本物の元銀行強盗が『ダークナイト』強盗シーンを評価、10点満点中1点に ─ 「こういう金庫は相当な時間がかかる」

映画やドラマの様々なシーンを、“その道のプロ”が見て正確性を評価する米Insiderの人気企画に、元犯罪者たちが登場した。元強盗や元極道などが作品のクライムシーンを見て、「実際はこうだ」と教えてくれている。ここで紹介するのは、過去に100回以上の銀行強盗を行った、ケイン・ヴィンセント・ダイヤー氏。現在では改心し、モチベーショナル・スピーカーとしてコーチング会社を設立しているそうだ。この企画でダイヤーは、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008)をはじめとする4作のシーンを評価している。
ダイヤーがまず見ているのは、ライアン・ゴズリング主演の2012年の映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』。ゴズリングが演じる主人公ルークが初めて銀行強盗を実行するシーンだ。
この強盗でルークはバイクで現場に現れ、ヘルメットを被ったままでいる。ダイヤーによれば、これは「よくある」こと。いかにも強盗的なマスクを被る必要もなく怪しまれないので、「強盗はよく使う方法ですね」と説明した。また、ルークはバックパックを前に抱えて銀行に突入するが、「よくわかる、僕もよくやってた」とプロ目線で評価した。
ルークは突入前に緊張で「クソ…(Fuck…)」と漏らすが、「めちゃくちゃ共感できる。初めての銀行強盗ってこんな感じ」と思い返すダイヤー。手首にダクトテープを巻き付けて手袋を固定している点も「手袋が脱げて指紋を残さないため、手首のタトゥーなどを露出しないためのものですね」と分析した。
ルークが襲撃した銀行は、窓口が防犯用のパーテーションで仕切られているタイプだ。これは強盗にとって不利になるが、「彼はあまりにも必死な状況なので、気にしている場合ではなかったのでしょう」とダイヤーは見解を語った。
また、強盗を終えたルークがバイクに乗りこむも、なぜかうまくエンジンがかからない場面では「こういうこと、あるんですよね」と、百戦錬磨だったダイヤーはその焦燥がよくわかる様子。その後、逃走バイクとパトカーによる赤信号を無視してのチェイスシーンになると、「危険度が増してしまうので、賢明な警察官はこういうことをしないでしょう」と見た。最終的な評価は10点満点中9点。銀行強盗を実行する前後の描写や、当人の緊張感、実行中に失敗をしでかしてしまう描写などが正確だと評価された。
続いては、ノーランの傑作『ダークナイト』冒頭、ジョーカーとその手下による銀行強盗シーン。ピエロマスクの子分たちが銀行内を武力制圧する中、犯行グループはいかにも複雑頑丈そうなハンドルロックのかかった金庫にアクセスする。
「まず念頭に置きたいのは、この映画の描写は全体的に大袈裟に描かれているということです」とダイヤー。彼によれば、金庫のセキュリティは非常に頑丈だが、銀行の営業時間中は従業員が出入りできるように開けられているという。「僕が強盗した銀行にも全て、このシーンにあるような金庫か、もしくは普通のオープンドアの金庫があった」と貴重な経験則を交えて語る。「もしもこういう金庫に出くわしたら、僕は諦めますね(笑)。金庫のマニュアルか、特定の時間帯には金庫が開かれると知らなければね」。ダイヤーが見るに、劇中のようなタイプの金庫を破るには「相当な時間がかかります。3〜4分では済まない」そうだ。
続くシーンでは、ウィリアム・フィクナー演じる支店長がショットガンで強盗に応戦する。ダイヤーによると、「武装したセキュリティでもない限り、こんな武器はないでしょう」。また、ショットガンは「強盗の犯人だけでなく、客や銀行員にも命中してしまうことに注意しなければなりません」と危惧した。
映画では強盗シーンの最後にスクールバスが扉を破って突っ込んでくるが、「バスの車体に傷一つついていない」ことや、「銀行の入口のシーンでは階段があったはず」といった映像的な正誤についても指摘。プロの目から見ると、『ダークナイト』強盗シーンは10点満点1点の評価となった。
一方、ベン・アフレック主演の『ザ・タウン』(2010)には10点中10点の満点評価。突入シーンが実際さながらのリアルさであることや、銀行職員にあえて単純な質問をしてみて、その反応で相手が協力的かどうかを見極めようとする描写が現実通りであることを評価した。
『ザ・タウン』劇中では犯行グループが証拠隠滅のため銀行内のデスク周りにブリーチ剤を撒く。「僕はやったことはないが、理解はできる」と興味深そうに見た。最後に、ドラマ「ペーパーハウス」シーズン3第3話で、水中の金庫に侵入するシーンについては、「エンタメ的には10点ですけど、スキル的には1点です」との評価を下した。
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