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『GODZILLA ゴジラ』徹底解説 ─ あらすじ、怪獣&キャスト紹介からメイキング、未公開シーンまで

GODZILLA ゴジラ
© LFI/Photoshot 写真:ゼータ イメージ

我らが怪獣王、ゴジラがハリウッドからやってきた。東宝怪獣映画『ゴジラ』シリーズを米国にて再リメイクした『GODZILLA ゴジラ』は、2014年5月に米国公開され、同年7月に日本上陸。本作はレジェンダリー・ピクチャーズによる「モンスターバース」の第1作だ。その集大成『ゴジラVSコング(原題)』の公開を2021年に控え、2020年6月20日、この“はじまりの作品”が土曜プレミアムに登場する。

あまり『ゴジラ』になじみがない方にも、『GODZILLA ゴジラ』はシリーズの入門編としてうってつけ。この記事では、あらすじや解説、出演者&スタッフ情報、そして怪獣の基本情報など、さまざまなトピックをお届けしていく。『ゴジラ』シリーズの、そして本作の試みの一端をうかがい知ることができれば幸いである。

『GODZILLA ゴジラ』予告編映像

『GODZILLA ゴジラ』あらすじ

1999年、フィリピンにて炭鉱の崩落事故が発生した。調査に訪れた芹沢猪四郎博士(渡辺謙)は、事故現場の奥深くで、恐竜のような化石を発見する。そこからは、何か巨大な生き物が這い出したかのような痕跡が残っていた。同じころ、日本・雀路羅[ジャンジラ]市の原子力発電所で働く核物理学者のジョー・ブロディ(ブライアン・クランストン)は、謎めいた地震の背景を探っていた。妻で技師のサンドラ(ジュリエット・ビノシュ)とともに発電所に向かうが、異常はおさまらない。突如として発生した大地震により、発電所は倒壊。周辺は立入禁止区域となってしまった。

15年後、2014年。ジョーとサンドラの息子であるフォード(アーロン・テイラー=ジョンソン)は、軍人として成長し、爆弾処理班に従事して世界中を飛び回っていた。妻のエル(エリザベス・オルセン)、息子のサムが待つ我が家に帰った日、ジョーが日本で逮捕されたとの連絡が入る。身柄を引き取るべく日本を訪れたフォードに対し、ジョーは、政府は何かを隠している、発電所には何かがあると陰謀論を語るのだった。真相を解き明かすべく、フォードはジョーとともに立入禁止区域に足を踏み入れるもあえなく逮捕される。2人が送致された発電所を管理しているのは、特務研究機関・モナーク(MONARCH)。巨大な物体を前に、謎の解明にあたっていた芹沢はジョーの主張に耳を傾けるが、その時、15年前と同じ大地震が襲いかかる……。

『GODZILLA ゴジラ』怪獣紹介/解説

ゴジラ GODZILLA

GODZILLA ゴジラ
©Warner Bros. 写真:ゼータ イメージ

言わずと知れた怪獣王。1954年版『ゴジラ』では、ジュラ紀から白亜紀の海棲生物がビキニ環礁の核実験で住処を追われ、海上に出現したものではないかと推測された。その後の東宝映画では、ルーツは同じではあるが、原子実験によって巨大生物として変貌したものとも説明される。しかし、本作『GODZILLA ゴジラ』では先史時代から存在したとみられる巨大生物という設定。そもそもビキニ環礁での核実験はゴジラを殺すことが目的だったとする歴史改変は、ある意味ではシリーズ史上最大の設定変更だろう。

ゴジラはシリーズを通じてしばしばサイズを変えており、本作では身長108.2メートル体重は9万トンとなった。製作当時としては過去最大のゴジラだったが、『シン・ゴジラ』(2016)や続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で記録は更新されている。見た目や特徴は日本版を踏襲しつつ、やや大柄で骨太な印象。劇場公開時にはおおむね賛辞をもって受け入れられたが、一部には「ピザとコーラで太ったゴジラ」と揶揄する声もあった。これに対し、芹沢猪四郎博士役の渡辺謙は、米メディアにて「太っているとは思わないけど、ゴジラはダイエットコーラは飲まないでしょうね」とジョークをもって応じている

日本版と同じく、武器は口から吐く放射熱線(ただし本作では、熱線の使用後に激しく消耗する様子が確認できる)。正面からの格闘や尻尾を使っての戦闘なども行う。なお、本作では「“GOD”ZILLA」すなわち神としての側面が強調されており、この解釈は続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)でより一層際立つことになる。

ムートー M.U.T.O.

