【特集】ウルヴァリンは円満卒業、バットマン監督は降板劇の嵐 ─アメコミ映画、去る人来る人
2000年の大抜擢から17年、遂にヒュー・ジャックマンがライフワーク“ウルヴァリン”から『ローガン』をもって卒業する。
映画の製作にはスタッフ・キャストの降板劇が付き物である。時には規格の段階で、時には撮影中の中で。全社でいえば現在進行中のDCエクステンドユニバースの新バットマンの監督二転三転劇などがそのものずばり。個人的にはクライム・サスペンスに腕の良さを見せていた当初のベン・アフレック監督路線が最適だったと思う。後者でいえば古い例えになるが『スーパーマン2 冒険編』がそれにあたるだろう。もともとリチャード・ドナー監督によって事実上の二部作として企画が進行していたものの、(実際に一作目冒頭には追放されるテレンス・スタンプ演じるゾット将軍が登場済み)スタジオ側と対立しリチャード・レスターに監督が交代した。その後ファンの要望もありドナー版も今は見ることができる。
どちらにしてもファンの側からみると内輪もめを見せられただけ残念な話でしかない。
様々な事情からアメコミ映画を去った役者たち
俳優でいうと2パターンある。一つは自主卒業・退学組と、シリーズが終わったために一斉卒業した組である。
自主卒業・退学組でいうと『バットマン』のマイケル・キートン。事前の猛烈な反対意見を見事に切り返してダークヒーローを熱演したものの『バットマン・リターンズ』をもって卒業を宣言した。そんな彼は00年代になるとキャリアも下火になっていき、過去の人ともなりつつあった。しかし、2010年代になるとキャリアはv字回復。中でも2014年の『バードマン』では賞レースの中心に返り咲いた。この時の役どころはかつてバードマンというアクションヒーローを演じた俳優とセルフパロディのような役どころである。翌年『スポット・ライト』も賞レースを牽引。地道に続けていた声優業も好調でハリウッドの中心人物と言っていいだろう。そんな彼の最新作はなんとスパイダーマンの再々リブート『スパイダーマン・ホームカミング』。ここでいつかは登場するだろうといわれていたヴィラン、ヴァルチャーを演じる。DCコミックの顔『バットマン』から28年。よもやのマーベルコミック作品のヴィランとしてのアメコミ映画復活である。
そのマイケル・キートンと『バードマン』で共演したエドワード・ノートン。自ら脚本まで書いて乗りに乗った『インクレディブル・ハルク』では主人公を好演。そのままアベンジャーズプロジェクトに合流するかと思われたものの、その熱の入れようが空回りしたのか、残念ながらエドワード・ノートンのハルクはこれっきりとなってしまった。その後の彼だが、もともとの定位置とでもいうべき個性派・演技派俳優のポジションを堅持。ウェス・アンダーソン監督作品などの妙味を出している。
マイケル・キートンの後を受けて『バットマン・フォーエバー』でバットマンを演じたのがヴァル・キルマー。しかし、続く4作目では『セイント』を優先して降板。(後を受けたのは今となっては意外すぎるジョージ・クルーニーである。)ところが『セイント』は不発に終わり以後キャリアは緩やかな下降線をたどり中である。『フォーエバー』の年にあの『ヒート』に出演していたことを考えるとこの年が彼にとってのキャリアハイだったのかもしれない。
降板しながらもその後、異例の復活を遂げたのは監督のブライアン・シンガー。『X-MEN:ファイナルディシジョン』を降板して『スーパーマン・リターンズ』を監督。異例のマーベルからDCの移籍劇は映画ファンの間で騒然となった。ところがシリーズ仕切り直しの『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でプロデューサーの一角に名を連ねると、続く『フューチャー&パスト』『アポカリプス』ではメガホンを取った。特に『フューチャー&パスト』では自身が手放した『ファイナルディシジョン』も物語に組み込んで見せて、ファンの喝さいを浴びた。
大人の事情で強制卒業したケース
個人的な判断ゆえに降板したのならまだわかるものの、可哀そうなのは諸々の事情でシリーズが止まってしまったがゆえに強制的に卒業させられた組だろう。
象徴的なものが『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ。高評価を受けていたサム・ライミ版3部作から間もない状況でのスタートというハンデがありながらいくつもの仕掛けを忍ばせシリーズの長期化を狙っていたものの、アベンジャーズへの合流が決定し、2作目で終了となってしまった。せめて3作目まで作って綺麗な形で終わらせれて上げたかった。
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