇。ステイサムは、賭けボクシングのプロモーター、ターキッシュを演じた。共演者には、ベニチオ・デル・トロ、ブラッド・ピット、スティーヴン・グレアム、ヴィニー・ジョーンズと、今でこそ豪華な面々が集結している。

リッチー監督、ステイサム共に2作目となる意欲作『スナッチ』は興行、批評両方で前作から大きく飛躍し、成功を収めた。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の米国興行収入が約370万ドルだったのに対し、『スナッチ』は約3,000万ドル。ステイサムにとっても俳優としての名を世界に広く知らしめることになった出世作と言えるだろう。

『トランスポーター』シリーズ(2002,2005,2008)

『スナッチ』以降、ジョン・カーペンター監督作『ゴースト・オブ・マーズ』(2001)やジェット・リー共演『ザ・ワン』(2001)などを経たステイサムが、映画シリーズの主演を初めて担うカーアクション作品だ。後にカーアクション映画最高峰の『ワイルド・スピード』シリーズで活躍することになるステイサムだが、ドライブスキルは『トランスポーター』で磨いたに違いない。製作・脚本は、『レオン』(1994)や『TAXi』シリーズのリュック・ベッソン。第1〜2作を『インクレディブル・ハルク』(2008)ルイ・レテリエ監督、第3作を『96時間』シリーズのオリヴィエ・メガトン監督が手がけた。

ステイサム演じる主人公フランク・マーティンは、高額な報酬と引き換えに、いかなる品物も時間通りに目的地へ届ける運び屋(トランスポーター)。銀行強盗を目的地に運ぶ途中、複数台のパトカーに追跡されるも、華麗なドライブテクニックを見せつけるなど、クールな運び屋を演じ切った。ステイサムのカーアクションを堪能したいという方は、『ワイルド・スピード』よりも『トランスポーター』の方が大いに楽しめるかもしれない。

また、カーアクションのみならず、持ち前の体術スキルを最大限に活かしたファイトシーンも見どころの1つ。第2作では、凶器を持った十数人の敵相手に身一つで戦っており、この時からすでにハリウッドを代表するアクション俳優としての片鱗を見せている。

『アドレナリン』シリーズ(2006,2009)

『トランスポーター』に続いて自身が主演を務める2つ目のシリーズ作品。第1作『アドレナリン』は2006年、続編『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』は2009年に公開された。

ステイサムは『アドレナリン』シリーズでアメリカ西海岸を主な拠点とするフリーランスの殺し屋シェヴ・チェリオスを演じている。メキシコ系マフィアからアドレナリンの分泌を抑制する合成薬物を投与され、1時間後に死んでしまう運命となったシェヴは、タイトルどおり“アドレナリン”全開で復讐に挑むのだ。『GAMER』(2009)『ゴーストライダー2』(2012)を共同で手掛けるマーク・ネヴェルダインとブライアン・テイラーのデビュー作となっている。

『アドレナリン』シリーズの世界興行収入は、作品を重ねるごとにを伸長していった『トランスポーター』シリーズとは異なり、1作目の約4,200万ドルから2作目で約3,450万ドルに落ち込んでいる。死までのタイムリミットが1時間という極限状況の中、叫びまくってアドレナリンを出し続ける熱演、そして『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(2008)でのジム・キャリーに先がけて、病衣姿でモータサイクルに乗って街中を疾走するコミカルな体当たり演技を見せつけたステイサムにとって、俳優としての可能性を広げた作品といっても過言ではないだろう。

『エクスペンダブルズ』シリーズ(2010,2012,2014)

『ロッキー』シリーズなどで知られる肉体派俳優シルヴェスター・スタローンが主演・脚本・監督を務めたハリウッド史上最大規模のアクション・シリーズだ。スタローンほかアーノルド・シュワルツェネッガーやブルース・ウィリス、ドルフ・ラングレン、ミッキー・ローク、ジェット・リーなど、世界から集結した大スターにステイサムが仲間入りを果たした作品。ステイサムはニューオーリンズに拠点を置く7人のエリート傭兵団「エクスペンタブルズ」で1番若いメンバーとして、ナイフ術を得意とするリー・クリスマスを演じている。

これまで数多のアクション作品でキレキレかつ豪快なアクションを披露してきたステイサム。アクション俳優として熟達の域に達しつつあるとも言えるステイサムは、第2作『エクスペンダブルズ2』公開時の2012年8月、米JoBloの取材にて「これまで何事もこなしてきたあなたが挑戦するものとは何ですか」と尋ねられると、「これまでに行なわれたことを繰り返さないことです」と返答。続けて、「覚悟の決まった格闘シーンでは、粋な演出をしすぎず、現実的すぎないような、本当だと信じさせられるボーダーラインのバランスを目指さないといけない」と、自身のアクション観を表現した。このような信念が『エクスペンダブルズ』シリーズで活かせたのか、ステイサムは『エクスペンダブルズ2』で、自身が黒装束をまとった格闘シーンを「クリエイティブに頭を使ってやり遂げた」と自ら絶賛している。

2014年の第3作『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』まで公開されている本シリーズは、2018年に第4弾の製作が決定していたが、現在の進捗は不明だ。

『メカニック』シリーズ(2011,2016)

『アドレナリン』シリーズに続いて殺し屋を再び演じたアクション映画シリーズ。『トランスポーター』で演じた運び屋フランク・マーティンの如く、いかなる相手でも依頼されれば必ず任務を成し遂げる敏腕の殺し屋(通称:メカニック)のアーサー・ビショップを演じた。1作目『メカニック』(2011)でメガホンを取ったのは『エクスペンダブルズ2』でステイサムと再びタッグを組むことになるサイモン・ウェスト監督だ。2作目『メカニック:ワールドミッション』(2016)では、『イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国』(2012)などで知られるドイツ出身のデニス・ガンゼル監督が手がけている。