『GODZILLA ゴジラ』でゴジラと対峙する敵怪獣。名称の「ムートー」はこの怪獣を指すものではなく、「未確認巨大陸上生物(Massive Unidentified Terrestrial Organism)」のこと。本作の前日譚コミック『ゴジラ:アウェイクニング〈覚醒〉』(ヴィレッジブックス)では、「死の群れ」と呼ばれる生物が「ムートー」と呼ばれている様子が描かれた。

本作に登場するムートーには、オスとメスの2種類がある。メスは8本脚で歩行し、腹部には大量の卵を抱えており、一方のオスはメスよりもやや小さく、8本脚のうち2本を翼として羽ばたくことができる。ともに放射性物質をエネルギーとして摂取する性質があり、核弾頭や原子力発電所のほか、ゴジラでさえその対象外ではない。なお、両者は互いに離れていても音波によってコミュニケーションを取ることができるほか、体内から発生させる電磁パルスは、周辺一帯の電子機器や電力に大きな影響を与え、時に人類にとっては大きな脅威となる。

ハリウッド版ゴジラ、新たなデザインを作る

『ゴジラ』シリーズがハリウッドで映画化されるのは、本作『GODZILLA ゴジラ』が初めてではない。1998年製作、ローランド・エメリッヒ監督による初めてのハリウッド版『GODZILLA』には、イグアナに近い姿をしたゴジラが登場。従来とは大きく異なるデザインと解釈ゆえ、モンスター映画としての強度とは異なり、“ゴジラ映画”としては非常に大きな物議を醸した。この“エメリッヒ版ゴジラ”は、国産映画『ゴジラ FINAL WARS』(2004)に「ジラ」として登場するも、ゴジラの前にあっけなく破れる。X星人(北村一輝)に「やっぱりマグロ食ってるようなのはダメだな」とまで言われる始末、もはや愛されているといってもいい。

GODZILLA
© Sony Pictures 写真:ゼータ イメージ

ともあれ、1998年版『GODZILLA』を製作したトライスター・ピクチャーズは『ゴジラ』の映像化権を2003年に失っており、本作には関与していない。ワーナー&レジェンダリーは、ゴジラの再映画化にあたり、イグアナめいたビジュアルではなく、1954年製作の初代ゴジラに敬意を払うと決定。監督のギャレス・エドワーズ「ゴジラをきちんと捉えつつも、古めかしいものにはしない」との意向で臨んだ。

当時、監督は1954年版のデザインについて「もしも60年前にゴジラが本当に存在し、日本で目撃されていたとしたら…」と想像したと語っている。「誰もその生き物の写真を撮れなかったけれど、人々が東宝に駆け込み、その存在を説明すべく作ったのがオリジナルの映画だったとしたら」という、もはや妄想というほかない発想だったのだが、ここからギャレスは「60年前に人々が目撃した動物を生み出す」という方針を固めた。それはすなわち、1954年版を“実在の生物を説明するための映像”だと理解し、その内容をデザインに反映、当時の人々にも理解されうるようなゴジラを表現することだったのである。輪郭を再検討し、表情をやや攻撃的にし、獰猛な印象のシルエットをたたえながら、しかし現実的にも見える“ギャレス版ゴジラ”が作り上げられた。

アニメーションとモーションキャプチャーの融合

『GODZILLA ゴジラ』に登場するゴジラは、主にCGアニメーションで描かれている。もともとギャレス・エドワーズ監督らは、ドキュメンタリーなどから動物の映像を多数検討し、実在する生き物をコピーする、あるいはゴジラらしくアレンジするというアプローチを取ろうと考えていた。ところが監督は、のちに「ドキュメンタリー番組をいきなり見せられて、そこに動物が2体出てきても何がなんだかわからない」という問題からこれを断念。ナレーションがまったくなければ、動物が怒っているのか、怖がっているのかも判断できないためだ。

ゴジラの動きを、動物から人間に近づけていくにあたっては、モーションキャプチャーのチームが参加している。監修を務めたのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラム役、『スター・ウォーズ』新3部作のスノーク役などで知られる俳優であり、モーションキャプチャーの第一人者、アンディ・サーキス。アンディは自らモーションキャプチャーを演じることこそなかったというが、キャラクターをどう動かし、反応させるべきかというアドバイスを提案。撮影されたモーションキャプチャーの映像は、アニメーターに参考資料として渡され、作業のスピードアップが図られたという。

