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デンゼル・ワシントン監督・主演、オスカー受賞作『フェンス』DVDスルー決定!なぜか未公開の注目作品5選+α

今年(2017年)のアカデミー賞に作品賞を含む主要4部門でノミネートされ、ヴィオラ・デイヴィスが助演女優賞を受賞した、デンゼル・ワシントン監督・主演作品『フェンス』が日本では劇場公開されないことが判明した。同作のBlu-ray/DVDは2017年6月7日発売予定だ。

デンゼル・ワシントンといえば日本でも十分に売り文句になるネームバリューの持ち主であるし、本作では監督も兼ねている。しかも相手役のヴィオラ・デイヴィスのオスカー受賞というおまけ付きの映画なのだが、確かにハリウッド大作や邦画の話題作、アニメ作品と比べればビジネス面のマーケットが小さいことは否定できない。とはいえオスカー受賞のデンゼル・ワシントン最新作がまさかの劇場未公開とは、これは悲報としか言いようがない。

 

なぜか劇場で公開されない映画たち

ところが、同じように平均点以上のクオリティや話題性を備えながらも日本では劇場公開されずに終わってしまった作品は、この一年でも相当の本数がある

もちろんアメリカでどれだけ大ヒットしようと日本向けではない映画もあるだろう。一番わかりやすいのはアメリカン・コメディ映画で、ごくまれに公開されることもあるが、ベン・スティラーやアダム・サンドラー、ウィル・フェレルといったコメディアン主演の映画はまず日本では公開されない。「“俺たち”」シリーズ(日本独自のシリーズくくり)や一作目は公開された『ズーランダー No.2』は未公開。マイケル・ベイ監督、マーク・ウォールバーグ&ドウェイン・ジョンソン主演の『ペイン&ゲイン』や、ジョニー・デップの出世作である同名ドラマを映画化した『21ジャンプストリート』『22ジャンプストリート』も、チャニング・テイタム、ジョナ・ヒル、ブリー・ラーソンというキャストが並びながら未公開だ。そういえば『オースティン・パワーズ』や『シュレック』が公開されていたマイク・マイヤーズも久しく日本では姿を見ないし、『スクール・オブ・ロック』が日本でヒットしたジャック・ブラックも久しくスクリーンに登場していない。

また、コメディの次に公開されにくいのがアニメーション作品である。日本のアニメーション作品という競合相手が数多いこともあるが、ごく一部のブランド以外はなかなか公開されない。『アイス・エイジ5』『オープン・シーズン4』『カンフーパンダ3』など、存在すら知らなかった方も多いのではないだろうか? このように日本の映画市場の事情を考えて公開されない映画があるのは、残念ながら受け入れざるを得ないところもある。

日本未公開の注目作品5選

ところが、2016年から2017年にかけての全米公開作品には、『フェンス』を含むどう考えても日本で劇場公開されるべきだった映画がある。まずは『ベン・ハー』『バース・オブ・ネイション』だ。ともに、世界映画史に名を遺す『ベン・ハー』(1959年)と『國民の創生』(1915年)からインスパイアされた作品である。

『ベン・ハー』

本作『ベン・ハー』は確かにアメリカで興行的に不発ではあったものの、もっと大コケしている映画も普通に日本で公開されている。しかも『ベン・ハー』というタイトルの圧倒的な認知度がありながら、まさかの劇場公開なしである。

『バース・オブ・ネーション』

本作『バース・オブ・ネイション』はアメリカにて興行・批評の両面で高い評価を受け、2016年の東京国際映画祭でも上映された作品だ。一時期は賞レースに名を連ねるのではないかといわれたものの、製作者の過去の醜聞が取り上げられて暗い影を落とした。結果的にそのままフェードアウトするように日本公開は中止となっている。さらにソフト化のアナウンスもなく幻の映画になりつつある状態だ。

また賞レースに絡んだにもかかわらずソフトスルーになってしまった映画でいうと、『ジョイ』『13時間 ベンガジの秘密の兵士』の2作品もなぜ劇場公開されなかったのかと思わせる作品だ。

『ジョイ』

本作『ジョイ』は『世界にひとつのプレイブック』のデヴィッド・O・ラッセル監督による新作で、同作でオスカー女優となったジェニファー・ローレンスが主演しまたもやオスカーにノミネートされている。さらに『世界に~』のロバート・デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパーが集結しているにも関わらず、気が付けばソフトがひっそりとラックに並ぶ結果となった。

『13時間 ベンカジの秘密の兵士』

『13時間』は『トランスフォーマー』シリーズを手がけたマイケル・ベイ監督による実話ベースの戦争映画だ。しかしマイケル・ベイの監督作品は、実は『トランスフォーマー』以外長らく日本では劇場公開されていない……。

『ビリー・リンの永遠の一日』

オスカーで監督賞を2度受賞したアン・リー監督による『ビリー・リンの永遠の一日』は、19歳でイラク戦争の英雄となった青年ビリーの物語を1秒間120フレームという世界初の映像技術で描いた渾身の一作だが、賞レースに絡まなかったこともあってか劇場公開の予定はない(2017年2月11日に公開予定だったが延期されている)。圧倒的な映像と強いメッセージが込められた作品だけに残念だ。

問題作『STOP』まさかの日本公開へ

様々なマーケティング、競合作品の有無、公開時期の選定、作品鮮度、テーマなどから“公開できない”という判断が下された事情も分からなくはないが、見られるべき作品が何もなくそっとビデオ店のラックに並ぶだけというのはあまりにももったいない。そんな中、少しだけうれしいニュースがあった。韓国の鬼才キム・ギドク監督による超問題作『STOP』が日本でも劇場公開されることになったのだ。

この映画は東日本大震災と原発事故を真正面から取り上げた若い夫婦の物語で、原発事故と子供を身ごもること、そして生まれてくる子供という、いわば“タブー中のタブー”というべき内容となっている。筆者は2015年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で特別上映された際に本作を見ることができたが、どう考えても日本での上映は不可能だと思われた。これが多くの人間の努力によって公開されることになったのである。

正直なところ、“とりあえず作ってみました”というような映画もあるのが現状で、何でもかんでも劇場公開されるべきだとは思わない。しかし見られるべき映画が、先々のことを予見しすぎた結果スクリーンで上映されないことは実に寂しい限りである。

Writer

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OsoneRampo≒村松健太郎村松 健太郎

≒村松健太郎。脳梗塞との付き合いも10年目。 映画祭の審査員、映画学校を手伝い。シネマズBY松竹にて執筆も。 映画を広げるのに便利な舞台とか本とかも・・・・。黒手袋て杖をついていれば私です、

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