【特集】『ワンダーウーマン』主演ガル・ガドット、不遇のキャリアを紐解く ― 女優引退を考えた過去、キャスティング秘話も

あえてこう言わねばならない。
DCエクステンデッド・ユニバース作品『ワンダーウーマン』でタイトルロールを演じるガル・ガドットは“遅咲き”の女優だ。2004年には18歳でミス・イスラエルに選ばれた、あるいは2009年『ワイルド・スピード MAX』で大作映画に抜擢された彼女のどこが“遅咲き”か……と見る向きもあろう。

しかし、ガドットが『ワンダーウーマン』で主演の座を射止めるまでの道のりは決して平坦ではなかった。ダイアナ・プリンス/ワンダーウーマン役に決まる間際、彼女は女優を辞めることも考えていたという……。

ワンダーウーマン

cWarner Bros. 写真:ゼータ イメージ

ミス・イスラエル、戦闘トレーナーになる

ガル・ガドットは1985年4月30日、イスラエルの中心部にある都市ペタク・チクヴァに生まれ、小さな街ロッシュ・ハアインで育った。米ローリングストーン誌に語ったところによると、そこで彼女は「自分の能力を信じ、自分自身を尊ぶように」教えられたという。

「テレビはぜんぜん見ていませんでした。いつも“ボールで遊んでおいで”って言われていたんです。おおむね良い子で、良い生徒で、人を楽しませるおてんばな性格でしたよ。いつも膝にはスリ傷を作ってました。」

そんなガドットに転機が訪れたのは、彼女が高校を卒業してからイスラエル国防軍に入隊するまでのわずかな期間のことだった。母と友人がミス・イスラエルのコンテストに(勝手に)申し込んだことで、いきなり彼女はスターへの階段を上り始めることになったのである。

「自分自身に“やろう、(ミス・ヨーロッパコンテストのため)ヨーロッパへ行こう。孫たちに『おばあちゃんはミス・イスラエルだったんだよ』って言えるように”って言い聞かせてました。勝てるとは思ってなかったんです。」

その思いとは裏腹に、ガドットはミス・イスラエルの座に輝き、その後は予定通りイスラエル国防軍への入隊を果たしている。しかし戦闘トレーナーとしての2年間の兵役を終えた彼女は、ストレートに女優の道へと突き進んだわけではない。ガドットは再び学校に入り直し、法律を学ぶ道へと進んでいるのだ。

Gal Gadot speaking at the 2016 San Diego Comic Con International, for "Wonder Woman", at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/27976769694/ )

Gal Gadot speaking at the 2016 San Diego Comic Con International, for “Wonder Woman”, at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/27976769694/ )

女優としての「不遇」

ガドットが女優の道へと足を踏み入れるきっかけは、法学を学びはじめてしばらく後のことだった。
あるキャスティング・ディレクターが彼女のエージェントに接近し、“ガドットにオーディションを受けてほしい”という希望を伝えたのである。当時の彼女は「なに言ってんの? 私は学校にいるし、女優じゃないし、行きません」という姿勢だったというが、それでもエージェントに押し切られるようにオーディションへ参加している。その作品こそ『007 慰めの報酬』(2008)だった。

惜しくもガドットはボンドガールの役柄を逃しているものの、オーディションの成果は『ワイルド・スピード MAX』(2009)へとつながり、その後彼女は『ワイルド・スピード』シリーズ3作品への出演を果たしている。ほかにも『デート&ナイト』(2010)『ナイト&デイ』(2010)に出演するなど、その女優人生は華々しい幕開けとなったかに見えた。

しかしガドットは、その後いくつかのテレビドラマにゲスト出演し、イスラエルでのテレビシリーズでメインキャストを務めながらも、当初見込まれていたほどの結果を出せない日々を送ることになる。『ワイルド・スピード』シリーズを除けば、『ナイト&デイ』の次に出演した映画は『トリプル9 裏切りのコード』(2016)なのだ。
アメリカのテレビ番組「ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジミー・ファロン」に出演したガドットは、当時の苦しい状況をこう振り返っている。

「この仕事は不合格になるのが辛いですね。“もう少しで”という機会や別人のカメラテストにたくさん参加しては、また“もう少しで私のものだったのに”って。それが続くんですよ。夫には“いつまでやれるか分からない”と話していました。