『GODZILLA ゴジラ』の現実 対 虚構

「現実 対 虚構」とは『シン・ゴジラ』のキャッチコピーだが、実は『GODZILLA ゴジラ』にも「現実」「虚構」をめぐるギミックは多数存在する(そしてカットされている)。作品の土台となっている、ビキニ環礁にて繰り返し行われてきた核実験がゴジラを殺すための実験だったという歴史改変から、現実を虚構によって読み替える試みが行われているのだ。前日譚コミック『ゴジラ:アウェイクニング〈覚醒〉』にはマッカーサー元帥までも登場し、広島への原爆投下から核実験の背景にゴジラや特務研究機関「モナーク」の存在があったとする語り直しがなされている。

ギャレス・エドワーズ監督は、もともと『GODZILLA ゴジラ』を南太平洋での実験シーンから始める予定だったという。オープニング・クレジットの背景となっている映像の多くは、それぞれが独立したシーンとして撮影されたもの。しかしながら、編集段階で上映時間を短縮するためにカットされ、物語を説明するためにオープニングに盛り込まれたのである。

「現実」「虚構」というキーワードでいえば、興味深いエピソードがもうひとつ確認されている。主人公のフォード・ブロディ(アーロン・テイラー=ジョンソン)が、妻のエル(エリザベス・オルセン)と息子のサムが待つ家に帰ったあとのシーンには、東宝怪獣映画を観ながらフォードが眠りに落ちてしまう場面があったというのだ。映画の冒頭には怪獣映画らしき作品のポスターが登場していたが、もしや『GODZILLA ゴジラ』の世界にはゴジラ映画が存在するということか……。

続編、今後の展開

記事冒頭に触れた通り、『GODZILLA ゴジラ』はワーナー・ブラザース&レジェンダリー・ピクチャーズによる「モンスターバース」の第1作として製作された。第2作『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)では、これまで幾度となく映像化されてきた“キングコング”がスクリーンで新たに甦っている。

©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

2019年製作、本作の正統なる続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、監督をギャレス・エドワーズからマイケル・ドハティに交代。映画として、怪獣映画としてのアプローチをガラリを変えて登場した。ゴジラ・モスラ・ラドン・キングギドラという四大怪獣の激突がダイナミックに描かれた同作は、東宝怪獣映画のアイコンともいえる伊福部昭の音楽もふんだんに取り入れ、これぞハリウッドによる“平成ゴジラVSシリーズ”の再解釈ともいうべき趣向だ。

そして、『GODZILLA ゴジラ』『キングコング:髑髏島の巨神』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と続いてきた「モンスターバース」は、来たる第4作『ゴジラ VS コング(原題:Godzilla vs Kong)』でひとまずの集大成を迎える。怪獣王ゴジラと、髑髏島から現れるキングコングがついに激突。これは言わずもがな、東宝『ゴジラ』シリーズの第3作『キングコング対ゴジラ』(1962)の再映画化、ハリウッドリメイクともいえるものであろう。2021年5月21日米国公開予定、しかしながら作品の詳細は謎に包まれたままとなっている。

「モンスターバース」完全ガイドはこちら

出演者・キャスト・吹替声優

フォード・ブロディ(アーロン・テイラー=ジョンソン)

アーロン・テイラー=ジョンソン
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/9357007402/ Remixed by THE RIVER

6歳から俳優としての活動を始め、『シャンハイ・ナイト』(2003)『幻影師アイゼンハイム』(2007)などに出演する。『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2009)のジョン・レノン役、『キック・アス』シリーズでブレイクした。

マーベル映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)では人気キャラクターのクイックシルバーを演じており、本作で夫婦役を演じたエリザベス・オルセンと、今度は兄妹役として再共演。『ノクターナル・アニマルズ』(2016)ではゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞した。今後の作品に、『キングスマン』シリーズの最新作『キングスマン:ファースト・エージェント』がある。

『GODZILLA ゴジラ』で演じたフォード・ブロディは、幼いころに母親を失い、それ以来、陰謀論を信じ込むようになった父親とは距離を置いているという役どころ。自らも家族を持ちながら、ゴジラとムートーの戦いに巻き込まれていく。

芹沢猪四郎(渡辺謙)