数ある出演作品の中でも、本シリーズではずば抜けに冷徹で完璧を追求する役柄を演じたステイサム。一層の鋭い眼差しで殺し屋を熱演している。さらに、本作では弟子を迎え入れる設定もあってか、より頼もしいアクションを披露。第1作ではドナルド・サザーランド、第2作ではトミー・リー・ジョーンズと、大御所俳優との共演も果たしており、ステイサムにとっても大きな経験となったシリーズと言えよう。

『ワイルド・スピード』シリーズ(2013,2015,2017,2019)

© Universal Pictures

世界最大規模のカー・アクション映画『ワイルド・スピード』シリーズに第6作『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013)から参加。同作でステイサムはファミリーの敵オーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンス)の兄デッカード・ショウ役で登場、次作『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)にてファミリーの前に立ちはだかる最強の敵として本格的な出演を果たした。

続く『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2018)では、ファミリーの前から姿を消した主人公ドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)を奪還すべく、レティ(ミシェル・ロドリゲス)ら残されたファミリーや宿敵でもある外交保安官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と協力関係に。デッカードは物語の終盤、ドミニクの息子ブライアンを救うべく飛行機内に潜入。自分なりに赤ちゃんをあやすデッカードの姿はそれまでの寡黙で冷酷な姿から大きなギャップを見せ、多くの観客を魅了したことだろう。

ホブスとは犬猿の仲だったデッカードだが、『ICE BREAK』でのミッションで「生まれる時代が違えば、共に戦うことができたかもしれない」と芽生えるはずのない友情を一瞬見せていた。そして、『ICE BREAK』公開の2017年4月から既に企画されていたシリーズ初のスピンオフシリーズ『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)では一番実現しなさそうな筋肉凸凹コンビだけの物語が幕を開けた。ピリピリした緊張感を持たせながらも、ナイスコンビネーションを発揮したデッカードとホブス。ヴィン・ディーゼルやミシェル・ロドリゲスらファミリーの不在にもかかわらず、シリーズ全9作品で4番目の世界興行収入を叩き出した。

ワイルド・スピード/スーパーコンボ
©UNIVERSAL PICTURES

『MEG ザ・モンスター』(2018)

MEG ザ・モンスター
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.

ステイサムが古来の巨大ザメ「メガロドン」と決死のガチンコ対決を繰り広げる海洋パニック・アクション映画。200万年前に絶滅したと思われていた実在する巨大ザメ“メガロドン”に襲われた深海探査チームの救出に挑む深海レスキューのプロ、ジョナス・テイラーを演じた。監督を務めたのは、『ナショナル・トレジャー』シリーズのジョン・タートルトーブだ。

“超巨大ザメ vs ステイサム”という組み合わせは大きな話題を呼び、全米では『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)の3週連続首位を阻止して初登場1位。全世界42か国で公開されると累計興行収入4億ドルを突破し、『ジョーズ』(1975)の興行収入を超え、サメ映画の歴史を塗り替える世界的大ヒットとなった。

劇中におけるサメの再現は当然のことながらCGで行なわれたものの、ステイサムは、なんと出演に備えてフィジー共和国に赴き、実際にオオメジロザメと泳いだのだそう。この時について、「面白いことにボートにいる時は不安なんですけど、一回海に入ってしまえば気分も変わってリラックスしちゃうんです」と海の男ぶりを見せていた。ステイサムのワイルドぶりを改めて実感する1作であろう。

今後の出演情報

ガイ・リッチー監督最新作『Cash Truck(原題)』

フランス映画『ブルー・レクイエム』(2004)のハリウッドリメイク版。主演のステイサムは、冷淡かつミステリアスな男「H」を演じる。ロサンゼルスの現金輸送会社で、毎週、巨額の現金を移動させる業務の責任を負う仕事をしている設定だ。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』を彷彿とさせる、時系列を行き来しつつ、複数の登場人物の視点から出来事が描かれるストーリーテリングが特長だという。

製作は米ミラマックスが担当し、プロデューサーには同社のビル・ブロックCEOと、リッチー監督作品『アラジン』(2019)『ジェントルメン(原題:The Gentlemen)』のアイヴァン・アトキンソンが就任。出演者には、ステイサムと『ICE BREAK』以来の共演となるスコット・イーストウッドや、「マインドハンター」(2017-)のホルト・マッキャラニーが名を連ねている。2021年1月15日米国公開予定。

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『ワイルド・スピード スーパーコンボ』続編

ワイルド・スピード/スーパーコンボ
(C) 2019 Universal Studios. All Rights Reserved.

“筋肉凸凹コンビ”の活躍に焦点を当てた『スーパーコンボ』は大ヒットの記録を受け、2019年11月に制作陣とスタジオ間で続編の検討に関する話し合いが行われていた。プロデューサーを兼任するドウェインは、2020年4月に続編企画について「もう幾つかのサプライズと、複数の新たなキャラクターを作る用意をしている」と言及しており、現在もプリプロダクション(撮影前準備)過程にある模様。

続編には、第3作『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』以降のシリーズ作品全ての脚本を務めているクリス・モーガンが続投。製作には、ドウェインがCEOを務めるSeven Bucks Productionsのハイラン・ガーシアらが引き続き就任している。『スーパーコンボ』で監督を務めた『アトミック・ブロンド』(2017)や『デッドプール2』(2018)などデヴィッド・リーチの続投は発表されていない。ちなみにステイサムは、続編の監督として、盟友ガイ・リッチーを推薦していたが…。

この映画の解説はコチラ

Source: IGN, FandangoJoBlo, Entertainment Weekly

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。