数多の時間が交錯し、徐々に繋がるピース達…映画『ガール・オン・ザ・トレイン』レビュー

映画『ガール・オン・ザ・トレイン』感想

イギリスの小説家 ポーラ・ホーキンズのベストセラー小説を映画化。
夫と別れた事実を受け入れられずにいるレイチェル(エミリー・ブラント)は、前に進むことができず苦しみに囚われていた。
そんな彼女にとって、毎朝通勤電車の窓から見える「理想の夫婦」にかつての自分を重ねることが唯一の慰めであった。
また、すぐ近くにあるかつて過ごした家で今も暮らす元夫 トム(ジャスティン・セロー)と現在の妻 アナ(レベッカ・ファーガソン)とその娘を覗き見ては自らを貶めている。
抜け出すことのできない繰り返しの毎日を送るレイチェルは、ある朝 理想の夫婦の妻が見知らぬ男と浮気している現場を目撃する。
そして、理想の妻が死体で発見されたことを耳にするのであった。
暗闇の中を彷徨い続ける女性の姿を、暗く淀んだ世界からの脱却を願う女性の心を描いた作品だ。

初めは軽い気持ちで観ていた。
ぼくにも毎朝山手通りをチャリで通る時に必ず目にする女の子がいるなって
声をかけたりはしないけれど(できないけれど)、まるで知り合いかのような感覚に どこか別の場所で出会ったらドラマチックな出来事が起きたりするんじゃないかと妄想できてしまう人がいるなって

でも、そんな浮ついた気持ちは速攻粉砕された。
同じ通勤中の出来事であっても、レイチェルが抱える想いは全くの別物であった。

かつて恋人と別れ、大いにこじらせた経験を持つ人が中にはいると思う。
醜悪で みっともなくて 恥ずかしくて 情けない
そんな経験がぼくにもある。
今思えばバカだったなと思うし、あの空虚な時間をもっと別のことに費やせば良かったとさえ思えてしまう。

でも、あの時はどうしたって抜け出せなかった
囚われずにはいられなかった。

レイチェルの姿にかつての自分を見出す人もいるだろう。

彼女の場合、酒 暴力 不妊等の要素も絡まってきて 尚のこと一筋縄ではいかない状況であった。

物語はレイチェルのモノローグから始まる。
彼女の胸中を知り、観客は彼女の味方になるはずだ。

だが、話が進むにつれ レイチェルへの信頼が損なわれていく。
あんなに綺麗で美しいエミリー・ブラントが、とても醜く 嫌な女に見えてくる。

何が正しくて 何が間違っているのか
誰が真実を語り 誰が嘘をついているのか

観ていて何も信じられなくなった。
誰を信じていいのか分からなくなった。
ストーリーを追うための心の拠り所となる人物が 寄り添うべき人物が不在となってしまった。

劇中世界に引き込まれたはいいものの、観客はあの世界の中で迷子になってしまう。

それは、不安で不安でたまらない。
が、もしかしたらレイチェル自身が感じていた不安と近しい不安であったのかもしれない。

彼女は彼女自身が信じられない
誰を信じていいのか分からず、信じるに値する人間関係も築けちゃいない

レイチェルに寄り添えなくなった気がしていたが、実はより密接に彼女に寄り添えていたのかもしれない。

限られた登場人物しか登場しないため、自ずと辿り着く方角は読めてくる。
けれど、そこへ辿り着くためのプロセスだけは決して読めない。

数多の時間が交錯し、徐々に繋がり合っていくピース達
その道筋が少しずつ垣間見えてくる面白さこそが、今作最大の魅力であった。

結婚は地獄だとか 女はアレだとか 男はアレだとか
そんなしょうもない問答はどうだっていい。

心から信用できる相手に巡り会えるか
共に信頼を築いていけるか
相手にすべてを晒け出せるか
相手のすべてを受け止め切れるか
自分以上に相手を想えるか

それこそが重要であり、それができてこそ初めて「愛」と呼べるモノになるのだと思う。

そんな関係性を築ける相手と生涯を共にしたい。

ネタバレは何もしていません。
安心して劇場でご覧ください。

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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