『名探偵ピカチュウ』ジャパンプレミア
©THE RIVER

1979年から俳優としての活動を始め、映画・ドラマ・舞台でさまざまな作品に出演。海外作品には、トム・クルーズ主演『ラストサムライ』(2003)で進出し高評価を獲得。その後『バットマン ビギンズ』(2005)『硫黄島からの手紙』(2006)『インセプション』(2010)など、数々のハリウッド映画に出演してきた。『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)では英語での声優業を務め、『ポケットモンスター』シリーズのハリウッド実写映画版『名探偵ピカチュウ』(2019)にも出演している。

『GODZILLA ゴジラ』で演じた芹沢猪四郎博士は、生物学者であり、父親を広島への原爆投下をきっかけに失ったという設定。役名は1954年製作『ゴジラ』で平田昭彦が演じた芹沢大助博士と、同作を手がけた本多猪四郎監督から取られたものだ。本作の撮影時、渡辺は「ゴジラ」を英語調の「ガッジーラ」ではなく「ゴジラ」と日本語で発音することにこだわったことでも知られる。

エル・ブロディ(エリザベス・オルセン)

エリザベス・オルセン
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/9354233207/

幼少期から子役として活動したのち、ブランクを経ての本格的な女優デビュー作『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(2011)で数々の映画賞に輝く。スパイク・リー監督『オールド・ボーイ』(2013)などを経て、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)に出演。コミックの重要キャラクターであるスカーレット・ウィッチ役を務め、その後もマーベル・シネマティック・ユニバース作品に出演し続けている。一方で『アイ・ソー・ザ・ライト』(2015)『ウィンド・リバー』(2017)『イングリッド -ネットストーカーの女-』(2017)といった小・中規模作品にも参加。今後の活動が注目される女優のひとりだ。

『GODZILLA ゴジラ』で演じたエル・ブロディは、主人公であるフォードの妻であり、息子のサムを守りながら医師として働く役どころ。怪獣の出現、都市の混乱に巻き込まれていく。

サンドラ・ブロディ(ジュリエット・ビノシュ)

ジュリエット・ビノシュ
Photo by Thesupermat https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Festival_automobile_international_2016_-_Photocall_-_016.jpg Remixed by THE RIVER

1980年代前半からキャリアを開始し、『ゴダールのマリア』(1985)『汚れた血』(1986)『ポンヌフの恋人』(1991)などに出演。『存在の耐えられない軽さ』(1988)でアメリカ映画に進出後も、製作国やジャンルを問わずさまざまな映画に出演している。そのほか、代表作に『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)『ショコラ』(2000)『トスカーナの贋作』(2010)など。

本作ののちには、日本の漫画『攻殻機動隊』のハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)に出演し、ビートたけしや桃井かおりらと共演。河瀨直美監督作品『Vision ビジョン』(2018)や是枝裕和監督作品『真実』(2019)など、日本にゆかりのある作品への参加が続いている。

『GODZILLA ゴジラ』で演じたサンドラ・ブロディは放射線技師であり、主人公フォードの母親。雀路羅市の原子力発電所にて夫のジョーとともに働いているが、1999年の事故をきっかけに、ジョーとフォードの運命も大きく変わることになる。

ヴィヴィアン・グレアム(サリー・ホーキンス)

サリー・ホーキンス
Photo by Martin Kraft CC BY-SA 3.0 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:MJK35143_Sally_Hawkins_(Maudie,_Berlinale_2017).jpg Remixed by THE RIVER

イギリスの舞台女優としてキャリアをスタートさせたサリー・ホーキンスは、『人生は、時々晴れ。』(2002)にて映画デビュー。『ウディ・アレンの夢と犯罪』(2007)『ハッピー・ゴー・ラッキー』(2008)『わたしを離さないで』(2010)などに出演したのち、『ブルージャスミン』(2013)でアカデミー賞・ゴールデングローブ賞・英国アカデミー賞の助演女優賞候補となり、一躍知名度を高めた。近年の代表作には『パディントン』シリーズや『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)がある。

『GODZILLA ゴジラ』で演じたヴィヴィアン・グレアム博士は、渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士の優秀な片腕。ゴジラ(“GOD”ZILLA)を「神」と呼ぶという、シリーズの歴史を鑑みても重要な役割を担っている。

ウィリアム・ステンツ(デヴィッド・ストラザーン)

デヴィッド・ストラザーン
Photo by Keith McDuffee https://www.flickr.com/photos/gudlyf/5974348391/ Remixed by THE RIVER

