「リドリーが出来るんだと言えば、出来るんですよ」『グラディエーターⅡ』Pが明かす製作ウラ話【単独インタビュー】

──つまり、水は全てCGで?
ルーシー:そうです。コロシアムでの模擬海戦のところも、水はCGです。
ダグ:マルタに水の入ったタンクがあって、そこで細かい撮影はしているのですが、ビッグ・ショットでは全てCGです。
ルーシー:船の衝突も、全部砂の上で撮っています。
ダグ:もし本物の船を使ったら、位置取りが難しくなる。1週間余計にかかっていたでしょう。でもこのやり方なら、衝突シーンもずっと簡単に撮れます。
ルーシー:砂の上で船を引き摺ったんですよ。撮影に使用した船は3隻だけです。
ダグ:ちなみに、劇中のサイは撮影時にはタイヤ駆動の機械仕掛け。人が機械のサイの上に立って、走るショットをたくさん撮っておいて、後から差し替えるんです。すごく面白かったですよ。

ルーシー:ヒヒ(Baboon)と戦うシーンでは、スタントマンがヒヒのマスクを被っていました。ポールはそれを相手に撮影していたんですよ。
──(ここで筆者、英語のBaboon=ヒヒがわからず……)そのBaboonっていうのは、実在する動物なのですか?
ダグ:実在する動物ですよ。あとでGoogleで調べてみてください。奇妙な見た目をしています。
ルーシー:毛のないやつが、凶暴です。
──猿のような犬のような見た目をした、あの恐ろしい動物は見たことがなかったもので。
ダグ:君の誕生日はいつだい?プレゼントにBaboonを贈ってあげるよ。なんちゃって(笑)。
──うちには猫がいまして……。
ダグ:食べられちゃうよ!(笑)
──勘弁してください(笑)。さて、今お話しいただいたCGの水の件のように、前作では技術的に不可能だったけれど、今作で実現できたことは何かありますか?
ダグ:はい。実は、リドリーは1作目でもサイを出したがっていたんです。当時はCGがかなり高額でね。だから私が動物トレーナーに電話をかけて、本物のサイを使うにはいくらかかるか聞いたものです。サイを撮影地マルタまで輸送することになります。トレーナーさんは、届けることはできますが、一つ問題がありますと言いました。サイは視界があまり見えないので、一度走り出したら止まりませんよと(笑)。だから当時はサイを諦めたものです。
ところで、本作のようなヒヒとの戦いも、1作目では不可能だったでしょう。1作目では本物のトラを登場させましたが、あれはあまり難しいことではありませんでした。ちなみに、本作のサメもCGですからね。
──劇中の夜のシーンについて、あれは実際には夜間に撮影されていないですよね?日中に撮影して、編集で暗色を足しているのかなと思ったのですが。何か理由があるのでしょうか?
ルーシー:今回、夜間の撮影は全く行われていません。リドリーが嫌がったので。
ダグ:(明るいうちの撮影の方が)明度が得られ、映像上の一つ一つの情報量が増えます。後から好みのルックに編集すれば良いのです。夜に撮影をすると、キャラクターやセットの視覚情報をうまく得られないことがありますから。
ルーシー:リドリーは撮影監督上がりですからね。ご存知ないかもしれないですが、彼は自分でカメラオペレーターもやります。彼はカメラのことなら何でも知っています。他のことも、何でも知っていますけどね。
──そんなリドリーといえば、“ディレクターズ・カット”版を用意することでも知られます。本作でも、長いバージョンは存在しますか?惜しくもカットされたシーンは?
ルーシー:カットすべきシーンは、全て撮影前にカットしています。だから、シーンをカットしたというより、もっとタイトにしました。
脚本には複数のバージョンがありましたし、デンゼルのキャラクターのバックストーリーもありました。しかし、彼は素晴らしい役者なので、彼がコニー(・ニールセン、ルッシラ役)に自身の過去を示す場面さえあれば、観客は理解できます。わざわざ過去を映像化しなくとも、役者の力で伝わるということです。予算の都合や、不必要だと判断してのシーンの削除は、脚本の段階で行われました。リドリーも、本作の別バージョンのリリースを望んでいません。この完成版に強い自信を持っています。

──そろそろお時間なので、最後に短い質問です。本作で一番好きなキャラクターは?
ダグ:ルシウスですかね。彼の冒険について、長い時間をかけて思案しましたから。
ルーシー:私は、我が子から一人だけを選ぶことはできないですね。

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