そして『ワンダーウーマン』へ

ところがひょんなことから、ガドットの『ワンダーウーマン』への道は開かれることになる。家族とロサンゼルスを訪れていた彼女のもとに、ザック・スナイダーから一本の電話が入ったのだ。

「ザックから、秘密の役のオーディションに来てほしいという電話があったんです。オーディションは最高でしたよ。でも私は、映画を撮るためにイスラエルに戻りましたが、その後も演技を続けたいのかどうかわかっていなかったんです。
イスラエルにいる時、再びカメラテストをしたいという連絡がありました。エージェントに“私はなんのテストをしてるの?”って尋ねたら、“聞いてないの?”って言われましたよ。そしたらザックから電話があって、“イスラエルにこのキャラクターがいるのか、有名なのかそうじゃないのかわからないんだけど、ワンダーウーマンって聞いたことある?”って。“ワンダーウーマンね、やりたい”って思いました。」

その後、ガドットはワンダーウーマン役を射止めて『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)で初登場を果たすことになる。当初はコミックファンの間でも賛否が分かれたキャスティングだったが、単独映画『ワンダーウーマン』をもってその人気はいよいよ全世界で爆発。きっと、かつての彼女はこんな事態を予想していなかったことだろう……。

『ワンダーウーマン』監督のイメージとは違った?

ワンダーウーマンとしての、またスター俳優としてのガドットの説得力を如実に示すエピソードがある。
なんと『ワンダーウーマン』を手がけたパティ・ジェンキンス監督にとって、ガドットはワンダーウーマン役のイメージではなかったというのだ。米プレイボーイ誌のインタビューで、ジェンキンス監督はこう話している。

ワンダーウーマン役のキャスティングを知って落ち込んだのを覚えていますよ。(『ワンダーウーマン』を監督する)話をワーナーと長いこと続けていましたから、“おしまいだ”と思いました。」

しかし監督は、やがてガドットに注目するうちに、彼女こそ自分たちの探していた「ワンダーウーマンをスクリーンに登場させられる女優」だと感じるようになったという。写真撮影のためワンダーウーマンの衣裳を身につけたガドットを見て、彼女は「2秒で7歳の子供に戻ってしまった」というのだ。

結果的にザック・スナイダーから“ガル・ガドットというワンダーウーマン”を受け継ぐことになったジェンキンス監督だが、今ではそのキャスティングをこう捉えているという。

「私ができた以上にいいキャスティングだと思います。だって私が彼女を見つけるほど懸命に地球上を探し回ったかどうか、世界を見ていたかどうかわかりませんからね。アメリカ人の女の子だけを探していただろうと思いますよ。ガル・ガドットを見つけ出して選んでもらえた、それが私にとっては魔法のような贈り物なんです。」

“遅咲き”ガル・ガドットのワンダーウーマンとしての旅路はまだ始まったばかりだ。これから彼女がどんな冒険を、どんな表情を見せてくれるのか、来る『ジャスティス・リーグ』そして『ワンダーウーマン』続編も楽しみに待つことにしたい。もちろん今後、ワンダーウーマン以外のガル・ガドットをたくさん観られることも祈りながら……。

映画『ワンダーウーマン』は2017年8月25日より全国の映画館にて公開中

Sources:?http://www.rollingstone.com/movies/features/wonder-woman-gal-gadot-on-becoming-badass-female-action-hero-w498704
http://screenrant.com/gal-gadot-wonder-woman-audition/
http://www.playboy.com/articles/patty-jenkins-wonder-woman-interview
https://en.wikipedia.org/wiki/Gal_Gadot
Eyecatch Image:?Gal Gadot speaking at the 2016 San Diego Comic Con International, for “Wonder Woman”, at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/27976769694/ )

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THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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Comments

  • Akira Higuchi 2017年8月26日 at 2:50 PM

    文章中の007の邦題は慰めの報酬ですよね?

    Reply
    • Takatoshi Inagaki 2017年8月28日 at 10:23 AM

      AKIRA HIGUCHI様

      ORIVERcinema編集部 稲垣です。
      このたびはご指摘をいただきまして、誠にありがとうございます。
      ご指摘の通り、該当部分の邦題は『007 慰めの報酬』が正しいものとなります。
      修正させていただくとともに、ここにお詫びいたします。
      不正確な内容が含まれていましたこと、たいへん申し訳ございませんでした。

      今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

      Reply