1970年代から俳優として活動し、90年代には『ザ・ファーム 法律事務所』(1993)『激流』(1994)『L.A.コンフィデンシャル』(1997)などに出演。ジョージ・クルーニー監督作『グッドナイト&グッドラック』(2005)ではアカデミー賞の主演男優賞候補となった。そのほか、代表作に『ボーン アルティメイタム』(2007)『ボーン・レガシー』(2012)、ドラマ「THE BLACKLIST/ブラックリスト」「エクスパンス -巨獣めざめる-」など。

『GODZILLA ゴジラ』で演じた海軍長官ウィリアム・ステンツは、国民を守るべくゴジラとムートーを相手に作戦を講じ、ついには核兵器の使用を決断。ところが、これによって事態はさらなる混迷を招くことになる。芹沢の立場にも一定の理解を示す。

ジョー・ブロディ(ブライアン・クランストン)

ブライアン・クランストン
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/9357005322/ Remixed by THE RIVER

1980年代からテレビドラマを中心に活躍してきたブライアン・クランストンが、その名を世界に知らしめたのは、2000~2010年代を代表するドラマ「ブレイキング・バッド」(2008-2013)。主人公の化学教師ウォルター・ホワイトを演じてスターの仲間入りを果たした。近年の映画出演作には『コンテイジョン』(2011)『ドライヴ』(2011)『アルゴ』(2012)『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)『THE UPSIDE 最強のふたり』(2017、日2019)など。

『GODZILLA ゴジラ』では主人公フォードの父親であり、確固たる信念のもと地震の真相を探る核物理学者のジョーを演じ、確かな重みを作品にもたらした。ブライアンは幼少期からの『ゴジラ』ファンとして、「ブレイキング・バッド」の合間を縫って本作の撮影に参加。ちなみにオープニングのクレジットをコマ送りで再生すると、文字を塗り潰すアニメーションのなか、ブライアンの名前の上部に「ウォルター・ホワイト(WALTER WHITE)」の文字が一瞬だけ残るという小ネタもある。

『GODZILLA ゴジラ』出演者・キャスト、吹き替え声優 一覧

キャラクター名 キャスト 日本語吹替声優
フォード・ブロディ アーロン・テイラー=ジョンソン 小松史法
芹沢猪四郎 渡辺謙 渡辺謙
エル・ブロディ エリザベス・オルセン 波瑠
サンドラ・ブロディ ジュリエット・ビノシュ 山像かおり
ヴィヴィアン・グレアム サリー・ホーキンス 高橋理恵子
ウィリアム・ステンツ デヴィッド・ストラザーン 佐々木勝彦
分析官 テイラー・ニコルズ 佐野史郎
ジョー・ブロディ ブライアン・クランストン 原康義

監督 ギャレス・エドワーズ

ギャレス・エドワーズ
Photo by Dick Thomas Johnson https://www.flickr.com/photos/31029865@N06/35758390786

1975年生まれ。子どものころから映画監督を志し、大学時代に映画を学んだのち、ドキュメンタリーやテレビドラマのVFXアーティストとしてキャリアをスタートさせる。2008年、48時間で短編映画を完成させるコンテストにて監督した『Factory Farmed(原題)』が賞の栄光に輝き、2010年に『モンスターズ/地球外生命体』を手がけた。

その長編映画デビュー作『モンスターズ/地球外生命体』は、NASAの事故によって地球外生命体が増殖したメキシコの危険地帯を舞台に、カメラマンが新聞社の令嬢をアメリカの国境まで送り届ける物語。ギャレスは監督・脚本・製作・視覚効果の一人四役を兼任し、低予算のモンスター映画ながら、日常にクリーチャーがいる世界を生きる男女の物語、登場するクリーチャーの生態や行動にも着目する視点などで大きな注目を集めた。そのスタイルは『GODZILLA ゴジラ』にもはっきりと活かされており、あるシーンには同作の直接的引用が見てとれる。

本作ののち、ギャレス・エドワーズは『スター・ウォーズ』シリーズ初のスピンオフ作品『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)を監督。ドキュメンタリー・タッチで『スター・ウォーズ』を撮るという試みの野心作だったが、それゆえ製作トラブルにも見舞われ、大規模な再撮影・再編集も実施された。完成した作品はファン・批評家から絶賛を浴びている。なお、2020年2月には新作SF映画(タイトル未定)の準備に入っていることが報じられた

