14歳、狭間にいる年齢。映画『グッバイ、サマー』レビュー

映画『グッバイ、サマー』評価・感想

監督 ミシェル・ゴンドリーが、自身の体験を元に描いた自伝的作品。
女の子のような容姿と身長の低さから「ミクロ」と呼ばれバカにされている14歳のダニエル(アンジュ・ダルジャン)は、家族間の関係が上手くいっておらず 抱えたその想いをどうにもできずにいた。
父の仕事の手伝いのため身体に染み付いたその匂いから「ガソリン」と呼ばれバカにされている変わり者の転校生 テオ(テオフィル・バケ)もまた、家族間の関係が上手くいっておらず 抱えたその想いに囚われないようにしていた。
似た者同士の二人は自然と仲良くなり、スクラップの寄せ集めで作り上げたログハウスのように見える車に乗って 夏休みに秘密の旅へと繰り出すのであった。
一夏の体験を通し、二人の友情を 子どもから大人へと変化していく少年達の心を描いた作品だ。

幼い頃は何にでも不思議を探し出すことができた。
誰かと友達になるキッカケなんていくらでもあった。
何でもできると 何にでもなれると思っていた。
早く大人になりたいと、家族の干渉から解き放たれたいと願っていた。

大人になった今はどうだろう。

不思議だと思うことは減り、そもそも不思議を見出そうとする探究心を失ってしまった気さえする。
友達を選ぶように 付き合い方を考えるようになった。
社会のルールなど あらゆることを知っていく過程で、自分にできないこと なれないモノがあることを自覚していった。
子どもの頃に戻りたいと、家族と共に過ごしたあの日々に帰りたいと願ってしまう。

得たモノも大きいが、同時に失ったモノも等しくある。

14歳
それは狭間にいる年齢なのかもしれない。
子どものままでいることもできず、かと言って大人にもなりきれない

まだ子どもの部分
大人へと変化しつつある部分
すでに大人になってしまった部分

それらが同時に存在する時期

かつて14歳であった観客にとって、ダニエルとテオが抱える想いのいくつかには身に覚えがあると思う。

子どもが主役の作品にこうも心惹かれてしまうのは何故だろう?

スタンド・バイ・ミー
グーニーズ
マイライフ・アズ・ア・ドッグ
最近ではシング・ストリートなど、挙げたらキリがない程たくさんある。

それは、自分もかつて子どもであったから
登場人物達の姿に刺激され、かつて持っていたはずの感覚を取り戻せるから
大人になって上手くいかなくなってしまった人生の逃避行先に、心の拠り所になるから

理由はきっと人それぞれに違う。

ぼくは子どもの頃に、小学生の頃に戻りたいという願望が常に頭の中で渦巻いている。
父がいて 母がいて 姉が 兄が 飼っていたハスキー犬がいたあの頃に。

あの頃に負けない位 今を充実させるべく頑張って生きていくべきなのは分かっている。
過去に囚われてばかりいても仕方のないことだと承知している。

それでも、ぼくはもう戻ることのないあの日々に想いを馳せてしまう。
それが絶対に叶わないことだと再認識する度、泣きたくなってしまう。

情けないヤツだと思ってもらって構わない

失われたあの日々の感覚に僅かでも触れたいと願い、こういった作品を追い求めている。

そう思っていた。

よく「あの頃は良かった」なんて言葉を耳にする。
でも「あの頃」の自分は、「今が良い」だなんて思っちゃいないはずだ。

ただありのままに 精一杯に生きているだけ

良かったと想える過去が自らにあることが重要なだけで、過去と今を比べたりする必要など本当はない。

幸せだったと想える過去の自分がいるってことは、もう一度その幸せを手に入れることだってできるはずなんだ。
一度手に入れた経験があるのだから、何度だって手に入れられる。

永遠に抱えて生きていく過去・想い出
それらは本来、後悔の念などではなく より良き道へ 未来へと人を導くためにあるのだと思う。

精一杯生きていたと想えるあの頃を
幸せだと想えたあの時間を
かつての自分と再会するキッカケを

結果的に求めているモノに変わりはないのだが、内包する想いに変化が起きた。

ダニエルとテオの心の変化が、ぼくに勇気を与えてくれた。

あの素晴らしい日々の延長線上にあるのが今の自分なのだから、恥じることなど本当はない。
ないけど、今のままの自分ではいけない気がしてしまう。

それでいいのだと思う。
その焦りが 迷いが 不満こそが道を切り開く
数年後に充実していた過去だと想わせてくれる要因になる。

人生とはその繰り返しなのだと思う。
その根底を築くのが子ども時代であるからこそ、あなたもぼくもこの手の作品に心惹かれるのではないだろうか。

とても純粋で気持ちの良い作品です。
ぜひ劇場でご覧ください。

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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