ギャレス監督と「ゴジラ映画」

ギャレス監督は、『GODZILLA ゴジラ』を手がけるにあたり、1954年版『ゴジラ』を常に念頭に置き、インスピレーションの源泉とした。「ゴジラについて知らない人たちや、もっと子ども向けのバージョンに親しんできた人たちは、オリジナル版を観ると驚くはず」と語る監督の分析は、極めて正統派かつ鮮やかだ。「(1954年版は)ヒロシマ・ナガサキの非常にシリアスなメタファー」だと述べつつ、「もし(当時の)日本でヒロシマについての映画を撮れる状態だったなら、きっと彼らはそういう作品を作っていたと思う」語っているのである。「第二次世界大戦後、日本にはアメリカによる厳しい検閲があり、第二次世界大戦や彼らの体験にまつわる映画を作ることはできなかった。そこで怪獣映画を隠れみのに、検閲の目を逃れたのでしょう」。

ちなみにギャレス監督は個人的に好きなゴジラ映画として、1960年代の作品群、とりわけ『怪獣総進撃』(1968)を挙げている。いわく、「怪獣の島があって、あれこれモンスターがいるというのが良いんです」。監督にとっては、この手の作品は友人たちに薦めるものではなく、こっそりと自分が楽しむ映画なのだそう。「だけど、この映画を作るうえで大きな影響を与えてくれました」とは監督の談だ。

レビュー・評価

『GODZILLA ゴジラ』は批評家から高く評価される傾向にあり、米国のレビューサイトRotten Tomatoesでは75%フレッシュを獲得。観客にもおおむね好意的な反応を得て、66%フレッシュを記録した(本記事時点)。

Associated Pressは「ギャレス・エドワーズ版『ゴジラ』は究極の怪獣映画。シリーズの遺産は守られた」と絶賛。英Daily Telegraphは「スリリングなだけではない大作映画。類まれなる緻密さでスリルが生まれており、歓喜の叫びを上げたくなる」と評価した。実際に米Mercury Newsは「これぞ『ゴジラ』ファンが待ち望んだ一作」、Little White Liesは「現代最高のブロックバスター映画。信じろ」と快哉を叫んでいる。

もっとも、ギャレス・エドワーズによる映像演出やゴジラの描き方には賛辞が寄せられたものの、脚本の筋運びや人物描写には厳しい声もあった。米San Francisco Chronicleは「登場人物の危機には必然性も鮮やかさもない」、英The Guardianは「登場人物が驚くほど退屈で、ストーリー展開も奇妙に混乱している」と辛口だ。

一方、観客の間では「怪獣バトルが最高、『ゴジラ』はそれでいい」「観るたびに面白く、ブライアン・クランストンがすばらしい」「アレクサンドル・デスプラの音楽は伊福部昭へのオマージュが効いていて良い」「怪獣の見せ場をとにかくお預けにされるのがつらい」など、さまざまな視点からのコメントが寄せられている。

興行収入は米国内で2億67万ドル、海外にて3億2,430万ドル、累計5億2,497万6,069ドルと大ヒットを記録。製作費は1億6,000万ドルと伝えられており、この成績が続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の製作を後押しすることとなった。

リリース情報

『GODZILLA ゴジラ』ブルーレイ&DVDは2015年2月15日にリリースされた。ブルーレイ2枚組、DVD2枚組のほか、「完全数量限定生産5枚組」も同時発売され、これにはブルーレイ3Dや「ゴジラ生誕60周年記念特典DISC」ブルーレイ、さらにフィギュアも同梱されている。

通常版の2枚組には、60分以上の特典映像を収録した特典ディスクが付属。モナークの極秘資料という設定のフェイクドキュメンタリー「モナーク:機密解除資料」や、キャスト&スタッフのインタビューと舞台裏映像からなる「メイキング」など見どころたっぷりだ。

『GODZILLA ゴジラ』Blu-ray 2枚組

なお2016年、『シン・ゴジラ』の公開に先がけては「東宝名作セレクション」として廉価版のブルーレイ&DVDもリリースされている。こちらには特典ディスクが付属しないので、特典を観たいという方は通常版のお求めを。

『GODZILLA ゴジラ』東宝Blu-ray名作セレクション

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Source: Godzilla(1, 2), Screen Rant(1, 2, 3), Cinema Blend(1, 2

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。